「ゲドを読む。TALES FROM EARTHSEA」 糸井重里(プロデュース)
読書というカテゴリーで分類したが、ちょっと違うかも知れない。
何故ならこれはフリーペーパーであり、街角で配られている物だからだ。
といってもペラではなく204頁もあって、ちょっとした文庫本に近く、読み応えがある。
中身は「『ゲド戦記』の愉しみ方」「『ゲド戦記』のなかの心に染みることば」「いくつかの重要な『ゲド戦記』論」の三つに別れる。うち、「愉しみ方」と「こころに染みる言葉」は新規に、「いくつかの重要な~」は様々な媒体で発表されたものの再録となっている。
基本は映画「ゲド戦記」のDVD販促グッズであろう。
それに伴い、各「ゲドグッズ」の広告が入る。多分これらの版元などが広告費を出しているはずだ。錬金術ではないのだから。ただより高いものはないともいうことか。
とはいえ、なかなか面白い。
ゲド戦記をあまり知らない私のような人間にとって、「愉しみ方」はほどよいガイドになった。
残りの二つは、資料として見ると興 味深い物がある。
ただ、問題はこれを読んで映画「ゲド戦記」を買いたくなるのだろうか。
販促グッズとして正しく機能しているかどうかは、ちょっとわからない。
「完本 黒衣伝説」 朝松健
- 朝松健氏の著作の中で、異彩を放つ一冊だろう。
- 簡単に言えば「メタフィクション・ホラー」というジャンルだ。
- 登場人物は著者である朝松氏と周囲の人々がメイン。そこに様々な事件が絡み合っていく、という仕掛け。
- ところが、この「メタフィクション」である部分を忘れさせる仕掛けが随所に設置してあるのが、この「黒衣伝説」の眼目であろう。なんの予備知識もなく手に取った人はこれを完全なる実話だと勘違いするのではないだろうか。
- もちろん、所々に朝松氏の体験した実話がちりばめられている(氏の他の作品や原作コミック、他書籍にて実話として語られているのを確認できる)。
- だが、それは「フィクション」を成立させるための布石に過ぎない。
- これはよくある手法だが、ことこの「黒衣伝説」では効果的に扱われている。そこに朝松氏らしさが溢れているのが面白い。
肝心の内容は、なかなか怖い。
登場人物たちと一緒に追い詰められていく気分が味わえること間違いなし。
大陸書房版から加筆された完本ならではの仕掛けも用意してある。
じっくりと夜中に読んで欲しい一冊かもしれない。
- 完本 黒衣伝説/朝松 健
- ¥2,100
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「イギリスは愉快だ」 林望
林望氏のイギリスエッセイもの。
氏の書くエッセイに出てくるイギリスは、愉快だ。もちろん登場するイギリス人はシニカルでジョンブル魂溢れており、期待を裏切らない。
彼らが、異邦人・希人である林氏に対し、どこまでも紳士淑女であり続けるあたり、イギリスが素晴らしい国であることは疑いようもない事実だろう。
……というのはイギリスの一部だ。
残念ながら、林氏のイギリスエッセイには、彼の地の一面を描いたに過ぎない。
それは氏の行動範囲によるものなのかもしれないし、単に書きたい部分を恣意的に選んだだけなのかもしれない。
とはいえ、なかなか面白いエピソードが多く、さらさらっと読める一冊。
イギリスに憧れる貴方にお奨め。か?
- イギリスは愉快だ (文春文庫)/林 望
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