私は27歳で「南青山デンタルクリニック」を開業しました。
若いということ、競争の激しい東京のど真ん中ということもあり、5年近くの間、ほぼ赤字という苦しい状態の経営を続けていました。
その時に一番大変で大切だったのが気持ちのコントロールでした。
目の前の現実は当然厳しい状況なので、「もうだめだ」「倒産したらどうしよう」「なぜこんな状況なのか」など、マイナスなイメージや言葉が次から次へと浮かんできます。
当時の自分は、歯科技術の向上や経営方法がどうかという前に、自分の気持ちを切らさないことが何よりも優先されていたような気がします。
今私が意識して大切にしていることの一つに「心が体を動かす」ということがあります。
心が後ろ向きになってしまえば、行動も後ろ向きになってしまいます。
目の前の現実を見れば、当然、後ろ向きなことを考えてしまうので、結果的に焦ってイライラして目先の損得に一喜一憂してしまうという悪循環が続いていました。
当時は、苦労して成功された人や恵まれない状況でもそれを乗り越えて前向きに生きている人の本を読んでは、自分の気持ちを切らさないようにしていました。
そんな中、ドトールの創業者も同じような苦しい時期に、「イライラしたり焦っても良い結果には結びつかないから、つぶれてもいいから、今日一日に集中しよう」ということを意識して経営していた、ということを読んで自分も明日のことを心配するよりも「今日一日」に集中することを考えようと意識するようになりました。
かといって、今までの恐怖心やイライラが全て消えたわけではありませんが、無意識に悪循環に流されそうなのを、前向きに考えようと意識的に考えるようには変わってきました。
今大切にしている生き方の「無意識にながされながら生きないで、意識して理想に向かって生きていく」ということを体感し始めた時期だったように思います。
当時、気持ちが切れないようにいろんなことを試みながら、4,5年という長い時期を乗り越えてきたのですが、その中でも今も一番記憶に残っているのが「今日から開業」という考え方があります。
当時の自分のクリニックは、周りと比べると売り上げも利益もクリニックの知名度など全てのことが、普通の歯医者の平均と比べてもかなり劣っている状況だったのですが、それでも自分が開業した日に比べれば、少しずつではあるが数字的にも向上していることは間違いなかったです。
ただ、こんな遅いペースの成長に意味があるのかと考えると焦ってしまい、こんなことを繰り返しても意味のないことではないかと考えてしまいがちだったのです。
だから毎日「今日から開業」と考えることで、周りのクリニックと比べて落ち込むことを減らし、周りと比較しないで過去の自分と比べる努力をしていました。
意識して「今日から開業」と気持ちを盛り上げようとしても、無意識の悪魔の自分が「そんなことをしても無駄だよ」と話しかけてくる葛藤の繰り返しだったように思います。
人生は何と比較して生きていくかで幸せにも不幸にもなるものですが、今でさえ、比べる対象を間違えることで、自分のことを不幸だと思い込んで悪循環に陥ることがあります。
そんな時、当時の「今日から開業」と意識していた自分を思い出して、「今日からスタート」と考えればいいじゃないか、と考えなおすことがあります。
中村天風先生の教えの中に「人生は心ひとつの置き所」という言葉あります。
心が前向きになれば行動も前向きになり、その逆もあります。
全てのスタートは心なのだ。
そういう視点で、今自分の考えていることは、いい結果に結び付く考え方なのかどうかを意識して生きていくことが大切なような気がします。
比較の対象は他人ではなく、過去の自分であることが、心が乱れないコツのような気がします。