先日、シンガポールのチャンギ空港で8時間半ものトランジット時間があっため、ターミナル1のイミグレを通過して、空港直結の最新モールJewel(ジュエル)に行ってみた。
モールにも買い物にも全く興味はなかったけれど、免税店が立ち並ぶ空港で時間を潰すのもつまらいし、実は未だにシンガポールのイミグレを通過したとがなかったので、とりあえず空港から一歩でもいいから外に出たかったから。
イミグレから少し歩くと、すぐにJewelというサインが見えてきた。

ドーナツ状の建物の外周から中央へと向かう通路を、動線にそってまっすぐ進んでいくと、目の前に突然開かれた空間が現れて、、、私は一瞬、本当に息を飲んでその光景の前に立ちすくんだ。
ドーム状のガラス天井から自然光が降り注がれるその空間は、無数の熱帯樹木が生い茂るまさにフォレストのようで、建物の外壁は木々に覆い隠されていて、ところどころ姿を見せるエントランスは、まるでジャングルの中の洞窟のようでもあり、忘れ去られた古代遺跡のようでもあり。
「なんていう素敵な空間なんだろう!!」と心から思った。
その円状の空間の中央には、地下へと続く円筒のアクリルガラスがあり、まるでジャングルの中に現れた滝のように水が地下へと流れ落ちていた。
空港から見えた外観は、鉄鋼フレームとガラスパネルの近未来的建物だっただけに、まったく予想に反したそのドーム内空間に、私は驚きとともに心を奪われた。

大学で建築を専攻しながら、あまり建築空間に興味を持てなかった私が、いったいどんな人がこの空間を設計したのだろうかと珍しく興味を持ったほどだ。
ちなみに設計は、イスラエルの建築家モシェ・サフディ氏。シンガポールの「マリーナベイサンズ」のデザインを手がけた彼が、「魔法の庭園」をテーマに設計したとのこと。
(施工は大林シンガポール)
それにしても、空間というのは、実際にその中に身をおいてみないと分からない、という当たり前のことを今更ながら実感した。
外観から内観は想像できないし、写真で見るだけでは、そのスケールや空気感を感じることはできない。
そしてもうひとつ、事前インプットがあることによって、時に驚きや感動は半減されてしまうのだということも、改めて体感することができた。
私は今回、このJewelのことを全く知らずにあの空間にたどり着けたことを、本当にラッキーだったと思う。
人や場所、音楽、映画、本、、、
今の生活の中で、これから先どれだけの新しいものに出会って感動していけるのだろうか。
予想もしていなかった驚きに出会えることは、本当に愉しく幸せなことだと思う。
子供たちが少しずつ手を離れていく中で、やはりもっと新しい世界に踏み出してみたいという願望と欲求が強くなる。
若い頃のように、直感や本能の波にダイブして流れていくことは難しいかもしれないけど。
「あ~、誰か新しい世界に連れ出してくれないかなぁ」
なんて思っている他力本願な自分もいるけど(笑)

