再来夢…崩々 | 腹回り鏡餅に浮輪ネガポジ部屋

腹回り鏡餅に浮輪ネガポジ部屋

光と闇は表裏一体。
2017年末に 脳梗塞で倒れ 糖尿病も併発、軽い右側麻痺、言葉がたどたどしい。
LDH系、特に三代目JSB、特に登坂広臣(臣ちゃ)好き♡♡♡
斎藤工(工ちゃん)好き♡♡♡
《いいね》は生存確認、内容に関わらずしてます。
(記事に無関係、無神経な※ 無言削除)


そんなある日。
いつも通り病室に入った私は、とても違和感を感じた。

何かが違う…。

臭いだ。
病室の中は今までと違う臭いがした。

((まさかっ…!?))

ダーリンも義姉も、身内などで癌患者との接触があった。

「癌の人はね、普通の病気とは違う、独特の臭いがするんだよ。」

2人から何度かそんな話を聞いたことがあった。

((まさか母ちゃん…。いやっ、まさかね。))

ふと心によぎった不安を、強烈に打ち消すと

《母ちゃん♪おっはよーっ♪》

と、側へと歩み寄った。

ところが。

やがてその疑問は、悲しい現実となって私にのしかかってくることになる。

その日。

「ガーゼ換えますからねー。」

そう言って、数人の看護師が入ってきた。

((んっ!?ガーゼっ?))

そう思う間もなく、部屋を追い出されてしまった。

「はぃ、チョッと我慢して下さいねー。」

何やら忙しげに動き回る様子が伝わってくる。

ふと、部屋の中を見たとき、風でカーテンがめくれた。

((あーっ!!))

中の様子が気になり、部屋の外から様子をうかがっていた私の目に、とんでもない光景が飛び込んできた。

真っ赤な血…

思わず息をのんで立ち尽くす。

それは…義母の脇の部分から、鮮血が溢れている様子だった。

義母の体を我が物顔で暴れ回った癌細胞は、ついにその柔らかい皮膚を喰い破り、体外に飛び出した。
そのせいで出血していたのだ。

ショックなんて次元じゃなかった。


どぉして…

ほんとにっ?

なんでっ…


何がどうして、どうなっているのか理解出来なかった。

【義母】と【死】が頭の中でグルグル回り、追いかけっこをする。


嘘だっ…

嘘だよっ…

認めたくないっ…

認められる訳ないっ…


しかし現実は何より厳しく、辛いもんだった。

そして朝の違和感を思い出す。


母ちゃん…

もぉ駄目なのっ!?


私の中の【母ちゃんは絶対に死なない】という気持ちを、目の前で目撃してしまった赤い血が浸食してゆく。

今までの、根拠はないが揺るぎない自信の固まりだった私の気持ちは、砂漠の砂のように崩れてゆく。

もう…認めざるを得なかった。

義母の死をこれっぽっちも考えたことがなかった故に、そのショックは大きかった。

その後。
本人の前で平静を装うのが、本当に大変だった。

検査の為に義母のいなくなった病室で、つい、涙をこぼす。

たまたま病室を掃除に来た馴染みのオバチャンがそれに気付き

「辛いのはわかるけどっ!あんたがしっかりしなきゃっ!!」

と言う。

((解ってるっ!!))

曖昧に笑い、うなずいてその場をやり過ごす。

((そんなことはアンタに言われなくとも解ってるっ!!))

私が、どれほど義母の回復にこの気持ちを注いでいたか。

治ると信じて疑わなかった。

それなのに、あの鮮血を見てしまった時のショックといったら。

それでも。

それでも義母の前では、何があっても取り乱しちゃいけない。

絶対に悟られてはいけない。

そう思って必死に耐えていたのだ。

だからこそ、義母のいない病室ではこらえきれず、いないその時だからこそ、自分の感情を解放させた。

それを、表面だけで判断し、解ったようなことを偉そうに言われる筋合いはなかった。

それは親切心でもなんでもない。

無神経だっ。

その日は、ボロボロに崩れてしまいそうな気持ちを必死で繋ぎ、普段と変わらぬ一日を過ごす。

《じゃあね母ちゃん。また明日ねっ♪》

明るく言い残し、病室を出る。

ヘルメットをかぶり、サングラスをすると、溢れそうな涙を必死にこらえて原付を走らせた。

走り始めると、もう堪えきれなかった。

次々と頬を伝う涙。


母ちゃん…

母ちゃん…

母ちゃんっ…


今まで…

今朝まで、元気に退院すると信じて疑わなかった私。

というより、義母と死が全く結びつかなかった、考えもしなかった私は、一気に崩れてしまった。

しかし。
望みが100%潰(ツイ)えた訳ではない…
そう自分に言い聞かせ、気持ちを切り替えてゆく。

でも。
実際はそんな簡単にはいかなかった。

それで今度は、あのショッキングな出来事を考えないことにした。
つまり、なかったことにしたのだ。

とても受け入れきれなかった。

逃げたかった。

目の前の事実から目を反らし、逃げたのだ。

今の私には、そうすることしか出来なかった。

そしてついにお医者さんから

「いつ亡くなってもおかしくない状態です。覚悟を決めておいて下さい。」

そう言われてしまった。

長くても数日だろうと。

ダーリンは仕事を休んで母親の側にいたかったが、代わりの人が見つからず。
【死に目に逢えずとも仕方ない】と思っていた。

私は、翌日も普段と変わらず病室で過ごした。

義母は
いつ起きているのか
いつ寝ているのか
解らないくらい身動きひとつしなくなっていた。

目を見て、起きているのかどうかを判断するしかないくらいに。

時々、寝だこ防止の為、看護師に体の向きを変えられていた。

あまり動きはしなかったが、意識はチャンとあったので、痛いとか、もう少し右とか、そういうことはアイコンタクトと口パクで伝えていた。

そして…。