ナンバー43 ラーメン屋春ちゃん「アジフライには何かける?」 | 堀切光男のエッセイ畑

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(アジフライには何かける?)


「ねえ、 マスター 聞いてよ」

どこかで聞いた事のあるセリフを、なじみの若い客が 私に言った。

彼は 新婚三か月目。

結婚してからは、とんとご無沙汰していたのだが、

久しぶりに顔を見せたと思ったら 何やら深刻な話らしい。

「どうしたい? 新婚早々、夫婦喧嘩でもやらかしたかい?」

と茶化すと

「実は そうなんですよ。 もう二日も 口聞いてないんですよう」

「おや おや、そりゃあ深刻だねえ。 で、喧嘩の原因は?」

「それが・・・・、アジフライなんですよう」

「へっ、  アジフライ?」

つづく

「としちゃん・・・・妻がね、アジフライを揚げてたんですよ」

「ほう、ほう」

「美味しそうに出来たので、さっそく頂こうとソースをかけたら

笑うんですよ。 としちゃん・・・妻が信じられないって。

アジのフライはソースじゃなくって醤油でしょう?

実家ではみんな醤油だったって言うんですよ」

「ふーん」  

「じゃあ、イカやエビはどうなんだ? ソースかけるだろう?

ってムキになって言い返したら

(エビもイカも タルタルソースよっ)って、さも自分の育ちが

いいような言い方するんで、アタマにきて大喧嘩になっちゃった。

マスターはアジフライにソースと醤油どっちだと思う?」

「ええっと、いやあー、うちのお客さんを見ていると丁度半々かな?

好みと育ちでそうなるみたいよ。

どっちでもいいんじゃない? 本人が美味しければ」

と 仲直りするように言い聞かせて帰したんだが、

俺はアジフライには絶対、醤油派だなあ。

(了)