石井聰亙監督が1980年、日本大学藝術学部映画学科在籍時に22歳の若さで卒業制作として発表したインディペンデント映画

 

 

 

 

 

 

   -  狂い咲きサンダーロード  -    監督 石井岳龍  美術 泉谷しげる

 

 出演 山田辰夫、中島陽典、南条弘二、小林稔侍、佐野和宏、飯島大介 他

 

こちらは1980年制作の 日本映画 日本 です。(98分) 

 

 

 

 

  日本の何処かにあるという幻の街 「サンダーロード」

鎬を削っていた暴走族達が、警察による苛烈な取締が実施される新道交法の成立を機に、休戦協定を結ぶことになります。 「新道交法を遵守して愛される暴走族になろう」 という平和的な協定に、武闘派の鉄人暴走族として恐れられていた魔墓呂死(まぼろし)も参加を表明します。 かねてより恋人の典子と堅気になろうと考えていた魔墓呂死リーダー健の一方的なこの決定に、特攻隊長の仁は猛反発をします。 

 

 

 

 

あくまで暴走族としてツッパリ通すことにこだわる仁は、魔墓呂死特攻隊を率いて休戦協定の会合を襲撃し、出席していた幹部らに重傷を負わせます。 それでもなお協定を守ろうとする健に業を煮やした仁は、自ら新しい魔墓呂死リーダーになると宣言。 仁と志を同じくする特攻隊メンバーの幸男や茂らと新道交法を無視した暴走を繰り返すのでした。 暴走を続ける仁らに対して、協定により誕生した暴走族の連合組織・エルボー連合が制裁を加えるべく動きだし、遂には抗争へと発展していくのでした、、。

 

 

 

 

「逆噴射家族」等の石井聰亙 監督が、日本大学藝術学部映画学科在籍時に卒業制作として作られたインディペンデント映画ですが、その後に劇場公開されたという作品で、劇場公開時には 「聖獣学園」(多岐川裕美 初主演の74年作のニュープリントリバイバル品) との同時上映だったそうです。  学生の卒業制作にしては非常に豪華で、泉谷しげる が音楽と美術を担当していたり(ポスターの絵も)、小林稔侍 も出演しておられます。

 

 

 

 

ストーリーを大ざっぱにご紹介すると、架空の町 サンダーロード を舞台に、暗躍する暴走族グループが、警察の道交法の強化によって協定を結び、「新道交法を遵守して愛される暴走族になろう」という平和的な協定に、一人異を唱えた男 仁 が暴走族と警察、はたまたスーパー右翼 を敵に回して 戦いを挑む、というような内容であります。ストーリー云々は、かなりぶっ飛んだ内容のため、この際あまり関係ないとして、この時代にしかないの空気感を味わえる作品でした。 丁度 同じ年に「金八先生」の第2シーズンが放映されておりまして、あそこに出て来る たまり場 「スナック Z」 や、暴走族の 「魑魅怒呂(ちみどろ)」 とリンクする世界で、ある世代には懐かしさ爆発です。

 

 

 

 

映画の中に登場する人物は、まるで キャロルやクールスのようないで立ちをしていて、リーゼントにサングラス 革ジャンにバイクそしてバイオレンスなツッパリの80年代感。この作品の主人公の 仁 を演じるのが 山田辰夫 という方、これがデビュー作という事ですが、最初は声がかん高く(哀川翔のような) ちょっとキツイな~と思ったのですが、慣れると なんとも切れた主人公にうってつけにハマってくるのであります。 そんな彼に最後には哀愁まで感じてしまいます。

 

 

 

 

そしてこの映画の中で最も異彩を放っているのが 小林稔侍 演じる スーパー右翼 (凄いネーミングセンスです) のリーダーでありまして、一人ちょい違うテンションの演技感。つなぎの特攻服を着て、バックショットからの 君が代 を口ずさみながら振り返るというトリッキーな登場! そして、次期リーダーと見込んだ元暴走族の男に 「俺に付いて来い」発言の次のショットが、その男を 腕枕 した状態でのベッド場面 滝汗 さすがスーパー右翼です。

 

 

 

 

映画も後半になるにつれてどんどんカオスになってきて、ジャンキーの小学生や、武器を売っているホームレス風の売人が出て来たリ、最後は 仁 が武装して町中で暴走族や右翼達を相手に、大バトルを繰り広げるのであります (低予算感は否めませんが)ラスト 仁 が大けがを負いながらも バイクで一人、疾走して行きエンディングを迎えるのですが、このシーンとオープニングシーンがリンクした作りになっています。

 

 

 

 

とにかくこの映画は、男、疾走、怒り、信念が、 爆発 した作品で、和製 「MADMAX」?とも言えるかも知れない本作。 面白い編集や、色彩 映画の様々な技巧をこれでもかと駆使した部分も多々あり、泉谷しげる の音楽もこの作品に奥行きをもたす効果を生んで、いい味を出しています。 作品自体は内容同様にかなり荒い作りではありますが、とにかくその時代の勢いや熱を感じさせる中々の見物の映画だと思いますので、爆発しそうなこの時代の空気感をご覧になってみてはいかがでしょうか、です。 

 

では、また次回ですよ~! パー