殺処分寸前のハナを保健所から引き取って3ヶ月が過ぎた。
ハナのアカラス治療は続いていた。
イベルメクチン内服と毎週の薬浴とティーツリー油の塗布を継続していた。
皮膚炎は軽快し、脱毛していた炎症部位には新しい被毛が生え揃ってきた。
痒みはなくなり、患部を掻いたり咬んだりすることはなくなった。
今日はシャンプーじゃないんだよ、ハナちゃん。
【口の周りも左前足も毛が生えてきた】
今日は経過観察と血液検査に動物病院に行く日だ。
脱毛部位のびらんや出血は治ったので、抗生剤の内服と塗布は終了したが、
まだイベルメクチンの内服は続いていた。
薬剤による肝機能障害や貧血など副作用が出ていないか、血液検査を受けた。
【私に抱えられて採血中のハナ】
【採血が終わって喜ぶハナ】
再度、毛根組織を取って顕微鏡検査も行われた。
採取したサンプルではアカラス幼虫の死骸が数個確認されたが、成虫や虫卵は
見つからなかった。
しかし、爪床や毛根に潜んでいる虫卵が孵化して再燃することもあるので、まだ
油断はできない。イベルメクチン内服は今後も3ヶ月ほど継続することが望ましい。
血液検査にも異常はなく、むしろヘマトクリット高値(57%)で血が濃すぎるようだ。
ハナは元気すぎるので、少々献血して血を抜いてもらった方がよいようだ。
イノーバ、ANF、ナチュラルバランスなどの上質なドッグフードのおかげで、
体調も栄養状態もよく、体重も9kgに増えてほぼ標準体重になっていた。
【検査結果が良くて、一安心】
今日はこれから、大切なハナのお仕事、初出勤の日でもある。
お洋服を着て、お昼すぎにハナが向かった先は・・・
【隣町の総合老人福祉センターへ】
ここは通所、入所のお年寄りが憩う介護施設だ。
セラピー犬の研修生として、ハナはお年寄りの皆さんに紹介された。
犬が苦手なお年寄りも若干名おられたが、ほとんどの方は大喜びで迎えてくれた。
人間大好きの温厚な性格だけが取得で、何の技能も芸もないハナにはうってつけの役である。
されるがままに皆さんに抱っこされ、皆さんの首や耳の臭いをクンクン嗅ぎ、お顔を舐める。
それだけでお年寄りの表情が生き生きと変化する。
【犬好きなおばあちゃんから、「よう、来てくんしゃったのう。」】
無表情で何事にも無関心だったおばあさんは、昔、犬を飼っていたらしい。
このおばあさんが笑うのは数ヶ月ぶりだそうだ。
おばあさんは愛犬のいた昔の幸せな日々にタイムスリップしているかのようだった。
【愛犬と暮らした日々を懐かしむおばあさんと、その愛犬になりきるハナ】
はじめは少し緊張していたハナも徐々に雰囲気に慣れ、尻尾を振りながら
皆さんに愛想を振りまいていた。 スタッフの方にも優しくしてもらい、
人間が大好きなハナにとって、これほど楽しい仕事はないだろう。
1時間ほどの短い慰問であったが、ハナは定期的に施設へ来てくれるよう頼まれた。
【mickeyママさんより頂いたお洋服を着て、初仕事のあと大好きなお散歩へ】
ハナのアカラス治療は山場を越え、ゴールが見えてきた。
あと3ヶ月再発がなければ、主治医の先生からアカラス完治の太鼓判がもらえるだろう。
そして、めでたいことに施設で働く介護福祉士の方に、家族として迎えていただけるという
縁談がまとまった。
もうすぐ、ハナは飼い主さんと一緒に出勤できるようになる。
【「シャンプーのおじさん、おばあちゃん、皆さま、お世話になりました。」】
繁殖犬として不幸な半生を送ったハナは、人間の勝手な都合で捨てられた。
絶望の淵の中でも明日を望み、人間を信じて希望を捨てなかった。
ハナは裏切った人間を恨むこともなく、また人間の幸福のため生きようとしている。
人を信じることしか知らず、人の為に人とともに生きる。
悲しいほど慈愛に満ちたワンコだ。
ハナの第二の犬人生に幸多からんことを祈り、ハナの門出を心より祝福したい。
バイバイ、ハナちゃん。元気でね。
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余話2をご覧いただき、ありがとうございました。
ハナに応援のコメント、ご支援いただきました皆様に篤く感謝申し上げます。