あれは昨日のことだ。テレビを見ていたら急に画面がザーザーいいやがる。
テレビが壊れたか?電波がおかしくなったか?
どっちにしろ不快には違いない。どうにかならないものか。
どうしよう、こうしようと考えているうちに、あることに気がついた。
ザーザーいってやがる画面をよくみると、どうも人の形に見えてきた。
いつもならば、気のせいだろう、で済ますところだが
丁度暇を持て余しているのだ。じっくり眺めて見ることにした。
不気味とは思わなかった。不思議と引き込まれていくような気がする。
今思えばさっさとチャンネルを変えちまえばいいんだがね。
今はそんなことしても無駄だ、そんな気がしたのさ。
そのときだよ。
「・・・ウ・・・」
なにか喋った気がした。テレビだからね。
電波が途切れ途切れ放送を拾っているのかもしれない。
「・・・ウメ・・・ウメロ・・・」
「埋める?何をだい」
我ながら何をやっているのか。
テレビに話しかけてやがる。端から見たら酔狂もいいところだ。
「オ前・・・ノ・・・家ノ・・・石・・・青イ石・・・」
いや驚いたね。まるで俺の言葉に返答したかのようだった。
「青い石?なんのこと・・・」
そこで考えると思い当たるフシがあった。
5つか6つのころだったかな?庭で綺麗な石を見つけてね。
持ち帰って部屋に置いといたはいいが、捨てるに捨てられない。
そうしてとうとう今も部屋に飾ってある。
「どこへ石を埋めるんだい」
「山・・・山ニ・・・埋メル・・・ンダ・・・」
まいったね。とうとう会話が成立した。ここまできたら引き下がれない。
しかしそろそろ恐怖心なんてものが浮かび上がってくる。
「山・・・山ってぇと近くの山でいいのかい」
「・・・ソ・・・ウダ・・・明日マデ・・・ニ・・・」
そこまで言うとテレビは普通のチャンネルに戻った。
チャンネルの様子から見てもさっきまでのような言葉は聞こえてきそうにない。
ここまできて恐怖を感じた。あの様子を見るからに、霊の類に違いあるまい。
山に石を埋める?明日までに?明日までに埋めなければどうなるのだろう。
やはり呪われてしまうのだろうか。次々と不幸が訪れ、そして・・・。
そんなことがあってはならない。別にとっておくほどのものでもないのだ。
さっさと埋めちまおう・・・・・・。
そうして埋めちまったのさ。あれっきりテレビは正常だな。
石ってのは霊が憑きやすいだなんて言うしな。君も気をつけたまえ・・・
―――――――――――
「ふむ、この石で間違いない」
それは、男が石を埋めた山にいた。
大きく、丸い。そしてすこしばかり浮いている。俗に言うUFOで間違い無いだろう。
そして乗っているのは・・・大きな目、鼻はなく、耳は大きく尖っている。
宇宙人というやつに間違いなさそうだ。
「ちょっと待っていてくれ」
そういうと彼は奥の部屋に入った。残された2人は話し始めた。
「しかし変わった種族だよ。地球人なんてのは」
「まったくだ。なんでもかんでもレイとやらのせいにして自分から勝手に焦り始める。
そして俺たちの思い通りに動いてくれるんだ。世話のないことだ」
「昔から使われている方法だが最初に考えた奴にはつくづく関心するよ」
「地球人も自分たちの信じるレイとやらが宇宙人の仕業とは思うまい」
「やつらがこの事実に気付くのは何年後だろうか」
「さぁ。10年、20年、ひょっとすると100年経っても気づかぬかもしれない」
「まぬけなことだ。気づいた時のやつらの驚く顔を拝むのが楽しみでならない」
そのとき、ドアが開き先程の彼が入ってきた。
それと同時に2人のうちの1人がこう尋ねた。
「一体、その石は何に使うんだい」
すると彼は突然、神妙な顔でこう語り始めた。
「あれは昨日のことだ。テレビを見ていたら急に・・・・・・」