秋休みの二日目、意外にも早く託生から連絡が来た。
散々待たされて、やっぱり会えないと断られると覚悟していただけに、こんなに早く連絡を貰えるとは思わなかった。
だから、携帯のディスプレイに見知らぬ番号が表示された時、託生だと確信して、飛び上がらんばかりに喜んでしまった。
「もしもし!」
勢いよく電話に出て、聞こえてきた声に一気に気持ちが沈む。
『・・・崎くんかな?託生じゃなくて悪いね。兄の尚人だ』
「あ・・・、こんにちは」
お兄さん、ですか。
『崎くんも東京にいるんだって?誘ってくれたって聞いたけど?』
「はぁ、まぁ・・・」
託生にちょっかい出すな、とか言われるんだろうか。
『明後日の夜なんだけど、バイトを休めなくてね。託生を一人で留守番させるのが心配だったから、ちょうど良かった』
「え・・・?」
『もし崎くんの予定が空いていたら・・・』
「空いてます!」
いつ託生から連絡が来てもいいように、断れない予定は入れていない。
誘われても、行けるようならこちらから連絡すると言って、スケジュールは決めないようにしていた。
「何時に迎えに行きますか?オレは朝からでも大丈夫です」
『いや、日中は二人で出掛けるからいいよ』
「・・・・・・」
二人で、デート。
くそ、羨ましいじゃないか。
どうせ、毎日東京観光してるんだろう?
一日くらい、オレに時間をくれても良くないか!?
『できたら、僕がバイトに行く夕方に迎えに来てくれたら・・・』
「行きます!住所を教えてください」
オレの食いつきの早さに、尚人のクスクス笑う声が聞こえるが、そんなものは構っていられない。
『駅で待ち合わせでもいいかな?僕はそのままバイトに行くから』
「分かりました。駅で待ち合わせですね。・・・あの、託生は?」
携帯の向こう側から、託生の声はおろかその気配すら感じられない。
『今風呂に入ってるよ』
なんだ。側にいるなら代わってもらいたかったのに。
『遠慮しているのか恥ずかしがっているのか、自分から電話したがらないんだ』
「そうですか・・・」
大事な弟に想いを寄せる同級生、オレのことをそう認識していると思ったけど、意外に協力的なんだな。
この好意を素直に解釈していいものか迷うところだが、兄貴の思惑がどうであれ、託生に会わせてもらえるのならありがたい。
「それでバイトは何時に終わるんですか?」
『塾講師のバイトをしてるんだけど、9時には授業が終わるから、後片付けをして、10時過ぎには迎えに行けるかな』
10時か、結構遅いな。
うちの車で送るとして危険はないが、それならいっそのこと・・・。
「夜遅くなるようなら、うちに泊まってもらっても構いませんけど」
同級生を家に泊める、不自然なことじゃない。
オレの場合、多少の下心はあるとしても・・・。
『そう?・・・じゃあ、崎くんがよければ、お願いできるかな?』
「もちろん、大丈夫です!!」
抑えきれず弾む声。
思いっきりガッツポーズをした姿が見えているかのように、またもや吹き出すように笑われたが、嬉しさが勝っているので気にならない。
だって、お泊まりだぜ。
一晩中、託生と一緒に居られるなんて、嬉しすぎる。
ああ、オレ、今夜眠れるかな・・・。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
時期は秋休み。
季節感ないなぁ。
遅筆で申し訳ないです(T▽T;)