預金の差押えと聞いてどんなイメージが浮かびますか?

すべての預金が取られてしまうと考えがちですが、事前対策をとれば、預金を差押えられるリスクを大きく減らすことができます。

対策ポイントを知らなければあなたは預金をすべて失ってしまう可能性が高くなってしまいます

差押えられた後ではどうにもなりません。そこで今回は、預金の差押えの概要を説明し、対策時の2つのポイントを紹介していきます。

1. そもそも預金の差押えとはどんな手続きか?

預金の差押えとは、強制執行や滞納処分として、あなたの預金口座のお金を差押える法的手続きです。

預金を差押えられると、その口座のお金から強制的に借金の回収が行われます。

差し押さえが禁止されている年金なども、「一旦口座に入ってしまったら預金である」という理屈で、すべて差押えられるケースもあります

対策をとるようにしましょう。

1-1.預金が差押えられるまで

ローンや税金を滞納すると、預金の差押えリスクが高まるのです

すぐに差押えられてしまうわけではありません。

預金の差押えは、差押えになる前にいくつか前兆があります。ここではどういう流れで預金の差押えが行われるのかを紹介します。


<ローン延滞の場合>

1.ローン延滞による期限の利益を喪失

当初の約束通りローンの支払いができなくなると、「期限の利益を喪失」します。「期限の利益を喪失する」とは、「分割払いの約束が破られたので、一括で返してください。」と覚えておいてください。

2.訴訟→債務名義の獲得

あなたが一括で返済できない場合、債権者は訴訟の手続きに入ります。※

この訴訟を経て、債権者は「債務名義」というものを獲得します。「債務名義」があれば、預金の差押えなどの強制執行を行うことができるようになります。

※事前に公正証書を作成している場合や、不動産に抵当権等を設定している場合は、訴訟を通さずに、強制執行(預金の差押えや競売など)の手続きに入ることができます。

3.預金の差押えの申立て

債権者が債務名義を獲得すると、いつでも預金の差押えを裁判所に申し立てることができるようになります。

4.裁判所から金融機関・債務者へ「差押命令正本」が送られる

預金の差押えが申し立てられると、裁判所から金融機関に「差押命令正本」という書類が送られます。また、裁判所から金融機関に対して、預金の存否に関する陳述催告を行い、金融機関は2週間以内に回答をしなければなりません。預金者であるあなたにも差押命令が送達され、送達日から1週間を経過すると、債権者は差押えた預金を金融機関から直接回収することができます。


<税金滞納による滞納処分の場合>

1.税金滞納による督促状の発送

税金を滞納すると、納付期限から20日以内に徴収職員から督促状の発送が行われます。この督促状の発送日から10日を経過すると、いつでも給料の差押えを行うことが可能になります。

2.財産調査(金融機関、保険会社、取引先への照会など)

督促状の発送日から10日を経過すれば、給料の差押えも可能になるのです

まずは、徴収職員による「財産調査」が始まります。財産調査とは、あなたの預貯金がいくらあるのか?勤務先はどこで、給料はいくらなのか?といった調査です。

3.預金の差押え

調査が終わった後、預金の差押えなどの滞納処分が行われます。

1-2.預金口座はどうやって探すのか?

金融機関や行政はどうやってあなたの預金口座を探しているのか、その方法を知りたいと思います。その方法とは実はとてもアナログで、ギャンブルのような方法が採用されています。

どういうことかというと、例えば、100万円を回収したいA銀行が、あなたの預金口座を差押えたいとします。しかし、A銀行はあなたの預金口座の情報を一切把握していません。このような場合、以下のステップであなたの預金口座を探していきます。

ステップ1:あなたが利用していそうな金融機関と支店名をいくつか予想する

預金の差押えを行うには、支店名まで把握する必要があります。

あなたが利用していそうな金融機関をまず予想して、次にあなたの自宅近くの支店を利用しているのでは?と予想します。

一発で予想が的中する可能性が低いので、他にも何個か候補を予想します。

ステップ2:とりあえず、予想した支店に対して預金の差押えの申立てを行う

A銀行が10種類程の支店に的を絞った場合、100万円を10口に分けて(例えば10万円ずつ)、各支店に対して預金の差押えの申立てを裁判所に申立てます。

ここで予想が外れた場合は、ステップ1からやり直しです。運よく予想が的中したら、とりあえず10万円のみ回収が可能になります。

ステップ3:予想が的中した口座にターゲットを絞って再度預金の差押えを申し立てる

無事予想が的中した場合、残りの90万円を回収するために、予想が的中した口座にターゲットを絞り、残りの90万円をまとめて、改めて預金の差押えの申立てを裁判所に申立てます。

しかし、最初の預金差押えで預金口座がA銀行に知られたので、別の口座に資金を移動すれば、A銀行はステップ1からやり直すことになります。

以上が、預金口座を探す方法です。

もっと、金融機関同士が情報共有をして、システマティックに手続き行われていそうな印象ですが、実態は上記の方法が採用されています。

ポイントさえ知っておけば、誰でも簡単に対策を取ることができます。

2.預金の差し押さえ対策で知っておきたい2つのポイント

預金の差押えの対策は、「預金口座のお金をすべて引き出しておくこと」です。

この手続きをしておけば、預金を差押えられることはありません。

そうはいっても給料や年金は銀行振込が通常ですので、預金口座を全く利用しない生活はなかなか難しいと思います。

そこで、預金口座を利用し続ける場合でも、いくつかのポイントを抑えておけば、預金の差押えのリスクを大きく減らすことができますので、そのポイントを紹介します。

ポイントその1:債権者に知られていない預金口座を利用する

預金の差押えをするには、あなたの預金口座情報を特定しなければなりません。逆に、あなたの預金口座の情報を特定できなければ、預金を差押えることができないということです。

債権者から調査し難い預金口座(ネットバンクなど)を開設して、その口座に給料や年金を振り込んでもらうようにしましょう。

ネットバンクも最近で安全ではありません。

ゆうちょ銀行は口座の特定が簡単なので、ゆうちょ銀行にお金を預けている人は即刻引き出すようにしましょう。

ポイントその2:収入口座と預金口座を明確に分けるようにする

年金や失業保険は差押えが禁止されている財産でも、預金口座に入金された途端、「預金」として全額差押えに合う場合があります。

また、給料についても、差押え範囲が決まっていますが、預金口座に入金された途端、同じく「預金」として全額差押えに合う場合があります。

このような場合、裁判で争ったとしても、明確に入金されたお金が「給料、年金、失業保険等」であることを証明しなければなりません。明確に区別ができない場合は、有効な差押えであると判断されてしまう可能性があります。

事前対策として、給料、年金、失業保険などの振込口座は、その振込専用口座として新しく用立てておくことが有効な対策になります。そうしておけば、その口座には給料なら給料のみ、年金なら年金のみしか入ってきませんので、証明が簡単になります。

3.まとめ

今回は預金の差押えと対策ポイントを紹介してきました。

簡単なポイントだけ抑えておけば誰でも預金の差押えのリスクを大きく減らすことができますので、ここに書いてあるポイントを参考にして、事前対策をとるにしてください。