伊藤野枝みたいな | あらかんスクラップブック

あらかんスクラップブック

60代の哀歓こもごも

コロナというのはいつまで続くのだろう。

感染していても無症状のウイルス、そんなのが拡大している。 もちろん見えない存在。マスクだ、消毒だ。 それでも、感染するときは感染する。 自粛だの、ガマンだの、新生活様式だのに従わされるのは、仕事をもっていなくても、もうしんどい。 

アベ、ガースーは、憲法違反、法律違反も平気のへっちゃら。 医療従事者には、「みなさん、感謝しましょう」だけ。 コロナ対策も地方行政に対策丸投げして、「全力で取り組んでいる」。

一方、防衛費の来年度計上予算、5兆3400億。敵基地攻撃能力を持つ長距離ミサイル開発だとさ。 憲法9条改正は折込済み。

その一方で、「ガースー」だの、携帯料金値下げ、NHKはEテレ切り離して、視聴料金を下げるだの、ポピュリズム満開。 

 

このガマンにがまんは、なにかに似ていると、プールで歩きながら考えて…、そうだ! ジェンダーの押し付けと同じ。 女は「良妻賢母」であり、さらに「キャリア女性」としても完璧を求められている。ワーキングプアであっても、上(男)の指示で、ひたすら人の世話に明け暮れ、責任を取らせられる。 

 

25mプールをUターンたら、アタマが突然切り替わり、明治時代に開国してから、日清、日露、第1次大戦。 治安維持法の大正時代。

がまんにがまんの民衆から、社会運動が起きた。 大正デモクラシー、女性の権利拡大、全国水平社…。今から思えば、革命的だ。

私は堺利彦が好きだなぁ。

 

近所のしょぼい図書館で探したが、関連した本はなかった。

が、伊藤野枝は、ある、ある。 題名が派手だから、読まれてるのかも? 村山由佳は60人予約待ち。

 

伊藤野枝は、関東大震災のときに、アナキストの社会運動家、大杉栄と甥っ子とともに憲兵隊に拘束され、拷問の上、虐殺。その3人の遺体は古井戸に投げ込まれ、その上にレンガや瓦礫を投げ入れられたという。

わずか28年の生。 17歳で故郷の福岡今宿村を出奔してから、7人の子どもを産んだ。 人生のほとんどが妊婦か乳飲み子をかかえた身で、

超貧乏。働かず、雑誌「青踏」に筆一本でめちゃくちゃ原稿を書き、私生活も派手で、支配されることを拒否し、わがままに生きた。

 

私は若かりし頃、小説を書くための「文学学校」に通っていた頃、乳飲み子をかかえた同じ仲間に、伊藤野枝みたいな人がいて、大正時代のフェミニズムについて初めて知ったし、なにかにつけて、「奴隷根性じゃだめなんだよ。 他人の生を生きるな」と私に言ってたのを思い出す。

最終電車がなくなって、よく部屋に泊めてもらったが、汚いし、ミルクとすえた排泄物が混じった匂い、連れ込んで居座っている男…に閉口した。

就職しないで、家でも働かず、どうやって食べているのか?

朝、始発の電車に乗るために外に出ると、ほっとした。

その後、中小企業の跡継ぎ社長と結婚した。一度、家に伺ったが、彼女夫婦の部屋だけが、やっぱり汚くて、彼女の不服従は健在で、身を粉にして働いている夫が気の毒に思えたのを覚えている。 

 

あと、「自己テロル」が口癖で、休んでいると思ったら、重い鬱病で、布団の中でうずくまって寝て動かない男もいた。 そのビクともしない布団の盛り上がった丸味を思い出す。 奥さんが乳飲み子をかかえて、「2週間もすれば、起きるから」と言ってた。

70年安保という、日米安保条約改正の反対運動に挫折した学生たちがまわりにいっぱいいた。 

その屈折した暗さ。 でも、暗さを内に秘め、めちゃ働いても、働けば働くほど、カネに縛られて、手に入れたものは、自己責任。

今は、自己責任当たり前で、コロナ禍で自分に絶望して、女たちが自ら死を選ぶ。

 

コロナ禍の現在、伊藤野枝のわがままな生き方をたどることは、意味がある。

絶望している女に読んでほしい。 自分の生きたいように生きていいんだよ。ぶっ飛んでいいんだよ。

どうせ希望がないなら、好き勝手に生きよう。