住宅ローンの支払いに困ったとき誰に相談するのか?  | 資金繰り 事業再生 M&Aアーク司法書士法人@代表社員 李 永鍋(リ ヨンファ)のブログ

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住宅ローンの支払いに困ったとき誰に相談するのか? 


金融機関、弁護士・司法書士、専門会社、いくつか選択肢はありますが、それぞれに得意、苦手や思惑があるので注意が必要です。


専門家とはいえ、言いなりにはならず現状や目的と確認せながら、選択するといいです。


相談先にも「得意、苦手」「思惑」がある点に注意


住宅ローンの支払いに困ったら誰に相談すればいいのか、迷うところです。


思いつくのは金融機関や弁護士や司法書士など、また最近ではインターネット検索により、任意売却専門の会社を訪れる人も増えてきました。


 


1 金融機関への相談は、なぜ重要なのか?

【金融機関】


金融機関に相談すると返済計画の見直しを提案してくれることがあります(リスケ)。ボーナスが減額されて苦しい場合にはボーナス返済をなくしたり、短期的に収入が減っている場合には1年間だけ利息分のみの支払いでいいと返済額を減額してくれたりすることがあります。


 

金融機関の提案は債務者にとって問題の根本的な解決にはならないケースが大半です。ボーナス返済をなくせば、他の月の返済分が増えることになります。1年間利息分のみの支払いをすると、やはりその後の支払額が増えます。債務者の収入が一時的に落ち込んでいるだけならば意味のある提案ですが、落ち込みがいつ終わるのかわからない状況なら、問題を先送りにしているだけです。


 


金融機関側も一時しのぎに過ぎないことはもちろん理解しています。元本と利息を全額回収するのが金融機関の原理原則なので、先送りになる提案しかできないのです。


 

住宅ローンの返済に行き詰まったとき、金融機関に相談することには非常に大きな意味があります。「債務者として延滞を非常に重大なことと認識しています」という意思表明になり、金融機関の側は誠意を示してくれたと受け取るからです。


 


任意売却や債務整理を進めることになれば、後々金融機関と交渉する機会が多々あります。先に誠意を示しておくことで、交渉が円滑にまとまりやすくなるので、住宅ローンの返済を延滞しそうなら、自分から連絡を入れて、なるべく早めに金融機関を訪れてください。


不安な場合は私も同席します。



2 「弁護士・司法書士」は自己破産を推奨することが多い

【弁護士・司法書士】


金融機関から法律用語が書かれた督促状や催告書が届いたら(期限の利益喪失、一括弁済、差押えなど)、ほとんどの人が真っ先に思いつく相談先は弁護士や司法書士など法律の専門家でしょう。


 


住宅ローンの返済に困った人の相談に対して、弁護士、司法書士はほぼ自己破産するようアドバイスします。任意売却により債務を最小限にし、自己破産しなくていいケースもあります。解決策として一律に自己破産をすすめます。


 


弁護士、司法書士は法的手続きを専門としており、不動産の売買に関する知識の専門家ではありません。任意売却という特殊な取引について詳細に理解しており、実務も任せられる弁護士や司法書士はほとんどいません。


※少数ですが当事務所と勉強会かセミナーなどに参加し詳しい先生もいます

社団法人任意売却協会の会員など


 

任意売却を提案する弁護士、司法書士もいますが、販売活動は知り合いの不動産業者に声をかけてみるという程度のものです。任意売却にはこれまで説明してきたとおり、「住み続けるための購入者選び」(リースバック)や「購入者との交渉による生活準備金の支給」(引越代や協力金)など独特の活動・交渉が含まれます。


 


専門家の知識と経験、技量により、債務者の生活再建をどれだけ強く支えられるかという点において、大きな違いが現れるものなのです。


 


また債務者ごとに「どのように生活を再建していきたいか」という要望は異なります。不動産売却のネットワークを持たない弁護士、司法書士が、多様なニーズに応えることは難しく、任意売却の成功率も著しく低いものになります。


 

弁護士、司法書士にはもう一つ、「依頼人が自己破産した方がとお金になる」という経済的な損得に基づく判断もあります。自己破産であれば、手数料を取ることができるので、どんな案件でも「自己破産ありき」のアドバイスをしたがるのです。「自己破産せずに住宅ローン問題を解決したい」という相談には一切耳を貸してくれないと考えておくべきです。



ただし弁護士や司法書士はあくまで、士業として国から資格を得て仕事をしている専門家であり、社会的に高い信頼を勝ち得ている人たちです。能力や信頼性の差は比較的小さく、一定以上の信用はできる、という意味では貴重な相談先ではあります。


すべて任意売却ありきな「任意売却専門会社」

【任意売却専門会社】


住宅ローン破綻に対して任意売却という解決策を提示できるのが任意売却専門会社です。債務を抱えている人の不動産売却を専門としているため、金融機関との抹消交渉や債務者のニーズに合う提案を得意とします。


 


特に債務者のニーズは「住み続けたい」「引っ越し費用がほしい」「引っ越しまでの猶予期間がほしい」「生活準備金がいる」など多様なので、それに応えられる引き出しの多さは任意売却専門会社ならではといえます。販売ネットワークを確立しているため、任意売却の成功率が高いのも大きな特徴です。


 


ただし弁護士や司法書士とは反対に、任意売却専門会社の提案はすべて任意売却ありきです。法的手続きを手がけることができないため、債務整理により住まいを手放さなくてもいいケースでも、任意売却をすすめることがあります。


 


また一昔前まで「整理屋」と呼ばれた業種であり、弁護士や司法書士に比べると社会的な信用性が低いことは否めません。現在、インターネット上で大々的に広告宣伝を行っている任意売却専門会社の中にも実態には疑問符がつくケースが見受けられます。



手数料欲しさに「管財事件」にしたがる弁護士も

かつて弁護士は資格を持っているだけで高収入が保証される職業でした。ところが司法改革により大量の弁護士が誕生したことから、近年では収入がどんどん減少しており、なりふり構わず収益をあげようとする人も増えています。


 

 


住宅ローンの返済に困った人から相談を受けた弁護士はほとんどの場合、自己破産をすすめます。債務者のニーズをくみとって、自己破産しないで解決できるという選択肢もあることを教えてくれる弁護士は、残念ながら稀少です。


 


自己破産をすすめる中でも、弁護士が特にやりたがるのが「管財事件」です。自己破産には「管財事件」と「同時廃止事件」がありますが、弁護士にとっては前者のほうがはるかに高い手数料を受け取ることができます。


 


「管財事件」にするためには、自己破産する時点で、自宅という大きな財産を持っていなければなりません。自己破産前に任意売却をしたほうが、ほとんどの債務者にとってお得なのですが、そうすると「同時廃止事件」となり、弁護士にとってはうま味がなくなってしまいます。


 


「任意売却は面倒が大きく、利益にならないのでやりたくない」というのが多くの弁護士の本音です。任意売却にすると、弁護士は裁判所から「適正な価格での売却だったか」を問われます。売却価格の妥当性を証明するためには、不動産の査定書や固定資産税評価額を示す書類などを作成して提出する必要があり、手間がかかります。


要望に合う解決策を掲示してくれるか、見極めが重要に加えて、「任意売却して失敗したら、裁判所からの確認が煩わしい」というプレッシャーも弁護士にはあります。





「自己破産するなら同じ」という考えで、競売にしてしまうのがほとんどの弁護士のやり方です。「管財事件→競売」という流れで進むことがほとんどの弁護士です。適切な任意売却にすれば、債務者がどれだけ助かるかという発想は頭にありません。特に、古くから開業している年配の弁護士に多く見受けられます。