ブラック有料老人ホーム | あらかんスクラップブック

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新聞折込みやポスティングなどで、「入居者募集中」の有料老人ホーム割引チラシが入っている。 

たとえば、三人室月額利用料(管理費、食費、家賃相当額、光熱水費)

お1人様通常価格 要介護1~5

 182,464円~156,280円 が 96535円(1日あたり約3,218円)

 

入居金はゼロで、全国で100余りの施設を有する中堅。入居者数は3万人。

企業の寮やアパートだった建物を借り上げて住宅型有料老人ホームを拡大してきた同族企業。 テレビCMもやっている。

有料老人ホームとよばれる施設には、介護付と住宅型に分かれる。

介護付は、そのホームで働くスタッフが直接介護サービスを提供し、看護師の配置義務もある。

住宅型は、住宅だけを提供し、介護は外部サービス。看護師の配置義務はない。 外部サービスといっても別会社ではなく、施設併設が多いから、介護付と一見、変わらない。

 

高齢者の介護に悩んでいる人は多い。 チラシを見て「安い!」。見学して、「近いし、建物もきれい」で、入居を決める人がいるかもしれないが、十分注意してほしい。

 

まず、月額利用料というのは、介護費を含まない。介護の費用は介護保険から。要介護度に応じて1~3割を利用料にプラスして施設に払う。

さらに、それ以外の有料サービスがある。 理美容やマッサージは実費。 レクや外出、受診なども有料の場合もある。

 

格安とか、通常価格割引というのは、まず疑ってほしい。

知り合いの経験によれば、入居金ゼロで、入居利用金月額16万のはずだったのが、実際請求がきたのが、25万だったという。

施設にたずねたら、おやつ、喫茶、フルーツ、衣料品の提供。 オムツ代。 レクの参加費用…。

家族に無断で、これらの有料サービスを提供していた。 「本人に確認した」というのだが、認知症の本人に確認すること自体がおかしい。

この施設では、午後のおやつは、職員がワゴンに菓子をのせて、居室をまわり、希望者に提供するという。 家族が面会に行き、布団のなかに見たこともない袋菓子が隠されているのを発見してびっくり。 

おやつも、水分補給のために提供する飲み物も有料。フルーツは一切れ380円。 嚥下(飲み込み)やアレルギー、健康状態(糖尿病)の把握もなく、菓子を押し売りするのは、一種の身体的虐待。 

 

さらに、こんな押し売り行為を行う職員には、ノルマが課せられ、施設ごとの売り上げも本社から日次管理される。

入居金ゼロの有料老人ホームの問題は、私もブラック施設体験記として、「介護職のリアルと突破口」の本に書いたが、有料サービスで儲けているケースが多い。

 

知り合いは、入居金ゼロなのを幸いに、退所に向けて次の施設を探している。 ある日、電話がかかってきて、「お母さまの最後もお手伝いをしたいので、本社提携の葬儀社を紹介したい」という。 どこまで、売り上げ至上主義なのかと、怒り狂っていた。

 

最後に、入居者募集中のチラシの裏面は、「職員募集」。

パートの時給は930円~1000円。千葉県の最低賃金は923円。 1000円もらうためには、お菓子のワゴンサービスを頑張らなきゃいけないんだろうね。

 

最近はネットなどで、ブラック有料老人ホームが明らかになって、かしこい利用者や職員はだまされない。

それでも、大量のチラシ配布や テレビCMで、次々と被害者がでる。

 

介護保険事業所として認可している以上、国としてもブラック有料老人ホームの対策に乗り出してほしい。 有料老人ホームの「有料サービス指針」みたいなのを検討したらどうか。

 

また、ワゴンサービスをやっている職員は、誇りを持って、即退職しよう。