自己破産と生活保護① | 資金繰り 事業再生 M&Aアーク司法書士法人@代表社員 李 永鍋(リ ヨンファ)のブログ

生活保護受給者は自己破産ができる?費用や注意点


生活保護を受給していても、借金を背負うことがあります。

生活保護受給者は、ぎりぎりの生活をしています

借金返済を継続していくことが難しいケースが多いです。

そのようなとき、自己破産によって解決することができるのでしょうか?

今回は、生活保護受給者が自己破産できるのか、考えてみましょう。

1.生活保護受給者は、自己破産できる

1-1.自己破産すること自体は可能

そもそも、生活保護受給者が自己破産することはできるのか?

自己破産には、いろいろな制限があるため、生活保護受給者の場合には、自己破産が認められていないのではないかと思われていることがあります。

結論からお伝えすると、生活保護給者であっても自己破産することはできます。自己破産は、「支払い不能」でありさえすれば、基本的に誰でも行うことができるからです。

支払い不能とは、その人がおかれている状況からして、支払いができなくなっている状態です。

その人の収入や支出、貯蓄状況から借金返済を継続していける状態なら支払い不能にはなりませんし、反対に返済を継続できない状態に陥っているなら支払い不能となります。

生活保護受給者の場合、収入はほとんどないため、通常一般の場合よりも簡単に支払い不能を認めてもらいやすいです。

1-2.借金額が少額でも自己破産できる

生活保護受給者の借金は、非常に少額であることが多いです。100万円以下であることがむしろ普通ですし、50万円以下であることもあります。

「このように非常に少額の借金でも、果たして破産できるのか?」と、疑問を持たれる方もいます。

実は、自己破産には借金の金額における制限はありません。

借金がどれだけ多くても自己破産で免責(借金返済義務をなくすこと)してもらうことができますし、反対に、どれだけ小さくても免責の対象になります。

自己破産できるかの判断のポイントとなるのは、先に挙げた「支払い不能かどうか」ということのみです。

生活保護受給者の場合、支払い能力がもともとないので普通の人では破産が認められないようなごく少額の借金(20万円など)でも自己破産できる可能性が高いです。

2.生活保護受給者が自己破産をせずに借金返済を続ける危険

人によっては「自己破産には抵抗がある…」という方もいるかもしれません。しかし、自己破産をせずにそのまま借金を返済すると危険なことがあります。

2-1.生活保護費を止められるおそれがある

生活保護受給者が借金をしたときに、自己破産をせずに返済を続けることは問題はないのでしょうか?

実は、自己破産をせずに返済を続けることのほうが危険です。

生活保護を受給している方ならご存知と思いますが、生活保護を受けているときには、福祉事務所や役所から、「借金をしてはいけない」と強く言われているはずです。

それは、生活保護費は生活保護の受給者が生活を維持するための最低限のお金なので、借金の支払いに充てることが予定されていないからです。

実際に、生活保護のお金は国民の貴重な税金から支給されているのですが、最近では、生活保護受給者が増えすぎて、財源を圧迫していることも社会問題になっています。

そこで、生活保護受給者がこっそり借金をして、返済を継続しているのがバレたら、役所からは厳しくとがめられますし、改善を促されることになります。

それでも状況が変わらず返済を続けていたら、生活保護の受給をストップされてしまうおそれも高くなります。

そこで、生活保護の受給者が借金をしてしまったら、保護を止められる前に一刻も早く自己破産をして、借金をなくす必要があります。

2-2.自己破産以外の債務整理をする危険性

それでは、生活保護の受給者が借金をしてしまったとき、自己破産以外の債務整理をすることはできないのでしょうか?

たとえば、「任意整理や個人再生によって解決できないのか?」と考える方がけっこうたくさんいます。

自己破産以外の債務整理についても、基本的に無理だと考えるべきです。

任意整理や個人再生をすると、手続き後に一定額の返済が必要になってしまうからです。

任意整理や個人再生では、借金返済義務が完全になくならず、減額されるだけです。そこで、減額された借金を、手続き後に支払っていかなければなりません。その支払いが「借金返済」とみなされてしまうのです。

また、そもそも生活保護受給者には収入がないので(生活保護費は収入とは異なります)、個人再生することはできません。

そこで、生活保護受給者が借金してしまった場合には、必ず自己破産によって問題を解決する必要があります。