週末。
3人で買い物へ行ったり、アパートを見に行ったりした。
ドタが元ダンのとこを飛び出してコチラ側に来てから、ダーリンと私は休みの度に不動産屋巡りをしていた。
いつになるかは解らないがいずれ一緒に暮らすことになるドタの為に。
何せ今現在住んでいるアパートは、洗面所もなくお風呂には脱衣場もなかった。
高校生の娘と一緒に暮らすには何かと不便だった。
今すぐ同居しないにしても、だ。
それに。
全く反りの合わない母とドタが揉める度に呼び出されたのだが、距離が遠いので原付で行くことも叶わず、電車で行くにも、時間も、お金も、ある意味かなりの【無駄使い】となる。
それはもちろん父に迎えに来て貰うにしても、だ。
それで私の実家にも近く、ドタが高校に通うことになっても良いような場所に引っ越したいと思い探していたのだ。
これはドタと私の為だけではなくダーリンの為でもあった。
ダーリンはトラッカー。
最初に会社に入った頃は職場が近かったが、職場が移転して遠くなってしまった。
片道1時間半。
それも高速道路を使って、だ。
自宅での睡眠時間は2時間あったら良い方だった。
毎月のガソリン代、高速代、は少なくて5~6万円。
もちろん自腹。
高速代を少しでも浮かそうと1区間だけでも下道を走ったりしたが、そうするとその分睡眠時間がなくなる。
悪循環だった。
しかしダーリンの借金問題、私の借金問題、その他生活をするのに手一杯で、敷金やら引っ越し代を貯める余裕もなくどうすることも出来ないでいた。
そこへ今回のドタの件。
私達は私の両親に恐る恐る話をしてみた。
引っ越しをしたい、と。
それにはお金がいる、と。
良い顔はしなかったが、なんとかお金を出してもらえそうだった。
そうと決まれば急いでアパート探しだ。
時間もお金も節約する為に。
普段睡眠時間がほとんどないダーリンは、休みの日といえばずっと寝て過ごすことが多かった。
(最長27時間寝ていたことがある;)
そのダーリンが、私が心配するほど精力的に不動産屋巡りをしてくれた。
もちろん、引っ越せばダーリンも通勤etc.楽になるというのもあったが、何よりドタとの生活の為に動いてくれたのだ。
ただなかなか【これ】という物件に出合わなかった。
そんなある日。
ふと訪ねた不動産屋で、私達には全く選択肢になかった地域を勧められた。
初めは気乗りしなかったが、その地域に行ってみると治安もよさそうだし駅も歩いていける距離だった。
他も考えつつ、そこも候補にいれて更に色々探してみた。
そして結局。
その最後の候補地が気に入り、この日ドタを連れていったのだ。
ドタも気に入った様子だった。
間取りがやや微妙な気もしたが、他でも散々探した後だったし、1日も早く引っ越したかったのでそこに決めた。
日曜日にドタを実家へ送り届け、また新たな週が始まろうとしていた。
しかし…。
早朝から私の携帯がけたたましく鳴る。
もちろん母からだ。
また朝っぱらからドタと喧嘩になったらしい。
「もぉねっ。お母さんの手にはおえないわっ!!あんた、なんとかしてっ!!」
((またかよ…))
どうやら。
朝、時間がないのになかなか起きないは、支度は遅いは、というようなことだったらしく。
そりゃ母にしてみれば電車の時間に間に合うように行かなきゃいけないので気が気じゃない。
母は時間に余裕をもって行動する人であったが、何よりも短気だった。
「こっちに来てドタと話をしてよっ!!ほんとに、もうあの子はどうしようもないわっ!!」
《え…。》
「あんたの子でしょっ!!」
そんなことは言われなくても解っている。
ただ。
最初にドタと暮らすと言ったのは自分だろに。
こんなことがいったいいつまで続くやら。
とりあえず学校には行ったようなので、夕方、帰ってくる頃を見計らい電車で実家へ向かう。
実家へ着くと早速、一通り母からの口撃を受ける。
ドタのお陰で、今は関係のない、日頃母のお気に召さない私自身のことまで引っ張り出され、口撃される。
帰宅したドタは全く何事もなかったかのようにケロッとしていた。
《朝、またおばあちゃんと喧嘩したんだって?》
「あー。うん。」
《そのことで話をしようと思ってさ。》
「あー。うん。」
聞きたくないのか、何かよそ事をしながら生返事をする。
《ドタっ!!ママは、わざわざあんたと話をしに来てるんだよっ!!》
そう言うと非常に驚いた顔をする。
まるでとてつもなく恐ろしいものに出くわしたかのような、目を見開いた驚愕の顔(苦笑;)。
どうやら。
今まで、怒られたり説教されたりしている時に、ちゃんと向き合って話をしたことがなかったようだ。
後々の本人曰く。
話は聞いてるのだから、別に何やっててもいいだろ、という感覚だったらしい。
それが相手にとって非常に不愉快なものだ、ということも解らない・・・
TV等では、イマドキの子はそうらしいと言っていたが、まさか自分がそれに遭遇するとは。
それにしても、今までそんな適当な態度でも通っていたのか。
恐らく今までの人達は、ドタの為の【説教】ではなく、ある意味自分の【憂さ晴らし】的だったのだろう。
だから、ドタが聞いていようがいよまいがどうでも良かったのではないのだろか。
話の途中ドタは少し泣いていた。
泣いてはいたがその口から出る言葉は
【だってさっ!】
【でもさっ!】
そんな言い訳や屁理屈ばかりである。
確かに母は口うるさい。
コチラが辟易するほど。
だが今回は、母の言い分の方が正しかった。
((こりゃやっぱ私が一緒にいて、毎日懇々と話さなきゃ駄目だな。))
そう思いながら、とりあえず一通り話をしてその日は帰った。