新旧を問わず、コロナウイルスには薬がないのは既に記述した通りですが、薬のあるウイルス感染症でも、薬がどのように効くのかを知れば、きっと改めて予防の大切さが実感できると思いますので。
ウイルスは、感染可能な生物の体内に入ると、細胞の表面にある侵入しやすい場所に取り付きます。カギと鍵穴のように、ウイルスの形状と細胞の形状がちょうどピッタリ噛み合う場所があるようなイメージを持っていただければ、だいたいOKです。
この、ウイルスが取り付くことのできる部分をレセプターといいます。ずっと使っている喩えで言うと、PCの USBポートのようなものです。
PCへの接続に、USBポートやシリアルポート、LANポートなど、接続方法や目的によっていくつかポートがあるように、ウイルスの種類によってレセプターは違っていたり(場合によってはある程度共通していたりも)します。
防疫したい相手がUSBメモリの形態であると判っていれば、 予めUSBポートにダミープラグを嵌めておくことで、相手に接続されることを防げます。
上記のような原理で、細胞のレセプターに蓋をして細胞への感染を防止するのが、新型コロナウイルスの治療でも一部使われた抗HIV薬です。ということは、HIVと新型コロナウイルスは同じレセプターから細胞内に入るということになるのですが、確たることはよくわからないので、その辺はもうちょっと調べます。
ウイルスは、レセプターに取り付くと、取り付いた細胞の内部に遺伝情報の記録されたヒモを送り込みます。
ヒモの素材はウイルスによってDNA(すぐ思い付くのは天然痘ウイルス)とRNA(コロナウイルスはこちら)と2種類に分かれますが、どちらも五角形の糖が鎖状に繋がったもので、それぞれの糖の先に4種類ある塩基のうちの1つがついていて、その塩基の並び方がたんぱく質を作るためのデータとなっています(全く蛇足ですが、コロナウイルスの持っているデータ量は、およそ30KBほどとのことです)。
ウイルスによっては、自分の遺伝情報を侵入した細胞のDNAに組み込むという、ちょっとホラーなヤツ(HIVとか)もいるのですが、コロナウイルスの場合は、細胞の中のリボソームという器官を使って自身のRNAを直接転写し、たんぱく質の合成やRNAの複製を行います。
インフルエンザも増え方としてはコロナウイルスと同様で、抗インフルエンザ薬の一種であるゾフルーザは、この転写のプロセスを阻害し、ウイルスの増殖を抑えます。
ゾフルーザの話を出したのでついでに。
細胞の内部で増殖したウイルスは、いずれその細胞を出て、次の細胞へと広がろうとしますが、抗インフルエンザ薬のうち、タミフルやリレンザは、増殖したウイルスを感染した細胞の中に封じ込め、細胞レベルでの新たな感染を抑制する薬になります。
と、ここまで我慢強く読んでくださった方は既にお気付きかと思いますが、抗ウイルス薬って、新たに侵入させない、それ以上増やさない、増えちゃったものを隔離する、がその役割で、ウイルスそのものを壊すものではないのですよ。
じゃあ、ウイルスそのものと真っ向から闘って駆逐するのはなんなの?
それは、貴方自身の内なる力なのです。
みたいな、若干スピリチュアルな風味付けで、次回『激闘!白血球』へ続きます。
お楽しみに!