男は刑事。今日も殺人の現場にやってきている。
経験は浅いがかなりの手腕だと、署内でも定評がある。
「死因は頭部の打撲で間違い無いかな」
「解剖を行なっていないのでなんとも言えませんが・・・」
「そうか・・・他に外傷はないんだね」
「いえ、それが・・・」
「他にもあるのか」
「はい・・・胸部にはナイフによる刺し傷。頭部には銃弾。
検死の結果によると水死とも取れるらしく、
さらには各部位の骨が砕けており高いところから落とされた可能性も・・・」
「ふむ・・・よほど恨みのある者の犯行だな・・・」
「やはり解剖の結果を待ちますか」
この状況だと薬殺も考えられる。
それを検証するためにはやはり一度解剖すべきだ。
ほとんどの者はそう考えた。
しかし
「いや、解剖は必要ない。死体はこのままにしておけ。少しも動かすなよ。
そしてここから見えない場所に人を何人か配置するんだ」
「ええ・・・」
刑事は一体何を考えているのか、周りの者はわからなかった。
しかし、実績を残しているのだ。従わない訳にはいかない。
「・・・わかりました。周りの住人に許可をとり、
それぞれの家に何人かの人員を配置します」
「ああ、よろしく頼むよ」
その夜、犯人は逮捕された。刑事の予想通り、殺害現場に現れたのだ。
その際、手には燃えた木の棒を持っていたという。
「・・・解剖の結果、被害者の腹からは
薬殺に使われたと思われるカプセルが発見されました。
刑事。どうして犯人がやってくるとわかったんです。
今後のためにも教えて下さいよ」
「簡単なことだ。犯人は被害者を恨んでいた。その結果がこの殺害方法だ。
彼は思いつく限りの全ての殺人方法を実行したんだろうな。
もちろん途中で被害者は亡くなったんだろうが。
その最初に行う方法が薬殺だ。なにせ死んでからじゃ薬を飲ませることができない」
「なるほど。だから解剖の必要はないと言ったんですか・・・」
「ああ。そして犯人が何故やってくるかわかったか、だったね。
簡単だよ、代表される殺人の方法が死因から一つ抜けていたまでさ・・・」