「なにくそ!」と思えるか
「失敗したくない」というのは、人としてごく自然な感情です。何か新しいことを始めるとき、できれば恥をかきたくないし、できれば最初からうまくやりたいものです。だから事前に調べて、準備して、できるだけ失敗しないように大抵はするでしょう。今はスマートフォンひとつで、いくらでも情報を集められます。初めての趣味でも、道具から費用、ルール、評判まで調べてから始めることができます。
でもAPSには「失敗しないように」は通用しません。だって、競技なんですから。勝者はひとり、その他は負けます。
もちろん、クラスや順位、成績だけがすべてではないでしょう。自己ベストを更新することも、自分の課題を克服することも立派な成果です。それでも試合に出れば、誰かが勝ち、自分が負けるという現実からは逃げられません。
そして、APSを始めた人の中には、その現実を受け止めきれずに辞めてしまう人もいます。
・思ったより当たらない
・練習では撃てたのに、本番では点数が出ない
・自分より後から始めた人に負ける
・何度練習しても、なかなか順位が上がらない
これらは競技をやっていればいくらでもあります。ところがそこで「なにくそ」と思う人がいます。
・負けたから、次は勝ちたい
・前回より一発でも多く10点に入れたい
・あの人に負けたくない
・自分自身に負けたくない
そうやって、また射場へ撃ちに行きます。トビー澤田は、ここがAPSの面白いところだと思っています。失敗しないことが面白いのではありません。むしろ、失敗するから面白いのです。
一度も負けなければ、次に何をすればいいのか考える必要もありません。うまくいかないから、原因を探す。練習方法を変える。フォームを見直す。道具を疑う。そして、もう一度試合に出る。それで、また負けることもあります。
それでも「次はどうする?」と考えてしまう。この繰り返しにハマると、なかなか抜けられません。
だから、APSを始めるのに必要なのは、「失敗しないための十分な知識」だけではないのかもしれません。
むしろ「負けても、もう一回やってみよう」と思えること。そちらのほうが大切なのだと思います。
APSは、最初からうまく撃てる人のための競技ではありません。外して、負けて、悔しがって、それでもまた撃つ。その「なにくそ!」が出てきたとき、射撃は単なる的当てから、生きがいのひとつへと変わっていくのかもしれません。