リンク 第二話 | 奇想天外摩訶不思議

奇想天外摩訶不思議

星新一に魅せられ、こういうお話を書いてみたくなりました。
中学2年生の綴る駄文、しかも不定期更新ですが、よろしければお楽しみください。

「どうだね、調子は」

彼は医者。それも精神科医だ。軽い欝状態の患者から、
隔離されるほど重度な患者まで幅広く手がけている。

「悪くないですよ」

そして彼が患者。俗に言う欝だがそれほど重度のものではない。
また、彼が欝であることを知っているのはこの医者だけである。

「ならいいんだ。本のほうは進んでいるかね」

「まぁボチボチと」

そう、彼は作家なのだ。それほど人気があるわけではないが、
生活をするには十分なほどの印税をもらっている。

「今度の作品、タイトルは?」

「明確に決まったわけじゃないんですがね。
 一応『発作的殺人』と名付けているところです」

「へぇ。精神科医としても興味深いじゃないか」

「そう言っていただけるとありがたいですよ。
 しかしどうもアイデアが浮かばない。
 やめちまおうか、そう考えていたところです」

「まぁどうするかはもちろん君の自由だがね。
 なんだか勿体ない気もする。よかったら途中まで読ませてくれよ」

「ええ、是非」

医者はひと通り目を通した。文才もあり、ストーリーの構成も素晴らしい。
しかし何かが足りない。そんな気がする。

「ふむ・・・」

「どうです。はっきり言ってやってくださいな」

「素晴らしいと思うよ。非の打ち所が無い。
 しかし何かが違う気もする。これまでの作品と何かが・・・」

「そこなんです。ストーリーが思い浮かび、
 書いているうちはなんともないんですがね。
 少し読み返すしてみるとどうにも気に入らない。
 しかしどこがおかしいのかもわからない。
 もどかしいを通り超えて不思議にすら感じてくる」

「まあ、簡単な仕事じゃないんだろう、小説家なんて。
 スランプの一種だと考えればいいさ」

「そういうものですか」

「幸か不幸か、あいにくの欝状態だし、一時的なものだと思うぜ」

「そうですなぁ。気にしないことにしますか・・・」

「ああ、一つ考えがある。私の友人に刑事がいるんだ。
 小説のヒントになるようなことも聞けるんじゃないかな」

「へえ。それはありがたいですな。しかし悪く無いですか」

「それがね。どうも彼、君のファンらしいよ。
 それに自分の体験談が小説になるなんて悪い気分じゃないはずだ」

「なるほど。それじゃあ是非お願いします」

「ああ、任せなさいよ・・・」

そう言うと医者は煙草を一つ取り出し、窓の外を見た。

「それにしても嫌な天気だな」

作家も窓の外を眺め、同じく呟いた。

「ええ、見事な曇天。余計陰鬱に感じますよ」


外は木の葉が強く揺れていた。今日は風が強いらしい。
空は濃い、黒に近い灰色。それは何かを予兆しているかのようにも感じられた・・・