発情期の託生はエロ可愛い。
それは子供を産んだ後も変わらない。
いや変わらないどころか、年々大人の色気が増して、もうそれは、凶悪なレベルだ。
「やっぱり、子供を産んだからだよね・・・」
隣から聞こえる小さな呟き。
ソファで明日の会議の書類をチェックしていたオレにピタリと寄り添うように座り、自分の頭をオレの胸にこすりつけたり、指に指を絡めてきたり、甘えまくる可愛い存在。
発情期真っ只中の託生は、オレが仕事をしていようがお構いなしで、こんな風にべったりだ。
そのくせ、オレがちょっかいをかけると、子供たちの前だからと嫌がる。
全くもって理不尽だが、今の託生に何を言っても・・・。
「葵生を産んでから特にそう思うんだけど、ぼくの発情期、症状が軽くなってるよね?」
「・・・・・・」
いつも思うが、この無自覚さが一番恐ろしい。
なにをどう取ったらそう思えるのか。
「先生にも言われたんだ。母性が強いと、発情期が来なかったり、来ても症状が軽かったり期間が短かったりするって」
「へぇ・・・、まぁ、託生は、母性が強いとは思うぞ」
だからと言って、発情期の症状が軽いとは思わない。
近くにいる子供たちを気にせず、オレの腕やら脚を撫でさする。
普段の託生は絶対にしない行為だ。
二人きりの時でも、滅多に大胆なことを仕掛けてくることはない。
こっちの生活も長くなり、人前でキスしたり、肩や腰を抱いても気にしなくなっているのに、なぜか家族の前では駄目らしい。
子供たちの前で許すのは、軽いハグとキスまで。
家族なのだから、なにを遠慮することがあるのかと、未だに理解しがたい託生の七不思議の一つだ。
「前みたいに、こう・・・、我慢できない衝動って言うのかなぁ、そういうのはないんだよね」
オレの首筋に鼻を擦り付けて、小さくキスを落とされても・・・、全く説得力がない!
「・・・その割に、朝からオレの側を離れないよな?」
「だって、ギイ、すごく良い匂いがするから、くっついていたいんだ・・・」
アルファがオメガの匂いに誘われるように、発情期中のオメガが発する匂いに誘発されて、アルファからも番のオメガを誘う匂いが出ている。
オレが愛用している香水とも違うようだが、託生はその匂いが大好きだと言って、発情期の間は磁石の様にピタリとくっついて離れなくなる。
・・・オレだって、四六時中託生の甘い匂いに包まれて、そろそろ限界なんだぞ。
子供たちはというと、葵生を椅子に座らせて、望未はおままごとに夢中になっている。
あれが始まると長いんだよな。
まだ一歳の葵生は訳も分からず、望未が飽きるまで延々と相手をさせられる。
「なぁ、託生、ちょっとだけ、寝室に行かないか?」
20~30分あれば、一回はできそうだ。
「駄目だよ。ちょっとで済まないだろ?それに葵生も望未だって、まだまだ目が離せないんだから」
耳元でとびきり甘く囁いたはずなのに、効果なし、か。
「子供たちが昼寝するまでお預けか?」
頬から首筋を指でくすぐり誘っても、
「最近望未はお昼寝しないんだよね」
託生はのってこないし、こんなつれないことを言う。
「なら、夜までお預けなのか?」
勘弁してくれよ。
「ぼくは平気だけど?」
オレは平気じゃないんだ!
この状況であと半日も過ごせと言うのか!?
「二人を崎の家に預けるとか?」
「急に預けるなんて迷惑だよ。それに、せっかくの休日なんだから家族で過ごそうよ」
「・・・・・・」
家族で、なんて言っているが、子供たちは遊ばせておいて、オレにべったりじゃないか。
うっとりとオレを見つめる熱い視線、隙あらばとキスを仕掛けてくる赤く濡れた唇。
細く綺麗な指が、身体のあちこちをいたずらに触れて、オレを刺激する。
襲い掛からずに堪えているオレを褒めてもらいたい。
「せめて少し離れてくれないか?オレ、一応仕事中だし。託生も望未と葵生と遊んだらどうだ?」
「やだ」
こう即答されては・・・、もう返す言葉もない。
オレの腕に両腕を絡めて離れないと甘えてくる仕草も、仕事の邪魔をするなんて、託生がまずしないような我儘を言ってくるのも、発情期の症状だろう?
全然抑えられてないじゃないか!?
・・・次の発情期は、何か理由を作って、子供たちを預けよう。
絶対そうする。
期間中ずっとは無理でも、休みの日くらい託生と二人で過ごしたい。
そう決意するギイであった。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
なかなか書く気力と意欲が向上せず、
リハビリを兼ねて書きました。
やっぱりオメガ設定好きだなぁ…
発情期の託生に振り回されるギイ。
なんとなくそんな話を書きたくなった。