「小田原かまぼこ」商標めぐり訴訟
(tvkニュース 2016.05.28)
小田原で、かまぼこ作りをしたことがある私だけに、気になるニュース。
あのドーム型は、へらでならして成型するのですが、実はあれが結構、難しいのです。
さて、「小田原蒲鉾」(登録第5437574号)や「小田原かまぼこ」(登録第5437575号)は、地域団体商標として、商標登録されています。
通常、地域の名称と、商品の普通名称を組み合わせたような商標は、商標登録することができません。商品の産地等を表示するものとして、識別力(自他商品を識別する標識としての力)を有しないことが多いからです(商標法第3条1項3号)。
ただし、このような商標でも、継続的使用により全国的に著名となって、識別力を獲得した場合には、商標登録されます(同法同条2項)。しかし、その要件は、非常にハードルが高いものでした。
そこで、地域経済の活性化や、地域ブランドの保護を目的として、前記要件よりハードルの低い、一定の周知性(隣接都道府県に及ぶ程度の周知性)を獲得したような商標について、地域の事業協同組合等が出願した場合には登録を認めよう、というのが、地域団体商標制度です(同法第7条の2)。
前記、地域団体商標、「小田原蒲鉾」や「小田原かまぼこ」の指定商品は、当然ながら「小田原産のかまぼこ」です。「小田原」の文字を有する商標である以上、「小田原産」以外のかまぼこに使用すると、品質の誤認が生じるおそれがあるためです(同法第4条1項16号)。
組合に加盟していない業者が、なぜ組合に入らなかったのか(入れなかったのか)などの詳細は不明です。ただ、「小田原産のかまぼこ」における「小田原」を「小田原市」と定義するならば、「南足柄市」にある、組合に加盟していない業者が、「小田原蒲鉾」や「小田原かまぼこ」の商標を使用することに、小田原蒲鉾協同組合側が反対するのも、分かるような気がします。実際、小田原蒲鉾協同組合の組合員13社は、いずれも「小田原市」に所在しています(http://www.kamaboko.or.jp/maker.html)。
では、組合に加盟していない業者側の「地域商標に登録される前から使用していた」という主張はどうでしょうか。
地域団体商標に係る商標と同一または類似の商標については、当該商標を、その地域団体商標の出願前から、日本国内において不正競争の目的でなく使用していた場合には、先使用権が認められます(同法第32条の2第1項)。これは、通常の商標についての先使用権(同法第32条)と異なり、周知性は要件とされていません。
地域団体商標として登録される「地域の名称+商品名」という構成の商標は、本来、何人も使用しうる商標であり、同一地域において同様の商品を生産・販売する者であれば、その商品について、地域団体商標の出願前から同一又は類似の商標を使用していることが想定されるからです。
また、仮に、周知性を獲得していないと先使用権を認めないこととした場合、団体に属さない事業者が、現に当該商標を使用して業務を行っている場合に、当該商標を使用して事業活動を行うことができなくなり、地域団体商標の権利者と第三者の利益の衡平を失すると考えられているためです。
したがって、組合に加盟していない業者側としては、小田原蒲鉾協同組合側の地域団体商標の出願前から、日本国内で不正競争の目的でなく使用していたことを立証する動きになりそうです。
なお、先使用権が認められた場合でも、地域団体商標権者としては、先使用権を認められた者に対し、混同防止表示請求ができます(同法同条第2項)。
いち、小田原かまぼこファンとして、今後の裁判の行方に注目したいと思います。
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