「騎士団長殺し」を読んであれだけ好きだった村上春樹が嫌いになったかもしれない。それは僕にとってすごく寂しいことだ。

 

 もしかしたら来年あたりに続きが出るかもしれないから決定的な感想は言えないけども、今回の作品はひどすぎた。過去の小説のストラクチャーの薄い寄せ集めでしかなく、また僕の予想したとおりだが長編小説準備中に東日本大震災が起きてしまいそれを上手く消化できずに物語を書き進めざる得ない状況に陥っていた。どうしても彼のような腰の重い作家にはああいった出来事に対するフットワークの軽い対応は難しい。まあ、それが良さのはずだったんだけど。

 

 中途半端に描かれた幻想的な非存在の世界や登場人物の造型と言い、あれだけチャンドラーの小説をたくさん翻訳して練習したはずなのに今回はそれが生かされていない。

 

 村上春樹も老いたし、安住したのだろう。今後もこうした過去の作品の薄い焼き増しを繰り返す作家になってしまうかもしれない。

 

 僕は彼の作品が好きだ。

 

 3部、4部が出てくれることを切に望んでいる。

 

 そうすれば今回の薄さは単純に物語の核心に迫っていないプレローグとして納得できるからだ。