「島岡、オレ、幸せすぎて怖いよ」
「急になんですか?」
「毎日、幸せのMAXを更新してるんだ」
「はぁ・・・」
「託生と想いが通じ合って恋人になれた時、これ以上の幸せはないと思った」
「そうでしょうね。あの時の義一さんの浮かれようといったら・・・」
「でもさぁ、その後しばらくプラトニックな関係が続いて・・・、結構辛かったんだよな。託生と同じ部屋で寝起きしてて、手を出せないなんて、よく2か月も我慢したよ。我ながら感心する」
「・・・でしょうね」
「それで、託生がオレに全てを委ねてくれた時は、ああ、これが幸せの上限なのかなぁって、本気で思ったんだよ」
「・・・・・・」
「一年間、託生と同室で過ごして、何をするにもいつも一緒で、日に日に愛おしさが募るんだよなぁ。高校2年の一年間って、オレの人生の中で一番輝いていた時だと思ったこともあったが、そうじゃなかった。今が一番なんだ。しかも今っていうのは毎日そう思うんだぜ。だから、幸せに上限はないんだよ。・・・あっ、島岡、知ってるか?愛情にも上限はないんだぜ」
「・・・義一さん、力説されているところ申し訳ございませんが、仕事をしてもらえませんか?」
眉一つ動かさず、能面の様な顔でちらりとこちらを見ただけで、すぐにノートパソコンに視線を戻す。
独身仕事人間のこの男に、家族を持つ素晴らしさを教えてやろうと思ったのに・・・。
「分かったよ。ああ、そうだ、今日早く帰ってもいいか?」
「ですから、毎日申し上げておりますが、仕事が終わり次第、帰って頂いて結構ですよ」
「あのなぁ、これ全部終わらせたら、夜中になるだろうが!託生は葵生を産んだばかりで大変なんだ。少しでも育児を手伝いたいと思う夫の気持ちが分からないのか!」
「そう言って、毎日早く帰る義一さんの残った仕事を片づける、私の気持ちが分かりますか?」
「・・・・・・」
「そうそう。日本には、亭主元気で留守が良い、という言葉があるそうですよ」
「なんだよ、それ?」
「夫は外でバリバリ働いて、なるべく家にいない方が、妻は都合がいいという意味です」
「はぁ!?家にいない方がいいだと!!託生がそんな風に思うわけないだろう!」
「託生さんがそう思っているかはわかりませんが、日本の主婦は大抵この言葉に共感するらしいですよ」
なんだと!?
これは確かめる為にも、今日も早く帰らないとな。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
専業主婦なら、共感するんだろうなぁ。
お義母さんは、お義父さんが定年退職して、再就職するまでの期間ずっと家にいて、鬱っぽくなってたけど・・・。
お父さんが家にいることが、こんなに苦痛だと思わなかった、ってこぼしてた(・_・;)
今は共働きの家庭が多いだろうし、どうなんだろうなぁ。
私は、さっさと帰って来て、家事に育児を手伝ってよ!
って思います(*^o^*)