セピデーは離婚したばかりの男友だちに紹介しようと、幼稚園の教師エリを誘い、カスピ海沿岸へバカンスに出かける 美しい浜辺にある古い別荘にたどり着き、穏やかで楽しいひとときを過ごす しかし翌朝、エリはこつ然と姿を消し、浜辺では子どもがおぼれていた 捜索が始まり、セピデーはエリのことを名前以外、何も知らなかったことに気づく。

 

 

 

 

 

 

こちらは2009年の イラン映画 イラン です(116分)

 

この年の ベルリン国際映画祭銀熊賞 クマ白 を受賞した作品でございます ベル

 

以前ご紹介した 「別離」 のアスガル・ファルハーディー監督の作品であります マサさん

 

 

 

 

本 3組の夫婦と 幼い子供3人 離婚したばかりの男、そしてその夫婦の一人 セピデ

 

ーに誘われ、付き合わされる形で参加した女性 エリ この人物達が織りなすドラマな

 

のですがオープニングショット、これが未だに私には宿題となっていまして、暗闇に

 

空いた横長の光そこに紙が何枚も差し込まれて来ます ポスト?いや、投票箱の中から

 

見た画のようです選挙

 

 

 

 

最後に差し込まれた物は卵  たまご ?のようで中で割れます それにオーバーラップしてト

 

ンネル 天城越え の画に変化して行きます どうしても ここに深い監督のメッセージと、これ

 

からの物語を暗示していると感じてしまう私でありました くるま。 そのトンネルの中、車

 

に乗りながら叫ぶ家族 普段の生活から解放された感じが良く出ています コテージに

 

到着しますが、手違いで海辺の荒れたコテージに泊まる事になります (ここから既に

 

不穏な歯車が回り始めます) セピデー には思惑があり、離婚して一時帰国している 

 

アーマドを エリと結び付けようと考えての事でした 恋の矢、アーマドも気に入ったらし

 

く 良い方向へと向かうはずだったのですが、、、

 

 

 

 

エリは1泊のつもりでしたが、セピデーに無理から引き留められます 女性陣は買い

 

物や食事の用意に忙しい為、エリに子供の面倒を看てもらいます 浜辺で遊ぶ子供達 

 

一人の子供に凧を上げてと頼まれるエリ 浜辺を 走って走って 子供のような笑顔で凧

 

揚げをするエリ ゲイラカイト ここのエリのショットが、画角が幾重にも変わり重なり、この映画

 

の中で一番印象的なシーンです その後の凧が風になびき、青空に浮かんでいるショ

 

ットが イラン女性のエリの心情を象徴しているような場面でした 空 男達はコテー

 

ジの横でバレーボール バレーボール に興じていました そこに子供の声が、一人の子供が海に流

 

されたと言うのです  波   慌てて海へと向かい子供を探します(ここは唯一動的な場面

 

でサスペンスフルです) 意識不明の子供を発見 岸で蘇生して一命をとりとめます 

 

 

 

 

皆、無事を確認した時、エリが居ない事に気付きます ビックリマーク 子供を看ていたエリ もしや

 

助けに海へ入ったのか? 警察に連絡して捜索するも発見出来ません 2、3日した

 

ら打ち上げられるだろうと他人事です それだけで無く、セピデー はエリのフルネー

 

ムすら知らず、自分の子供の保育園の先生という事だけしか知らなかったのです1日

 

だけと思っていて、帰りを急いでいたエリは そもそも海に入ったのか?持っていたバ

 

ックが見当たらない為、帰ったと安堵する皆でしたが、そのバックは エリを一人で帰

 

らせないよう、セピデーが隠していました、、、チーン

 

 

 

 

ここからが本作の見事な所です、皆 自分の保身の為に様々な事を言い出します 何故

 

誘ったんだ、どうして子供を他人に看させていたんだ、家族に連絡するか?まだ海に

 

入ったとは限らないぞ!と憶測と疑心が飛び交う事になります 横顔 横顔 そしてセピ

 

デーが口を開きます エリには婚約者が居るが、彼を嫌がっていた だからアーマドを

 

紹介してエリと結び付けようとしたと、、、皆は驚きます !! 

 

 

 

 

何故ならイスラムでは婚約者が居る女性には許されない行為だからなのでした 翌日

 

になっても進展がみられない為、エリのバックに残された携帯電話で婚約者 (彼の行

 

動を見る限り、暴力的な人物だという事が垣間見れます それが一つの原因である事

 

も、こちらは理解出来るのでした) に連絡をとりますが、ここでも事実は伏せ現地へ

 

呼び寄せます 彼等も婚約者とは知らなかった事にして話を進めようとするのです

 

が、エリ はまだ 行方不明のままだったのでした エリはいったい何処へ、、、走る人

 

        「永遠の最悪より、最悪の最後の方がまし」

 

限られた空間と人によってサスペンス映画としても観る事が出来るのでした

 

 

 

 

良かれと思いついた小さな 嘘 それが幾重にも重なる事によって事実が見えなくなって

 

いく様 と 疑問、不安が露呈していく そんな作品であります 人間の善悪 そしてイ

 

スラムに於ける女性の位置 男の暴力 チャドルという女性の髪を隠すスカーフと、

 

丈の長い衣服の中に隠している彼女等の葛藤と不自由さ そして、ここで気付く私で

 

ありましたが、気になっていたオープニング あれはこの映画を象徴した映像だった

 

のでは? 暗闇はエリ、もしくは私達 観客そして、一つずつ差し込まれる紙は 断片的

 

な それぞれの言葉や 思惑、悪意? さて、割れた卵は 卵 ?希望、尊厳が破戒された 

 

メタファーでしょうか はてなマーク

 

 

 

 

この作品でもラストショットは秀逸です コテージに一人座るセピデー 外では砂にタ

 

イヤを取られ、波が近づく車を他の家族がいっせいに押している場面と波の音で終わ

 

っていきます くるま。R  波   エンドクレジットまで音楽は使われていません

 

「別離」 も 今作も、個人的に大変好きなエンディングのセンスで余韻と、こちらに考

 

えさせる余白を与えてくれています 子供が3人出演しておりますが、とっても自然

 

に行動していて そんな環境を現場で作っていたんでしょうね どの子も可愛らしいです

 

 

 

 

そして2016年制作した 「セールスマン」 でもアカデミー外国語映画を受賞します

 

が、アメリカ政府に抗議の意味を込め 監督とこの作品でエリを演じた女優さん共々、

 

授賞式をボイコットいたしました ベル DVDでのレンタルが今から楽しみであります 

 

サスペンスを含んだ深い人間ドラマとなっております 興味が湧きましたら レンタル店

 

を探してみて下さいませ

 

では、また次回ですよ~! バイバイ