そんなある日。
忙しくなったから、と、新しい派遣社員が入ってきた。
私はこの新人さんのお陰で、随分救われることになる。
新しい助っ人はちぃママ。
私より少し年下の彼女と、非常に気が合い。
何故か彼女は私を【ママ】と慕ってくれるようになっていた。
ママて;
スナックか(笑)。
ちぃママ曰く
「だってぇー。なんか、お店のママッて感じなんだもん♪」
《じゃあそっちはちぃママだねっ♪》
なんて、なんとも脳天気な会話を楽しんだりした。
その頃。
自分の言うことが通ったせいで、かなりやりたい放題だったオセロ。
すっかり嫌気がさしていた私は、反論する気も、注意する気も失せていた。
そんな私の代わりに、正面切って意見してくれたのもちぃママだった。
彼女のお陰で精神的に楽になったとはいえ、やはり私の【辞めたい】気持ちは変わらなかった。
すると。
私のことを気に掛けて下さったメガさんが
「コッチの検査の仕事、しないか?」
と言って下さった。
この会社には、薬やティッシュボックスなど、携帯電話以外の印刷物の検査の仕事もあった。
そこに異動しないか、というのである。
やはりこのまま私に辞めて欲しくない、と。
少し悩んだが、私の為にそこまで色々考えてくれたメガさんの気持ちを無にすることは出来ないと思った。
有り難く受けることにした。
しかし。
このもう一つの検査の部署。
そこは60代(多分。私には70代に見えたが)の社員のオバチャン…メスボスが牛耳っていた。
それと私同様、派遣社員の女の子が2人。
このメスボス。
私が仲良くしてもらっていたオジチャン…オスボス同様、噂話が大好きで、自分が一番でないと気が済まない。
自分が気に入らない相手は、まるでスッポンのよに噛み付いて離さない。
私が義母の手術の時に休んだのを、あのオスボスが
「まだ籍も入れてないんだから、関係ないのになッ。」
と言っていた…
と、さも、酷いこと言うよね的な顔で、私、親切でしょッと言いたげに教えてくれたのも、このメスボスだった。
恐らく、オスボスと私が仲良さげにしているのが気に入らないのと、そのオスボスのことも快く思っていなかったので、チョイと引っ掻き回してやろう、と思って、私に告げ口したのだろう。
ただ。
陰で噂話しを広めることもしたが、自分でも相手に正面から噛み付いて行くような人だったので、性根から腐った人ではなかった。
某オセロみたく、陰で着々と小細工をし、極力自分が直接手をくださず相手を陥れる、という卑怯なやり方する輩よりは、よっぽど人間的である。
つまりは、メスボスはとてもわかりやすかった。
私を嫌っていることも(苦笑;)。
私が異動になった日から、私の仕事のやり方に何かと難癖をつけてきた。
それはもう、やることなすこと全てに…と言っても過言ではない程に。
同じ検査の仕事、と言っても、検査するものも、やり方も、不良品の判断基準も違っていた。
だから私は、他の人にやり方を教えてもらったり、真似をしたりしかしていなかった。
自分独自のやり方なんてしたことがなかった。
それでも、だ。
よくあれだけイチャモンがつけられるもんだ、と、逆に感心する程だった。
メスボスは、私がメガさんに特別扱いされたのが気に入らなかったのかもしれない。
私よりも、ずっとずっと長くこの会社にいたメスボス。
それに比べて、昨日今日入ってきたよな、それも、たかだか派遣社員の私。
【こんな小娘ッ】とでも思っていたのかもしれない。
しかし。
ここでも、メガさんがわざと直接私に指示(今日は残業していってくれなど)をしてくれ、私が仕事をしやすいようにしてくれた。
(もちろん、100%ではないが)
メスボスは、どんなに忙しくても絶対に残業したことがなかった。
それでも、同じ部署の人間、特に私が残業することを極端に嫌った。
後から思えば、私の残業時間が問題になったりしたので、また、それが問題になって、同じ部署である自分が何か言われるのが嫌だったのかもしれない。
でも私だって、また【給料泥棒】呼ばわりされるほど馬鹿ではない。
上司の命令なしで勝手に残業する、なんてことはしなかったので
《あ。メガさんに頼まれたんですけど?》
そう言うと、苦虫を噛み潰したような顔で押し黙った。
口の中で何かブツブツは言っていたが。
もちろん、コチラから神経を逆撫でするようなことはせず、のらりくらりと適度に仕事をする日々を過ごしていた。
やがて。
そんなメスボスとの関係に、変化が起きる出来事が…。
違う検査に異動になったあとも、オセロの方の検査の仕事が忙しいと、よく、助っ人に駆り出されることがあった。
その時は、私ともう1人の派遣の子が行くだけで、メスボスが行くことはなかった。
ある日。
私達の検査の方の全員が、駆り出されることがあった。
メスボスは、私達が手伝いに行った時のオセロの指示の仕方がおかしい、と、ブツブツ言っていた。