競売後残債はどうなるの?
競売しても任意売却しても残債は残ってしまいます
みなさまが思い悩み気になるところだと思います
債権及び債権者の回収の仕方で3つの残債処理が考えられます
※(自己破産しない場合)
残債処理1
時効
(消滅時効の援用をして、借金を0(ゼロ)にする)
残債処理2
一括返済
保証会社からサービサーに債権譲渡された後(債権額の何割かの現金を用意して)サービサーより債権を買い取り借金を0(ゼロ)にする。
残債処理3
分割返済
債権者との話し合いで支払える範囲内で永きにわたりずーと支払う
①消滅時効
消滅時効とは、一定期間、権利が行使されなかったことによって、その権利が消滅します
民法では”権利の上に眠るものを保護しない”とされています。債権があるからといって、何もしない場合はその権利は消滅致します。消滅する期間は下記になっています
消滅時効にかかる期間
債権 | 時効 |
一般債権 ( ) | 10年 |
判決で確定した債権 ( ) | 10年 |
商事債権 (商法522条) | 5年 |
地代、家賃、管理費 ( ) | 5年 |
注意 金融機関により時効になる期間が5年か10年になります
株式会社である金融機関(普通銀行・ノンバンク等)は、「商人」に該当し商法が適用され債権消滅時効期間は、5年です。
特別法の規定により設立されている金融機関(住宅金融公庫=現・住宅金融支援機構、信金・信組・ろうきん・商工中金・農協等)は、非商人であり民法の規定が適用となり、債権消滅時効期間は、10年となります
債権者も債権が消滅しないよう、法的手続を講じてくると思います
状況(債務者の)によってはそうとも断言できないのです。
債権回収のプロが
になるのを知らずに債権を放っておくことがあるのだろうか。そう疑問を持たれる方もあると思いますが、法務省の平成29年3月の発表データによれば
サービサーの累積取扱債権数は1億5,889万件で累積取扱債権額は410,9兆円となっていますので1件当たりの債権額は約300万円弱となっています
債券回収担当者一人が担当する債権額は、相当の件数を担当しているものと推測できます。
当債権回収担当のノルマも当然にあるでしょう
無かったにしても成績、ボーナスなどに影響するでしょうから、担当者とすれば限られた時間で、効率良く回収するには
優良債権(高額で、債権回収がしやすいもの)に、より力を入れることになり、手間がかかり、時間がかかるもの、回収できそうにないもの等は後回しにされ放っておかれる可能性があるのです。
なお、時効が成立しているかどうか、そして起算日(支払い期日)についても、法的判断が難しいですので、素人判断は避け、法律家に確認して頂きましょう。
時効の中断
時効は下記の手続きにより中断致します
(
)①裁判上の請求( )
②支払督促の申し立て( )
③和解及び調停の申し立て( )
④破産手続き参加( )
⑤催告( )
⑥差押、仮差押、仮処分( )
⑦承認( )
⑤の催告を行っただけでは時効は完全に中断しません 催告後6カ月以内に裁判上の請求が必要です 6か月ごとに催告をしても時効は中断しません ここが重要なポイント 一般的には6カ月以内に毎回催告書、請求書を発送しておけば時効が中断されると勘違いされています |
競売、任意売却後に無担保の残債が残ります
たとえば2000万円借り入れのあるマンションを1500万円で任意売却したとした場合、500万円の残債となります
後日、債権者は、一括で残債を支払うよう催告してきます
債権者から6カ月ごとに催告書が郵送されてきていたとしても、その状態が5年過ぎた場合、時効が成立していると思われます
そのような場合は、法律家に相談することをお勧めします
もし、時効が成立していれば、下記に示す
により残った残債については無かったものとなります。尚、途中で、支払う旨の約定書を提出したり(⑦の承認)、少しでも支払いをすると、そこで時効が中断します
時効相談事例1
Q 何もなければ5年で消滅するとのことですが借金は消えるのですか?
A 時効の効果は、それをすることによって利益を受ける人が援用(下記参照)をして、初めて効力を生じるとされていますのでその手続きをふまなければなりません。( )
時効相談事例2
Q 現在、サービサーより半年に一度の割合で督促状がきます、普通郵便です。半年に一度督促状をうけとれば時効が中断すると聞きましたが、そうでしょうか?
A 督促状が半年に一回づつ送達されたとしても時効は中断致しません。仮にこの状態であれば、民間の住宅ローン(信用金庫、信用組合は除く)は支払い期限より5年で消滅時効にかかります。時効が中断となるには、支払い督促送達後6カ月以内に裁判上の手続きが必要となります。
裁判上の手続きとは、このケースの場合は無担保債権となっていますので、支払い督促、民事調停、強制執行認諾公正証書、裁判を指します。
債権者が時効を中断するためには、督促状を送達したのち6か月以内に法的手続きを取った場合、その督促状の送達日が時効の中断日となります。
時効の中断事由として
に「請求」とあります。これは単なる請求ではなく「法的手続きの請求」ということになります。(裁判上の請求)
時効相談事例3
Q 銀行の保証会社からサービサーに売却されしばらく何の連絡もなかったのですが、最近連絡があり、残債の一部(金額は少なくてもよいとのこと)を支払いを求められました。翌日に云われた金額をふりこみました。この場合、時効は中断したことになるのでしょうか?
A 残債の一部でも支払いをしますと民法147条3項の「承認」にあたり、時効が中断してしまいます。
時効相談事例4
Q 裁判所から支払いの督促が来ていましたが、まったく無視してそのまま放置しています。間もなく支払いを延滞して5年が過ぎようとしています。時効になっているのでしょうか?
A 債権者から訴えの手続きがなされると時効は中断されます。そして、裁判所の判決が下されると時効はさらに伸びて、今度は判決の日より10年となります。(判決で確定した債権)
時効の援用(えんよう)
債権は、消滅時効期間を過ぎたからと言って無くなるものではありません。
時効により利益を受けようとする意思表示である
に定める「時効の援用」が必要となります。時効の援用をして、初めて債権が消滅します
時効の援用は、債務者だけでなく、保証人・連帯保証人も、時効により直接利益を受ける者として、時効の援用ができます
時効になっていても、時効の援用をしない限り、債権者の支払い催告は、止むことはありません
それでは、時効の援用はどうすればよいのでしょうか。
それは、郵便局より内容証明郵便で相手債権者に郵送するだけです。
下記に簡単な例を書いておきます。
なお、法律家に書類を確認していただき時効が確認され、ついでに内容証明郵便で出してもらうのもよいでしょう。
時効の援用例
内容証明郵便 (同じものを3通作成、1行20字以内、1枚26行以内)
通知書
前略
貴社より送付された00年00月00日付の当方に対する金銭貸借請求に
対し、下記の通り通知いたします。
貴社より借り受けた金員は最終弁済日より既に5年以上経過しています。
貴社の当方に対する貸金返還請求権は商法所定の消滅時効により、すでに
消滅しています。
よって本件貸金については消滅時効の援用をいたします。
今後、当方への請求は一切なさらないようお願いします。
平成00年00月00日
通知人
広島県広島市東区 xx
山田 太郎
被通知人
東京都品川区品川 xx
株式会社牛島債権回収
代表取締役 牛島 債権 殿