戦時中、赴任先のインドシナで、妻ある男・富岡と出会い愛し合ったゆき子 終戦後、妻と別れて君を待っている、との言葉を信じ富岡のもとを訪れたゆき子だったが、富岡はいつまでたっても態度をはっきりさせようとしない 途方に暮れたゆき子は外国人の愛人となり、富岡のもとを去る しかし、ある日、富岡が訪ねてくると、ゆき子の心は再び富岡へと戻って行くところが、二人で行った伊香保温泉で、富岡は今度は飲み屋の若妻おせいに手を出してしまう……。
こちらは1955年制作の 東宝映画 です(124分)
日本映画の重鎮 成瀬巳喜男監督 の代表作であり、日本の 大メロドラマ であります
2009年のキネマ旬報で、「映画人が選ぶオールタイムベスト100・日本映画編」
で、第3位 に選ばれた作品で、かの 小津安二郎は「俺にできないシャシンは溝口の
「祇園の姉妹」と成瀬の 「浮雲」 だけだ」と語ったそうです 私の好きな 黒
澤明 はこの年に「生きものの記録」 を製作しておりまして、作家さんにそれぞれ
個性があった時代でございます 本作の助監督はなんと 岡本喜八 監督でした。
戦時中、農林省のタイピストであった ゆき子 は赴任先のインドシナで、妻ある
男 富岡 と出会う 愛し合った二人は終戦後 日本で再会するが、富岡は妻と別れる決心
がつかない富岡に惚れてしまった ゆき子は、そのまま不倫関係を続けていた 終戦の
混乱期である為互いに生活は厳しく、ゆき子は売春婦となっていった、、、付いたり
離れたりという二人。様々な出来事、大抵は 富岡の女癖が惹き起こすのですが、その
富岡と深い中になる女性達は何故か亡くなってしまうのであります
その富岡もやっと一人、静かに屋久島での仕事に就く決心をしますが、ゆき子は離れ
る事が出来ず、富岡に付いて行くと聞かずに二人して屋久島へと向かう事になります
が、ゆき子は これまでの生活 (売春や、富岡の子供を中絶) が祟ったのか、著しく
体調を崩し、寝たきりになってしまいます それでも嫌味混じりの冗談を言いあう二
人 やっと落ち着いた二人の生活がおくれるようになった 富岡とゆき子 でしたが、富
岡が仕事で出ている間に ゆき子は息をひきとります 死顔に口紅をひいてあげる富岡
ゆき子の遺体に抱きつき、むせび泣くバックショット そこに本作の原作者 林芙美子
の言葉が挿入されます「花のいのちはみじかくて 苦しきことのみ多かりき」その余
韻のままエンディングを迎える事になります。
富岡に 森雅之 ゆき子に 高峰秀子 他に 岡田茉莉子 (こちらが美しい)、山形勲、加
東大介、千石規子、金子信雄 と、なかなかクラシカルに豪華でございます
メロドラマの王道の本作ですが、私の年代でさえ見た事の無い、日本のリアルな風景
が垣間見えます ほとんどがまだ未舗装のでこぼこ道 一般人の生活風景、生活
臭、子供達の遊ぶ姿、富岡が脱いだ靴の状態だけで生活がうかがえるショット そし
て独特のセリフ回しと、リアルタイムマシンです
星の数程の男と女がいるのに 富岡もゆき子 も多数の異性と出会いますが、何故か
時間を置き、また互いに訪ねてしまう関係 実は男女なんて、本当は星の数程いるわ
けではなく (運命の人というのは大げさかも知れませんが)この人だ!と思える相手
は、たった一人なのかも知れませんね 不幸になるかも と感じても、何故かその人
に魅かれてしまう事ってあるのではないでしょうか
この映画は、そんな男女の避けられない 業 を描いたような作品でありました この年
齢になって、少しだけ理解が出来たような気がした映画でありました 皆様も時にこ
のような日本映画をご覧になってみてはいかがでしょうか?です
では、また次回ですよ~!
予告が行方不明でしたので、成瀬巳喜男 監督作の映像の欠片をご覧下さいませ