そんな時に限り、嫌なことは続くもんで。
ある日。
また、お店に来た社長。
PM９時過ぎで、丁度ノーゲストになった時間だった。
で、超不機嫌。
いきなり
「若い子らに評判悪いぞッ！！」
と。
第一に、値段が高い。
第二に、店が暗い。
そして
第三に、ダーリンの目つきが恐い(笑)。
値段は、本当に高いと思う。
席料が５００円。
お通しが、やや大きめの小鉢に入っているとはいえ、座っただけで５００円なのだ。
お通しをいらない、と言っても、値段は変わらない。
ドリンクも高いし、量は多いが料理も高い。
私だったら二度と来ない。
というか、そもそも価格設定は、社長、あなたがした筈ですが？
店が暗い、ってのは、まず、照明が暗い。
私達が初めてこの店に来た時も、どんよりとした暗さがあった。
それに、BGMは民謡ときたもんだ。
これで、明るさを求める方がどうかしている。
いや、これだって決めたのは、社長、あなたじゃないんですか？
ダーリンの目つきってのは…。
それが原因だなんて、８９３の言いがかりじゃないんだから(苦笑)。
第一、社長の言う【若い子】てのは、チンピラになりそこねみたいな輩のことだろ。
そんな中途半端な野郎が粋がって睨めば、ダーリンだって睨み返しもするだろに。
発想が貧相すぎですよ、社長。
更に。
山さんが不穏な動きをしていた。
店の重要事項を、ダーリンにでなく、にぃやんに、それも、にぃやんの携帯に直接連絡してくるのだ。
お店の責任者はダーリンなのに、だ。
どうも山さんは、ダーリンが煙たくてしかたなかったようで。
少し前に、社長がにぃやんに言っていた
【山さんよりもダーリン君の方が手早い】
的なことを、山さんにも言ったのかもしれない。
この頃から、山さんがダーリンを避け始めたからだ。
別店舗の人に、ダーリンが直接料理を教えに行け、という社長命令も
「あ、それ、ボクが行きますからッ！」
と、山さんが遮ったし。
よほどダーリンを、店の重要事項に関わらせたくなかったのだろう。
ダーリンは文句のつけようがないくらい仕事が出来たので、山さんは、自分が喰われるような気がしたのかもしれない。
負けるのが【悔しい】のでなく【嫌】だったのだろう。
本当にちっちぇー奴だ。
まだ不満なことは続く。
今度はにぃやんだ。
この頃。
にぃやんの彼女、カレンちゃんが、山さんの店舗で働くことになった。
山さんのお店は、以前はＡＭ１２時までだったが、社長命令で、私達の店舗と同様にＡＭ３時まで営業になっていた。
終わってから待つ必要がないので、丁度良かった訳だ。
ところが。
ある日。
ＡＭ２時過ぎに来た山さん。
暫くカウンター席に座っていた、と思ったら、いつの間にかいなくなっていた。
売り上げだけカウンターに置いて。
いつもは一緒に来る筈のカレンちゃんがいなかったのと、山さんの様子がおかしかったので、にぃやんに
《あれっ、カレンちゃんは？》
と聞くと
「んッ？今、歩いてる。」
と。
あとで、よくよく話しを聞いてみれば…。
カレンちゃん、今日で辞めると言ったらしい。
勤め始めて、１週間のことだった。
山さんが
「(私達のいる店舗に)送っていくから車に乗って。」
と言ったけど
「いいですッ。」
と断り、歩いてコチラに向かったらしい。
今はコンビニで時間を潰している、と。
どうやら。
仕事中なのにもかかわらず、いつも酔っ払って仕事が出来なくなる(指示が出来なくなる)山さんが嫌だったらしい。
彼女は、おっとりしているように見えるが、実は仕事が凄く出来るし、キッチリやるタイプ。
だから、そんな【いい加減】な仕事をすることが許せなかったのかもしれない。
それにしても、たかだか１週間で愛想を尽かされる山さんて…(苦笑;)。
いったい、どんな仕事の仕方をしているのか。
そもそもこの日。
まだ営業が始まって間もない、早い時間に
「今はまだ暇だから良いけど、忙しくなってきたらヤッコちゃん貸してくれるか？」
と、 山さんから直接にぃやんの携帯に電話があり。
にぃやんとしては、ダーリンに直に言うのがスジなのに、にぃやんにコッソリ言ったのと、【んじゃ、カレンは間に合わない、てことかッ】という思いで、秘かにブチ切れていたらしい。
そしてそれ以来、にぃやんのやる気の糸が切れてしまったのだった。
出勤時間は、男性はＰＭ２時、女性はＰＭ４時。
ところが、にぃやんのご出勤はＰＭ４時過ぎ。
重役出勤もいいとこだ。
ダーリンが仕事が出来るので【兄サがやってくれるべ】ってなもんである。
前々から、にぃやんはそうだった。
なのでダーリンは、にぃやんのやるべきことも多少やっていた。
営業に支障が出ない程度に。
他の人と組んで仕事をしている時の様子を知らないので、誰とでもそうなのか、それとも、相手がダーリンだから甘えているのか解らないが、ダーリンと組む時はいつもそうだった。
それでも、今の店舗で一緒にやり始めた時は、出勤時間も真面目だったし、２人で新しい創作料理を考えている様子は、生き生きしていた。
それが、少しずつ時間が遅れ始め、仕事中の覇気もなくなり。
カレンちゃんの【事件】以降は、すっかり元のにぃやんになっていた。
そういえば。
こんなことがあった。
ある日。
ＰＭ４時過ぎても出勤しないにぃやんに、何度か電話したが連絡取れず。
するとＰＭ５時頃、電話があり
「今、起きた。」
今度はＰＭ６時頃
「今、階段から落ちた。」
また、それっきり連絡取れず。
電話をしてもつながらず、電話がかかってくることもなく。
最後の連絡の時、一応、出勤するとは言っていたらしいが。