ホタルの恐怖 BE-PAL2000年5月号に掲載
「2泊3日のキャンプに出かけた山いこ会の4人組。ベテランキャンパー、ラーメン屋K さんの
指揮の下、テントを張ったり、夜はビール片手に牛肉の炭火焼きに舌鼓を打ったり。
酔いもほどよく回り、テントの中で始まったこわーい話とは・・・・・・・・?」
( 送りつけた長い原稿。ビーパル編集者さん、最初の方をうまくはしょってくれました。)
(本文)
「このメッシュテントってのは、蚊帳に似てるな。よくホタルを捕まえては中に放したっけ」
「あっ、俺もやった、やった」
「ホタルか、もう何年見ていないかなあ。確か5、 6年前一度見たような見ないような事があったな。
その夜は、店閉めてから家族でキャンピングカーで出かけたんだけど、以前めぼしをつけておいた
キャンプ地がどうしても見つからなくて、あきらめて適当な処はないかと車を走らせると、
ちょうどいい空き地があったんだ。もう零時も回っているし、そこで泊まることにした。
家族はとっくに寝ていて、ワシだけ運転席で寝酒に焼酎を飲んでいたら、横の窓をボーと
小さな明かりが横切ったんだ。(あれっ、ホタルだ)と思ってそちらを見たんだが、いくら待っても
光らない。木立の中にでも入ったかと、ふと前に向き直ると闇夜の中に男の顔がボーと浮かんで
こちらを覗き込んでた」
「おいおい、怪談噺かよ」 「まるで修学旅行の夜だな、こりゃあ」「そっ、それでどうしたんですか」
「そりゃあおどろいたよ。グラスは落とすし、髪の毛が逆立つのがわかるほど怖かった。
それでも震えながらもよく見ると、なーんだ、ルームランプの明かりで自分の顔がフロントガラスに
映っとったんや」
「なあんだ、そんな事だと思ったよ」
「しかしなんだかその後もへんな胸騒ぎがして、なかなか寝付かれないんだ。
なんかこうシーンと静かなんだが騒がしい気がする。車のカーテンを閉め切って、結局一睡も
出来ない内に朝になって、カーテンの隙間から外を覗いてワシはゾ~としたね。
車を停めてたすぐ上は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(長い沈黙) 墓地だったんや」
「やだなあ、K さん寒気がしてきたよ」
「はははは、明朝は6 時起床で予定がびっしりだから、皆ぐっすり寝てくれよ」
しかし、僕はその晩、 K さんの話を思い出してなかなか寝付かれなかった。( 了)
追加の写真
当時乗っていたロデオ4wdキャンピングカー
再び了