望未が3歳になる年の初夏、待望の第二子が誕生した。
望未と同じ濃いブラウンの髪と瞳、顔立ちはギイによく似た男の子。
6月に生まれたので、葵生-あおい-と名付けた。
ぼくとギイにとって6月は特別な月。
死にたくなるほどの絶望を味わって、全てを諦めたあの日から、毎年6月が来るたびに憂鬱になった。
でも、ギイの愛を信じて受け入れたのも6月だった。
その時からぼくの世界は一変した。
兄の墓参りにも行けたし、兄と両親を許すこともできた。
何のために自分は生まれてきたのかと、生まれてこなければよかったと、そう思うのもやめた。
ギイに出会えたから、ギイがぼくを愛してくれたから、生まれてきて良かったと初めて思えた。
葵生にも、生まれてきて良かったと思える人生を歩んでほしい。
「あーちゃん、カワイイね」
「そうだね。望未、仲良くしてあげてね?」
「うん、のぞみはおねえちゃんだから、あーちゃんのおせわする!!」
望未は、ぼくのお腹がまださほど大きくない頃から、「いつ産まれるの?」ととても楽しみにしていた。
下の子が産まれると、上の子はやきもちを焼くとか言うけれど、望未はしっかりしたもので、もうお姉ちゃんの自覚が芽生えている。
おむつを持ってきたり、ミルクを作ろうとしたり、母親のぼくよりも母親らしくて、時々困ってしまう。
「望未!まだ首がすわってないんだよ。抱っこするのはやめて!」
「わかってるよ。あたまがおちないようにだっこしたらいいんでしょ?」
まぁ、それはそうだけど。
とにかく弟のお世話をしたい望未は、うちにある育児書を読んだり、
(絵や写真を見て理解しているんだと思う)
いつの間に覚えたのか、タブレットをいじったり、とても勉強熱心だ。
「タブレットの操作、ギイが教えたの?」
「ああ?オレは何もしてないぞ。託生が使ってるのを見て覚えたんだろ?」
確かに、あれは主にぼくが料理を作る時に使っている。
だって、レシピを見ながら作るのに便利なんだもん。
「お手伝いしてくれるのはすごく助かるんだけど、何でもしたがるから困っちゃうよ」
「葵生が泣いたら、一番に飛んでいくもんな」
「小さなお母さんだよ。ギイも絵利子ちゃんが生まれた時、そうだったの?」
「・・・いや、あそこまで構いはしなかったな」
「だよね。う~ん、女の子だから世話好きになるのかな?」
「かもな。でも興味があることを突き詰める、そういう性格はオレに似てる」
なるほど、やっぱり望未はギイの遺伝子を濃く受け継いでる。
おもちゃで遊ぶよりも、絵本を読む方が好きだし、たまに絵本じゃなくて、普通の本を読んでいる(眺めている?)こともあって、ドキッとするけどね。
ぼくに性格が似ていたら、きっとこうはいかない。
「それより・・・、望未が手伝ってくれるから育児は楽でいいだろ?その余った体力はオレのお世話に使ってほしいんだけど」
いや、いくら望未が手伝ってくれるといっても、目が離せないことに変わりはないし、楽してるわけでも体力が余ってるわけでもないんだけどな・・・。
逃げ出せないほどきつく抱きしめられて、腰に押し付けられる熱い感触。
こうなってしまったら、ギイは止まらないし、ぼくも簡単に煽られてしまう。
「明日、葵生の検診で朝から出掛けるから、軽めにね?」
「ん、分かってる」
本当かな?
軽めと頼んで、そうなったことって、ほとんどない。
何年たっても変わらぬ愛情を注いでくれるギイと、可愛い二人の子供。
ぼくの日常は、こんなにも輝いていて、本当に幸せです。
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二人目が生まれたところから再開します。
一話、二話で終わる話を時々、おのろけたっぷりでお届けできれば。+.。ヽ(*>∀<*)ノ。.+。