本棚の片付けをしていて、昔読んだ「デューク」という短編を見つけた。
「デューク」は江国香織さんの短編集「つめたいよるに」(新潮文庫)の冒頭にある短い小説だ。
5分もあれば読めるほどの短い短編だが、そのラストシーンの感動の余韻は数日間続く。
犬好きの方ならご存知の方も多いこの短編は、以前に共通一次センター試験の国語問題で全文が
出題され、試験会場のあちこちからすすり泣きの声が絶えなかったそうだ。
この短編は何度読み返しても、私はそのつど数日間爽やかな感動に包まれてしまう。
愛犬を亡くした飼い主に訪れる優しく心温まる奇跡の物語であるが、お別れの悲しみより、
愛犬への感謝と明日への励ましをつよく感じる作品である。
悲しいけど幸せな気持ちになれる、そんな話である。
幼くして他界した愛娘が成長した娘の姿になって父親のもとに現れる話を書いた名作、
浅田次郎さんの「鉄道員(ぽっぽや)」を思い出す方も多いだろう。
私はペロが7、8歳だったころ、ペロが10歳になった日の朝にペロが突然10歳の女の子に
変身している夢を見たことがある。
何故そんな夢を見たのか不思議だが、単にペロにそうなって欲しいという願望だったのかも知れない。
しかし残念ながら、ペロが10歳になっても夢は叶わなかった。
現実にはペロは女の子にならずガン患者(患犬)となった。
お盆にはご先祖様の魂がこの世に戻ってくるそうだが、ワンコの魂もやはりこの時期に
戻ってくるのだろうか?
ペロの魂はいつも私の傍にいて、自由にあの世とこの世を行き来しているような気もするが、
お盆は宗教上の一つの祭事として、謙虚にご先祖様に感謝したい。
ルカもいっしょに、ペロをはじめ我が家の亡き愛犬たちに感謝しお参りをした。
今日のルカの幸せはペロたち歴代のワンコのおかげであることを、犬なりに分かっているだろう。
【お墓参りのルカ、「はいはい、きちんとお参りしましたワン!」】
私の体調不良で久しぶりのお墓参りだった。
数年前までここにはペロとよく来た。
そのころはペロのいない暮らしなんて想像もしなかった。ましてや、こんなお転婆娘とここに来るなんて・・・。
ペロへの想いは尽きない。
蝉の鳴くジージーという音がやかましいほどの夏日に、ご先祖様のお墓の前で私は不謹慎にも
ペロと見た夢のことばかり考えていた。
虹の橋の広場に戻っていくペロを見送る夏の夜。
いつでも戻っておいでね、ペロ。