number 490小生のエッセイの宣伝 5 | 堀切光男のエッセイ畑

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主にエッセイ。

 

あの話のその後 あさってのジョーその4

 

雨上がりの虹

晴れるのか雨が続くのか「明日は、どっちだー」

 

 

 

伊勢駒部屋での貴志の朝は 早かった。

五時には叩き起こされ近所の土手の上をたっぷり一時間のマラソン。

帰って来ると下っ端同士でぶつかり稽古。

やがて 金華山や 駒田中が顔を出し、親方も現れる。

ちゃんこ当番が朝飯の支度に取りかかる頃、やっと荒駒が起きて来る。

大あくびで眠い目をこすりながら、新聞などを読み始めるが 親方のジロリの

睨みに気が付いて、しぶしぶ体をほぐしに かかる。

隣に立つ貴志に気が付いて

「おお、新入り。矢吹丈の息子なんだってなあ」

「はい、西 貴志といいます」

「子供の頃、俺はジョーのファンだったんだよ。カッコ良かったよな。

力石のファンだったのも沢山いるだろうし、今回の二世同士の対決は

みんな注目していると思うよ。まあ、がんばんな」

 

やがて、荒駒の胸を借りたぶつかり稽古が始まる・・・・と思ったら、

ものの十分で駒田中にバトンタッチで、荒駒はさっさと朝風呂に行ってしまった。

幕内力士になっても、相変わらずなのであった。

お昼近くになり、やっと朝稽古が終わり朝飯になるのだが、早朝五時から

何も食べないで激しい稽古。

朝飯も先輩達の後にやっとありつけるが、もう飢餓に近い状態の所に

五人前ぐらいも、かき込むので 直ぐに太るだろうと思われた・・・・。

 

実際,貴志も二か月で十キロも太り、これなら目標の二十キロは軽いなと思った途端、

ピタッと増量は止まってしまった。

その後はいくら食っても体重は増えない。

そんなに甘くは無かったのだ。

 

 

貴志はフライ級で元の体重は五十キロ。

それを達也の七十キロに合わせようと二十キロの増量に挑戦しています。

三か月経った現在は六十一キロ。少しづつながら、体重は増えています。

 

 

貴志は 只今、毎日 毎日 増量に励んでいます。

 

 

貴志は今日も 頑張っています。

 

毎日 毎日 増量に励んでいるだけでは無く、プロテストも受けなくては成らない。

ある日貴志は教えを乞うべくヨネクラ ジムにガッツ石松を訪ねていた。

ライト級世界チャンピオンのガッツ石松はとても気さくな男で直ぐに貴志に会ってくれた。

「おお、矢吹丈の息子なんだってなあ。何、プロテスト?そんなもの基本を身に着けてれば

大丈夫。何、 増量したい?

それならバナナを沢山食べればいいんだよ。 ただ一度に食うのは二十本までにしておけ。

二十一本目は急にまずくなるから。  O K牧場?」

 

そそくさとヨネクラジムを出た貴志は直ぐに協栄ジムに行き W B A世界チャンピオンの

具志堅用高に同じ質問をしていた。

「ちょっちゅねー、僕を含め沖縄の石垣島には太った男は一人もいないからねー。

わっからないねー」

 

貴志が次に向かったのは明訓高校の野球部だった。

丁度、午後の練習を終え グランドの整備をしていたところだった。

「重いー コンダラー試練の みちをー」と歌う声が聞こえて来た。

声の主を探すと コンダラ(?)を引く山田太郎が目に入った。

貴志が声をかける

「おーい、ドカベン。ちょっと相談があるんだけど」

ドカベンこと、山田太郎は困った顔をして

「僕が 太っているのは生まれつきだしい、僕としては痩せたい位だしい」

すると岩鬼が口にくわえた葉っぱをゆらしながら、割り込んできた。

「矢吹(旧姓)はん、大阪名物お好み焼き五枚と大盛ご飯を毎日食べなはれ。

太りまっせえ」

「えっ、炭水化物に炭水化物のご飯を食べるの?」

「何言っとるの、東京かて ラーメンライス 平気で食べよるやないけ」

「あれは、ぴったり合っているから」

「お好み焼きかて、合ってるわいっ」

「いや、いや ちょっと違うでしょ」

「違わん わいっ」

 

(あれっ、何の話だったっけ)

つづく