1995年。玄武書房に勤める青年・馬締光也は、真面目すぎる性格ゆえに営業部で浮いた存在。そんなある日、彼は言葉に対するセンスを買われて辞書編集部に異動となる。迎えたのは、定年間近のベテラン編集者・荒木やお調子者の西岡ら個性あふれる面々。辞書編集部では現在、新しい辞書『大渡海』の編纂に取り組んでいた。馬締は彼らを通して辞書の世界の奥深さに触れ、辞書作りに没頭していく。そんな馬締がある夜、下宿先の大家と同居することになった板前修行中の孫娘・林香具矢と出会い、一目惚れしてしまう。言葉を扱う仕事をしていながら、彼女にうまく自分の思いを伝えられず苦悶する馬締だった そんな中会社の方針が変わり、『大渡海』の完成に暗雲がたちこめる……。

 

 

 

 

 

 

こちらは2013年制作の 日本映画 です 日本 (134分)

 

2012年 本屋大賞第1位 に輝いた 三浦しをん の原作を映画化した 石井裕也監督作

 

でこの年の日本アカデミー賞の 作品、監督、主演男優、脚本、録音、編集、を受賞さ

 

れました。タイトルの 舟を編む は、 「 辞書は言葉の海を渡る舟、編集者はその海を

 

渡る舟を編んでいく 」 という意味と、作中に製作される辞書 「大渡海」 の意味も同

 

時に含んでいるようです

 

 

 

 

1995年  玄武書房 で辞書一筋38年の編集者 荒木 が定年を迎える事になり、後

 

任を探していた時、営業部で浮いた存在だった青年 馬締 (まじめ)光也  が目に留ま

 

り、後任として 辞書編集部に異動になる​​​​​ そこでは、辞書監修者の 松本 が熱意を燃

 

やす新しい辞書 「大渡海」(だいとかい) が製作されておりました その部署には 

 

荒木とその部下の 西岡、契約社員の 佐々木 という個性的なメンバーが揃っているの

 

でした 馬締 はいつも本を読み、他人との関わりを持つのが出来ないタイプ しかし

 

彼が下宿する早雲荘 の大家の タケさんは 馬締 の理解者でした、ある日その下宿に タ

 

ケさんの孫の香具矢 が、突然現れます 京都から板前修行の為、下宿に住む事になりま

 

す その日から 馬締 は 香具矢 に恋してしまいます 恋の矢 

 

 

 

 

そんな 馬締 の生活を、10年以上かかる 辞書を作るという、製作の手間や過程を通

 

して彼の居場所や、仕事、成長、責任、他者との関わり、などが描かれて行きます

 

馬締 を演じるのは 松田龍平 彼がこの作品のトーンを全て決めていると言っても過言

 

ではない演技をされています 前半ではちょっと アスペルガー症候群 ではないか?と

 

も思える馬締 というキャラクターに命を吹き込む事に成功しています ちょっと違っ

 

た見方をするとこの映画の中では、ずっと 「一人ボケ」 をやっているのです、職場の

 

皆に言われて 香具矢 にラブレターを書くのですが、それが何時代だ!って言う 筆書

 

きの行書体の恋文 勿論、皆に突っこまれますが、馬締 はそれをそのまま 香具矢 に

 

渡して、やっぱり突っこまれる始末 このような 天然ボケ をずっと繰り返して行く、

 

憎めない 馬締 なのであります デレデレ

 

 

 

 

職場の同僚 西岡 を オダギリジョー が、チャラいけれども男気のあるキャラを演じて

 

いて、馬締 と対比させる事で、互いのキャラを引き立たせ、狭い職場の世界に奥行を

 

もたせております 契約社員の佐々木 を 伊佐山ひろ子 が演じ、事務職のオバちゃん

 

ながらも 細かい気配りと、柔軟なフットワークを見せてくれます 電話 辞書監修者の 

 

松本 を演じるのは、かの 加藤剛 でございます 優しく、ゆったりとした口調の中に、

 

凛々しい信念を持ち、皆を引っ張って行く姿は 西岡 とはまた違う、居るだけでその場

 

の空気が和むような オーラを発しているのでありました 香具矢 を演じるのは 宮崎

 

あおい であります 満月の夜に現われるシーンから 月 何か不思議な世界観を感じさ

 

せる女性で、最後までどこか 憂いのある表情をしているようで、良からぬ心配をして

 

しまいましたが、そんな女性だからこそ 馬締 に魅力を感じたのかも知れません 

 

 

 

 

そして、最もパワフルな人物が 早雲荘 の大家の タケさんでありまして 演じるのが 

 

渡辺美佐子 であります 他人の気持ちがわからないことに悩む 馬締 に 「わかんない

 

から話しをするんだろ?」 と喝を入れてくれたりします 爆弾  他に 定年を迎える 

 

荒木に 小林薫 西岡の同僚で恋人の女性に 池脇千鶴  辞書制作後半にやってくる新

 

人に 黒木華  松本の妻 役に 八千草薫 がそれぞれ好演しておられます  ベル

 

 

 

 

個人的にこの作品の大きな功労者は、美術さんによるセットでありまして、辞書製作

 

の部屋と、早雲荘のセットの巧みさです 特に早雲荘は独特の昭和感が漂い、そこに

 

人物が居るだけで物語る説得力があり、この話の世界観と相まって独自の空間へと私

 

達をいざなってくれますし、ちょっと住んでみたくなったりしてしまうのです 星空

 

そして重要なキャストにネコの トラさん が居ました  馬締 と 香具矢 を結び付けた

 

のは、他ならぬ トラさん なのですから とらおとらお  恋のキューピットでありますな  恋の矢  天使

 

 

 

 

他にも、あんな職場だったら私も勤めたい!とも思ってしまいます 本好きの 馬締 に

 

は天職のような夢の職場でしょうね 観ながらずっとうらやましがっている私が居ま

 

した あと映画的にも優れた部分があり、馬締 と 香具矢 の結婚式であったり、松本

 

の葬儀を思い切った省略で表現していた所も、本筋から広がらないような配慮を感じ

 

ました 主人公の馬締 に映画の体温を合わせ、変に泣かせよう、感動させようという

 

のがなく、時にユーモラスで温かい映画になっておりました。ついつい父親である 

 

松田優作 の 「野獣死すべし」や「家族ゲーム」 の演じた役と 馬締 をダブらせて観

 

ている私なのでした  銃

 

 

 

 

そんな訳で、辞書 言葉 は誰かしら相手にモノを伝える為に必要な手段で、伝えたい相

 

手やモノがある事がとても重要なんだと思わせてくれる、そんな 「ぬめり感」 な良品

 

な映画でした もし機会があったらご覧になってみてくださいませです

 

では、また次回ですよ~! バイバイ