父親は広告代理店の部長でした。
子どもの頃、父が業務用のテープレコーダーを家に持ち込み
ギター片手に歌っていました。
その歌は数カ月後、家具屋のラジオCMとしてラジオで流れました。
また小学校2~3年生の頃、
父に連れられて山間部の温泉旅館に行きました。
父に風呂場に行くように言われ、
弟と一緒にお風呂に入りました。
すると洗い場にカメラと照明ライトが置かれました。
浴槽には知らないおじさんがカメラに向かって喋っています。
そんなことはお構いなく、
風呂で弟と泳いていたのを覚えています。
そのお風呂のシーンは、温泉宿を紹介するテレビ番組でした。
父は、テレビ、ラジオ、新聞などメディアを企画する広告マンでした。
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ぼくは高校を卒業すると地元の自動車メーカー系列の会社に就職しました。
6年間務めたあと、海外で滞在することになりました。
2年ほど経ち、日本に戻ると親戚の広告会社に入社しました。
メインの業務は野立て看板の営業です。
田畑を所有する地主に交渉し、
土地を借りて看板を立てるのです。
仕事は単調でした。
アイデアや工夫は要りせん。
野立て看板はリピートで売上が上がるため、
社長は看板営業を望みました。
でも、看板の営業はやりがいを感じられません。
しだいに自分でやりたい仕事を始めました。
それは「企画」の仕事です。
企画にはやりがいを感じました。
一つ、過去の事例を挙げます。
地元には、当時全国一のスクリーン数を持つシネコンがありました。
週末になると周辺地域から多くの来場者で混雑します。
映画館は上映前にCM枠があり、
広告代理店は枠をスポンサーに売ることができます。
ぼくは、CM枠をある輸入車ディーラーに提案します。
ただCM枠を提案するだけでは面白くありません。
一つ工夫をしたのです。
シネコンのロビーには広いスペースがあります。
また、建物内の壁はまっさらです。
空いたスペースを広告にして活用し付加価値にしよう。
そこで建物の管理会社と交渉し、賃借契約を結びました。
ぼくはディーラーに対してこのような提案をしました。
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全国一のスクリーン数のシネコンに広告を出しませんか?
来館者数は年間〇〇万人です。
客層は輸入車の購入者層とマッチします。
映画で15秒CMを全スクリーンで流せます。
金額は月間〇〇万円です。
そして、ここからは御社のみに提案する内容です。
ロビーに新車を展示しましょう。
また、建物壁面を車の広告スペースとして利用できます。
さらに、お客さまが乗るエスカレーターから見える位置に、
広告幕を掲げることもできます。
来場者は、何度も御社の車を目にすることになります。
来場者の動線はこうなります。
①映画スクリーンでCMを見る
②エスカレーターに乗っている間、クルマの幕を見る
③エスカレーターを降りたロビーで実車を見る
④壁面を車のポスターでラッピング
⑤実車横にパンフレットを設置
⑥ディーラーまでの案内地図パネルを設置
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来場者は輸入車を何度も目に触れることになります。
この動線によってディーラーへの来場者は増えました、
また、他のディーラーが施設管理者の元に
うちのクルマも展示したいと要望が入ったそうです。
企画がうまくいった例です。
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企画の仕事は面白い。
何気ない情景の出来事を目を凝らしてみます。
想像を巡らせます。
もし〇〇と〇〇を組み合わせたら・・。
工夫を重ねます。
企画を立案し、相手先に提案し、承諾を得たら実行です。
企画は思い通りに行くこともあれば、
想定と違うことも起こります。
想定が違う場合は、どこが違ったのか検証します。
理由を見つけて納得すれば、失敗を次に活かします。
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振り返ると、ぼくは父と同じ企画の仕事をしていました。
もしかして、父も企画を楽しみながら作っていたのかな?
(そのようなことを時折考えます)
ぼくのやっていることは父のレベルには全く及ばないけど
少しでも近づけたらいいなぁ、と思います。
まだまだですわ。
父とは接触する時間は少なかったけど、
ぼくの心の中では、誇らしい人であり続けます。
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今回何度も出てきた「企画」について。
企画の狙いとは、現状の不満や課題を解決すること。
何かに不満や不便があるからこそ、
解決するために「企画しよう」という意思が芽生えます。
ものごとがより良い方向に進むためにこれからも考えます。
