大阪天満御前町の紙屋治兵衛は、女房子供のある身で、曽根崎新地紀伊国屋お抱えの遊女小春と深く馴染み、情死のおそれもあった これを案じた治兵衛の兄粉屋の孫右衛門は、武士姿に仮装し、河庄に小春を呼び出した 孫右衛門は、小春に治兵衛と別れるようさとし、その本心を問いただした。小春は治兵衛と死ぬ積りはないと言った 折から、この里を訪れていた治兵衛は二人の話を立聞きし、狂ったように脇差で斬りこんだが、、。

 

 

 

 

 

 

こちらは1969年制作の 表現社 と ATG による 日本映画 日本 です(103分)

 

実際に起こった心中を、近松門左衛門 が世話物話に脚色した 人形浄瑠璃 「心中天網

 

島」 を映画化したのが本作です タイトルは中国の思想家 老子の 「天の張る網は、

 

広くて一見目が粗いようであるが、悪人を網の目から漏らすことはない 悪事を行え

 

ば必ず捕らえられ、天罰をこうむる。」 という言葉からとられた題名です 

 

 

 

 

日本の文化 人形浄瑠璃 という物に馴染みが全くない私でありまして、北野武映画 

 

「ドールズ」 でチラッと見た程度の物で、今作は よりその世界を具体化して、浄瑠璃

 

人形の世界を人間に演じさせた作品となっておりました 着物 着物 篠田正浩 監督作

 

 

 

 

本 お話は、大まかに言ってしまえばシンプルで  紙屋の治兵衛 (中村吉右衛門)は

 

二人の子供と女房がありながら、曽根崎新地の遊女・紀伊国屋の 小春 (岩下志麻)の

 

およそ三年に亘る馴染み客になっていました 小春 と 治兵衛 の仲はもう誰にも止め

 

られぬほど深いものになっており、見かねた店の者が二人の仲を裂こうとあれこれ画

 

策します。 離れ離れになるのを悲しむ小春と治兵衛は二度と会えなくなるようならそ

 

の時は共に死のうと心中の誓いを交わします 赤い糸 赤い糸 

 

 

 

 

あまりの体たらくを、兄 (滝田裕介)と母に諫められ ついに治兵衛 は小春と別れる決

 

心をしますが、仕事は手に付きませんそんな夫の不甲斐無さを悲しむ妻 おさん (岩下

 

志麻 二役)でしたが、「もし他の客 (小松方正)に落籍されるような事があれば、き

 

っぱり己の命を絶つ」という小春の言葉を治兵衛から聞いたおさんは、彼女との義理

 

を考えて太兵衛に先んじた身請けを治兵衛に勧めます 

 

 

 

 

商売用の銀四百匁と子供や自分のありったけの着物  着物  を質に入れ、小春の支度金を

 

準備しようとするおさん しかし運悪くおさんの父・五左衛門 (加藤 嘉) が店に来

 

てしまう 日頃から治兵衛の責任感の無さを知っていた五左衛門はおさんを心配して紙

 

屋に来たのでした 当然父として憤った五左衛門は、無理やり嫌がる おさんを引っ張っ

 

て連れ帰り、親の権利で治兵衛と離縁させます おさんの折角の犠牲も全てが 無 にな

 

ってしまうのでした チーン  ​

 

 

 

 

望みを失った治兵衛は虚ろな心のまま小春に会いに行きます 別れた筈なのにと訝しが

 

る小春に訳を話し、もう何にも縛られぬ世界へ二人で行こうと治兵衛は再び小春と心

 

中する事を約束をし、小春と予め示し合わせておいた治兵衛は、蜆川から多くの橋を

 

渡って網島の大長寺に向かう そして夜明け頃、二人は俗世との縁を絶つ為に髪を切っ

 

た後、治兵衛は小春の喉首を刺し、自分はおさんへの義理立てのため、鳥居に紐を掛

 

けて 首を吊って心中するのでした 風 鳥居 

 

 

 

 

遊女 平安 に惚れ込んだ 所帯持ちの男の 身勝手で情けない行動で、日本人独特の 「義

 

理」という見えない力によって家庭が崩壊し、責任として最後に心中する事になると

 

いうお話です それ自体は古典中の古典ですが、この映画の素敵な所は、その映像表

 

現です 低予算を逆手に取った簡素なセット モノクロの画面を効果的に使い、セット

 

に描かれた 浮世絵と書、現代アート風の墨の柄が 壁や床に描かれています 筆 

 

 

 

 

浄瑠璃人形を操作する (歌舞伎にも登場する) 黒子が画面にそのまま登場していま

 

す それは浄瑠璃を意識させると同時に、客観的な視線であったり、見えない人間の

 

業、神や悪魔の存在にも見えてきます 青不動 舞台のような転換や回り舞台も 歌舞伎・定式幕 効果的

 

に視覚に訴えます カメラもワンカットでの撮影が多く、より舞台的であります ねが

 

 

 

 

個人的に、大変好きな挑戦がされていて、これぞ、ATG映画であります ちょっと

 

残念?に思った所は、遊女の 小春 と妻の おさん を岩下志麻が一人二役で演じている

 

のですが、さほど落差を感じません しかしそれは意図的で、同じ女でも 遊女という

 

存在に憧れる、叶わぬ恋、危険なもの、肩書に惹かれる 男心の馬鹿らしさを表現して

 

いるのかも知れません。

 

 

 

 

音楽は 武満徹 が担当していて 日本の古典的な音と、ガムランや ブッダ インドの音を多用

 

してこの独特な世界を彩る事に成功しています 竹 竹

 

とても古典的なお話を、独特な世界感で表現した作品となっております ちょっと変わ

 

った映画を観たい方にはお勧めしたい映画であります このような挑戦的な作品が日

 

本映画に現在皆無なのが淋しい限りの私でありました、、、 笑い泣き

 

では、また次回ですよ~! パー