「宇宙人ってのはいると思うかい」
「さぁ。いると言えば嘘になるし、いないと言えども嘘になる」
「そりゃそうだ。わからないんだからな」
当たり障りのない、実に曖昧な会話だ。
この友人は星を眺めるのが趣味らしく、ちょくちょく空を見上げている。
今も望遠鏡なんぞを眺め回しながらの会話だ。
「ちょっと見せてごらんよ・・・あれはなんて星だい?」
僕も星を眺めるのは嫌いじゃない。たまにこうやって尋ねることもある。
「ああ、あれは木星だ。ああ見えてもガスで出来ているんだぜ」
「ほう、宇宙人はいなさそうだな」
星なんてのはどれがどれだかすぐわからなくなる。
それを覚えている学者やこの友人などにはつくづく感心してしまう。
「それでさっきの話だがね・・・」
彼は筒を覗きながら話を戻そうとする。
しかしそこから話が進まない。彼が黙り込んだためだ。
「おい、どうしたんだい」
「ちょっとまってくれ・・・」
妙に焦った面持ちだ。
「円盤でも見えたかい」
「いや・・・消えちまったが・・・確かに光っていたよ」
「星じゃないのかい」
「いや動いてた。飛行機でもない。高かったからな」
「そりゃいいや。そういうのはよく見えるのかい」
「たまにね。しかしすぐ消えちまうのがほとんどだ」
これは驚きだ。“たまに”とは言いつつも、
すぐに消えてしまう飛行物体に彼は何度も遭遇しているという。
「君は、どこか行ってみたい星はあるのかい」
「そうさなぁ・・・」
そう言うと彼は黙り込んだ。よほど真剣に考えているのだろう。
「・・・ほら、そこに見えているだろう、青い星」
「ああ、見えるね。あそこに行きたいのかい」
「そうだ。実を言うとね、僕の見る飛行物体は
すべてあの星から出てきては消えちまうんだ」
「そいつは驚きだな。あの星には宇宙人がいるかもしれない。なんて星だい?」
「なんていったかな。確かチキュウという星で・・・・・・・」