ルーツ | 壁の花

壁の花

50歳、地味なパート主婦。

日帰りで、実家を訪れた。
実家は、JRの駅から車で30分ほどの山間部にある。
今は、母が一人で暮らしており、
1~2か月に一度、「野菜を取りに来い」などとお呼びがかかる。

3百年ほど前から続く家だが、
15代目?として生まれたのは、女子一人だけ。(=自分)
幼いころから、祖父母らに
「この家を継ぐのは咲耶」と言われて育ったけれども、
結婚して家を出てしまった。
とはいえ、父の死後
不動産は自分の名義になっており、継いだことには違いない。
あと十数年もしたら、ここに住むことになるだろう。

母が、昼食の支度にとりかかるのに合わせ
「ちょっと、お墓行ってくる」と言って、ひとりで出かけた。
先祖代々の墓は、裏の山中にある。
家の隣の畑に、枯れかけの菊がわずかに咲いていたのを折り取って向かった。

林の中に入ると、空気が冷たくなる。
数分ほどで墓に着いた。
母が定期的に掃除をしているらしく
以前に備えた花が、くたびれつつも、まだ咲いていた。
祖父母・父が眠る墓と、その隣の
太平洋戦争の際に、長江のほとりで戦死したという大叔父の大きな石塔に
花を供えた。

急に泣きたくなり、墓の前で私は泣き出した。
なんで泣いているのか、自分でもわからない。

家に戻り、母と昼食をとっていると、
途中で、母が「鼻の頭が赤い」と言いだした。
かゆくないから大丈夫、と答えたが
「よく効く薬がある」といって出し、やたらと勧めてくる。
しかたなく、私は鼻に塗るふりをした。