ある地方の中学に通う生徒たちは夜中にプールに忍び込んだりと悪戯をしながらも、恋愛で悩んだり大人の身勝手さに苛立ちを覚えたり、ごく普通の中学生活を送っていた。そんなある日、夜から大型台風がやってくるという予報が出る。丁度その朝、生徒の1人理恵は迎えに来た彼氏の恭一の呼びかけに応えず、ふらりと東京行きの電車に乗る。担任の梅宮も放課後になると理恵の行方を調べるが、責任を放棄して、何人かの生徒を学校に置いたまま施錠して帰ってしまう。

 

 

 

 

 

 

こちらは1985年制作の 東宝 ATG 映画  日本  です (96分)

 

映画ファンに何故か評価の高い? 相米慎二 監督作であります、監督の作品を初めて

 

観たのは小学生の頃、アニメ版 「まことちゃん」 を観に行った際、同時上映だった 

 

「翔んだカップル」 でありました、これがデビュー作だったのですね  

 

 

 

 

当時から長回しでの撮影で、小学生だった私ですら、何か独特な空気感を憶えていま

 

す(ま、薬師丸ひろ子が可愛くて、相手役の 鶴見辰吾 が羨ましかった、という記憶の

 

方が勝ちますが、、むかっ

 

 

 

 

そして「セーラー服と機関銃」、でその次辺りが 「台風クラブ」かと思いきや「魚影

 

の群れ」をその間に撮っていたとは! うお座  なかなか凄い振り子的フットワークですね

 

そして今作 「台風クラブ」 という多分かなりの低予算で、映画マニアが撮るような映

 

画が登場いたします。 

 

 

 

 

8mm 田舎の中学3年生の、木曜日~月曜日までの5日間の出来事を描いた作品で、優

 

等生の 三上 と 理恵、その仲間を中心としたクラスのお話です。 

 

 

 

 

台風が近づく夜、学校のプールに忍び込んで、はしゃぐ 理恵と仲間達。受験を控えモ

 

ヤモヤとした気分が支配している生徒達。 そんなクラスを担当する 三浦友和 扮す

 

る 梅宮という担任、ちょいといい加減な教師で、授業中 付き合っている女性の親が

 

抗議にやって来るという、なんとも恥ずかしい状況を生徒達に見られてしまいます。 

 

それを傍観する生徒もいれば、教師に怒りを覚える生徒と様々です。 

 

 

 

 

翌日台風が接近するという朝、寝坊した理恵はふらりと 東京へと向かいます。 

 

台風が本格化してきましたが、それぞれの理由で学校に留まっていた生徒達を残し、

 

学校は施錠されてしまいます。 残っていた生徒の一人 美智子は、彼女に想いを寄せ

 

る清水に襲われそうになり、逃げまどいますが、執拗に追いかけてくる清水。  

 

 

 

 

職員室に逃げ込んだ美智子へ、想いを素直に告げられないイライラをぶつけるかのよ

 

うに、その隔てたドアを 「ただいま、お帰りなさい」 とつぶやきながら蹴りつづける

 

清水。「シャイニング」を思わせるような、日本映画の中でもかなり上位の恐怖映像

 

です。   

 

 

 

 

思春期のモヤモヤした恋愛感情を、どう表現すればいいのか分からない 清水の感情

 

が爆発した瞬間でしょうが、、。 ホラーとは 愛の表現なのか? と思ってしまう程の

 

インパクト。 ドクロ その後、自分のしでかした罪に気付き、泣きじゃくる清水。 

 

 

 

 

同じように、三上も学校に残っていました。 学校から担任の梅宮に電話をかけます

 

が梅宮は宴会の最中。 そんな大人代表の梅宮に苛立ちを覚えた三上は、「あんたのよ

 

うな大人には絶対にはならない」 と告げますが、梅宮は 、「15年もすれば俺のよう

 

になるんだ」 と言われ強いショックを受けます。 台風はどんどん強くなり、学校に

 

残っていた生徒達は体育館や校庭で乱痴気騒ぎを始めます。 

 

 

 

 

あてもなく東京に来た理恵は、知り合った大学生の家に居ましたが、不意に三上の事

 

を思い出し、台風の中 家路へと向かいます。       

 

 

 

 

学校で朝を迎えた三上達でしたが、眠る仲間を起こし「今から君達に死を見せよう」 

 

と言いだし、教室の窓から身を投げます。 

 

 

 

 

慌てて外に出た仲間達が見た光景は、沼状になった校庭に、逆さまで足を開いて刺さ

 

っている三上の姿でした。 (それはもう犬神家以外の何者でもなく、死ねなかった事

 

は明白ですが、展開としてあまりに唐突で、笑う場面なのか?と、観客を困惑させて

 

しまう結果になった、悲壮感漂う場面でありました)

 

 

 

 

月曜、元気よく登校する理恵 途中クラスメイトに出会いますが、今日は台風の影響で

 

休校と知らされます。 プールに入りに行くんだ!と言う友達と、水浸しの校庭に入っ

 

て行く二人の姿で幕を閉じます、、。 

 

 

 

 

子供時代、台風等はイベントのような感覚でした。 今作では受験と思春期の鬱血し

 

た気持ちが、台風という自然の驚異が訪れる事によって、日常の タガ が外れ爆発する

 

様が、生徒の目線で描かれています。 

 

 

 

 

 

何故か唐突と思える理恵の自慰行為。(漠然とした淋しさからか?) 中学生の喫煙

 

シーンの多さ。レズビアンのまね事や、裸になっての校庭でダンス等。 

 

 

 

 

さすがにちょっと厳しいな~というシーンや、演出も否めませんし、長回しが効果的

 

な場面と、ちょっと長すぎるな~という場面 (三上が机を延々と並べ変える場面等) 

 

もありますが、ちょっと自分の中学生の時期を思い出されたりもしました。

 

 

 

 

これといったドラマチックな出来事は起こりませんが、何か他の作品にはない妙な違

 

和感とでも言いましょうか(家族ゲームを観た時に感じたような) 異質感が尾を引く 

 

(良い意味でも、悪い意味でも) 作品でした。 三浦友和を始め、工藤夕貴、大西結

 

花、尾美としのり、鶴見辰吾、寺田農、佐藤允、等 渋い方々もちょこっと出演されて

 

おられます。

 

 

 

 

未来の自分とはかけ離れた大人達の世界に包囲され、中学三年の受験前という、モヤ

 

モヤとエネルギー、束縛と将来の漠然とした不安感が、近づく台風という自然の大

 

きな脅威によって爆発した一夜の出来事が描かれています。

 

 

 

 

 

どこか 「座りの悪い異質感」 がこの作品の一番の魅力で、見所かもしれません。

 

ちょっと昔を懐かしむにはもってこいの作品かと思いますので、ご覧になってみては

 

いかがでしょうか はてなマーク  雨と風は 黒澤明作品に引けを取りませんですよ! 

 

では、また次回ですよ~! パー