身をもってタンブリンダウン | 独り言哀歌

独り言哀歌

ソロシンガー アパッチの戯言日記

4人が揃ったタンブリンダウンはそれまで触っていたアイデアの断片をまとめ、曲として次々に完成させていきました。

「そろそろライブ決めるか!」

「どこでやるん?大阪?京都?」

「せやなぁ…何件か話しに行くわ。」

ブッキングの件は大阪や京都のライブハウス事情に長けていたKさんとCズルに
託し、私は作曲に専念しました。
経験も少なく一番年下の私が存在を示す手段は、いい曲を作ることと音楽的な部分で主導権を得ることだと思い必死で取り組み結果、作曲は私に一任されアレンジの段階でも私の意見がより多く採用されるようになりました。
そしてデビューライブは寝屋川ビンテージに決定。
Kさんが店長やスタッフと親しかったこともあり決まったのだと思います。

ビンテージでのデビューライブは動員もそこそこあり大盛況で終えました。
みんなそれぞれに確かな手応えを掴んだようでした。

「こらぁイケるで、もっとガンガンいこう!!」

みんな調子に乗ってきて次々にライブをブッキングしてはこなし、デモテープを制作したりと活動は順調なように見えました。そして私自身とても楽しかったし忙しくても充実してました。

そんな中KさんとCズルが京都で知り合いのソウルユニットに参加するようになり、私とAちゃんも「勉強や刺激になるええ場を見つけよったな、俺らも頑張ろや!」ぐらいに思ってました。
ところが彼らはそっちでの活動が面白くなってきたようで、タンブリンダウンの方が少し疎かになっていきました。
スタジオに入る数も連絡も少なくなってたのですが、ライブの予定も入っていたので私もAちゃんもそれほど気にはしてなかった。
しかしあるとき急に連絡がなくなりました。決まってた寝屋川ビンテージでのオールナイトイベントが目前に迫り私もAちゃんも焦って連絡を取ろうにも一向に繋がらない。
おかしい、あまりにもおかしい…

「Aちゃん、アイツらまさか…」

「もっぺん連絡してみよ」

Cズルの家に電話したらやっと繋がり、

「おぇCズルっ!」

「あ、いま出掛けていません…」

「あれ…アナタどちらさんですか?」

「いま留守番してます」

恐らく居留守を使われたのでしょう。
一応帰ったら連絡くれるように伝言を頼みましたが、全く連絡がないままオールナイトの前日を迎えました。
そこへKさんから電話が…

「Kさんっ、一体何がどないなってんねんな!俺もAちゃんもさっぱりわからんわっ!!」

「ごめん、今は詳しく話されへんねん…とにかく明日のイベントはキャンセルさせてくれ…」

「話されへんて…今どこにおるんな!?」

「京都や。いずれそっちへちゃんと話しに行くから…」

悔しいやら情けないやらでそれ以上言葉が出ませんでした。
そしてオールナイトイベントにはこの世界で一番のタブーとされる"穴"をあけてしまったのです。

数日後ビンテージからAちゃんの家に電話が入ったらしく、慌てて私に連絡してきました。

「えらいこっちゃ、アイツらキャンセルしたっきりで放ったらかしや…ビンテージのマネージャーかんかんに怒って電話してきたで!」

「そうか…Aちゃん、明日謝りに行こ」

私とAちゃんは翌日お店の営業が終わったビンテージを訪れました。
先に会ったのは店長でした。

「おぉ!まぁ入れ入れ!しかし…お前ら、一体何があったんや?KさんとCズルは行方不明なんか!?」

「実は俺らもさっぱりわかりません…今も京都にいてるはずですわ。向こうでユニットかバンドかやってんのは知ってたけど、まさかこんな逃げるような事されるとは…」

私とAちゃんはわかる範囲での事情を話しキャンセル料を支払いお店に謝罪しました。
マネージャーも最初こそ怒ってましたが、次第に我々に同情したのか

「またいつでも遊びにおいで。相談あったら店長とこ来たらええわ。」

と言って送り出してくれました。

「Aちゃん、この先どないする?良かったら一緒にメンバー探してやれへんか?」

「そうやな…」

「こんなとこで終わられへんやろ!」

私は息巻いてたのに対してAちゃんはそのとき私生活でもトラブルを抱えていてすっかり意気消沈してしまい、私はまた1人に戻ってしまいました。

その後も私はメンバーを探したり、セッションしたりしましたがどれもこれもバンド結成の話までには至らず半年ほどが過ぎ、人に対する不信感を拭えないようにもなり徐々に熱意も薄れていったのです。
今のように30代40代になってもバンドをやり続けるような事が考え難かった時代、気がつけば私は友人が勤める美容院の鏡の前に座っていました。

「切ってくれ…」

「えぇ~っ!ホンマにええんか?いくで…ホンマにいくで!」

「かまへん、バサッといけっ!」

アパッチ21歳

挫折するには早すぎたかも知れませんが、まだ若く弱かった当時の私が転げ落ちるには充分な茶番劇でした。