「風雲急を告げる」
台風が近づいている空
段平は 白木ジムに出向いていた。
もちろん、白木葉子に逢うためだ。
葉子は養子にしていた達也に全てを打ち明けた時から
こうして段平が訊ねて来る事を予期していたようすで、静かに段平を
迎えると落ち着いた口調で話し出した
(ここからは 渡る世間は鬼ばかり も真っ青の長セリフで一気に話を進めます)
「3歳の貴志を養子に出したあと、私はいやいやながらも結婚しました。
そして貴志の事を忘れる為にも白木家の再建に没頭しました。
辛くなかったと云えば嘘になります。
何度貴志を連れ戻しに行こうとしたことか・・・・。
一年程たったある日、とうとう我慢できずに貴志のいる 林屋 の前で隠れて
貴志の様子をじっと見ていた事もあったわ。
そしてあの子がホーキを持って店の前の掃除を始めたのを見た時
私はハッと気付かされたの。
4っつになったばかりなのに あの子は全て知っていた上に、自分の運命を
受け入れた目をしていた。
みなしごだった父の矢吹丈と同じ 深い哀しみをたたえ乍らも、誰にも負けない
強い意志を持った目をしていたわ。
そう、まるで「子連れ狼」の大五郎のような・・・・・。
(言葉を知らない未熟な作者、安易な表現法に逃げました)
この子は間違いなく丈の血を受け継いでいる。
私がいなくてももう大丈夫、一人で明日に向かって着実に歩いている。
西夫婦も誠実な人たちで子煩悩ながらも、他人の子を育てる責任を良く理解している。
甘やかしたりはしないだろう、心配する事は何も無いのだ、結局私だけが強くなればいいのだ
そう思い直した私は、貴志に負けては居られない
、自分の成さねばならない事をやり抜こう・・・・改めてそう 思い立ったの。
それから数年、ようやく白木家の再建のメドがついた頃、以前 父親と良く訪ねた
孤児院に10数年ぶりに行った時、力石にそっくりな達也を見つけたの。
そして、貴志と同じように父親の死後に生まれて来た事。
(力石はジョーより、2年程前に死んでいる)
母子家庭だった達也は5歳の時に母親も亡くし、孤児院に引き取られた事などを
知った私は達也を養子にする事を決めたのよ。
力石と丈の死闘に少なからず関った私に出来るせめてもの償いの気持ちもあったわ。
達也を養子にする事では夫の離婚につながってしまったけど・・・
夫との間には子供は出来なかったので
「俺では子供が出来ないんで、養子を取るんだな」
とひがんだ夫との離婚話が決まったの。
もっとも、夫には愛情のかけらも無かったから私にとっては渡りに船の話だったのよ。
そして、達也も白木ジムに来て 父親の血を全て受け継いでいるのが改めて良く解ったわ。
天才的なボクサーになる、私はそう確信した時、 将来 貴志との親子二代に渡る戦いを
予感したの。 あの命をかけた戦いが又繰り返される。
私はそれを止めるべきか? いえ、それは不可能でしょう。
達也も貴志も全てを知る時がすぐに来る、そう思った私は達也に全てを打ち明けたわ。
そして達也はすぐに貴志に逢いに行った・・・それは多分、宣戦布告という事でしょう。
(ここまで、読んで下さった方は辛抱強い方ですね。後半その三はもう少し頑張ります)
つづく
