「とにかく、とにかく、いらっしゃあぁぁい!」

 

 彼は腰を前後にカクカクと動かしながら陽気に接客する。

 ウサギのお面に二本のつの。彼が有名なトニー・角さんだ。

 

 「とにかく、とにかく、いらっしゃあぁあぁい!またのお越しを腰降りながら待っていまああぁしゅ!」

 

彼は日夜、腰を振り続ける。穴があったらそこに入る。もちろん、彼は羞恥心など持ち合わせていない。文字通り、穴があったらそこに腰を打ちつける。男女も、無機物有機物も、老若男女も関係ない。

 

「腰振る、腰振る、星降る夜に!イエェェェーイ!」

 

と叫べば、しし座流星群がやってくる。

 

 彼はスーパースターと言っても過言ではない。だから、職業意識も明確だ。就業中は空気に腰を振るり、何かに向けては腰を打ち付けない。異常なまでの職業倫理と道徳を持ち合わせているのだ。

 

そんな彼が逮捕された。

 

罪状は傷害罪だ。

 

「あんなに凄いグルービングは初めてだったわ。凄かった。もうあれなしでは生きていけない」

 

被害者はそう語る。

 

トニー・角はとにかくモテる。そして、とにかく絶倫だ。男も女も年齢も関係なく穴があったら分け隔てなく腰を振る博愛主義者だ。それが彼の生きざまなのだろう。彼は腰を振りすぎたのだ。とても、早く、重く、深く、グルービングに。彼の異常なまでの職業倫理と道徳は被害者の17歳の女性の膣を大きく損傷させ、彼の精液と彼女の愛液と血液でぐちゃぐちゃにしてしまった。彼は手加減をしらない。手加減はトニー・角に相応しくない。

 

そんじゃそこらのスターなら誰かに後処理を任せたり、隠蔽したり、札束を使っていただろう。けれど、それではトニー・角は自分自身を見失い、見損ない、異常なまでの職業倫理と道徳が崩壊してしまっただろう。

 

腰を振ることは悪くない。

 

とにかく、とにかく、腰振る、腰振る。

 

彼は警察に自分から電話した。

 

「とにかく、とにかく、ここ来る、ここ来る」

 

最初は警察もいたずら電話かと思ったが、「あっ。あれはトニー・角だ。万引きしようものなら腰を振り、またのお越しを腰振る、腰振るとかいう奴だ」とすぐに認識した。

 

「どちらにいらっしゃいますか?」

 

と警察が質問すると、

 

「とにかく、とにかく、外見る、外見る」

 

と彼が告げる。

 

警察は絶句した。サーチライトに照らし出された彼の影が「とにく、とにかく、ここ来る、ここ来る」と遺憾なく言っている。

 

「あそこだ」

 

と警察が自分が野次馬なのかそうかすら分からなくなりながら、現場に駆け付けると、生臭い精液と血液まみれの彼が手招いていた。後日談だが、経血も混じっていたらしい。

彼は腰を振りながら警察に近づきお縄を頂戴した。もう一言も発しなかった。

 

翌日には百万枚の嘆願書が集まり、警察署を取り囲んだ観衆の涙で水たまりが出来たという。

 

罪状は傷害罪であったが、血液のほとんどが経血で、被害者もオーガズムの度が過ぎたので気を失っただけであり、彼の罪は軽くなるはずだった。では、何故、彼は出頭したのか。

 

そう。腰の振り過ぎでカバンから出た身分証を見て、淫行がバレたと勘違いしたらしい。

 

一応、条例違反で逮捕された彼だが、今日も元気に腰を振っている。

 

被害者の女性はあれから偏差値30代から国立大学に合格したらしい。