暑い。暑すぎる。

ていうか ちょ、ちょっとさぁ、暑すぎない…?

昼休みに10分外を歩いただけで涅槃が見えましたよ。

首すじを冷やす商品とかいろいろ買ったりもしたんですけどね、やはり炎天下ではそんなの焼け石に!水!
濡らして気化熱で冷やすマフラー?
小さい保冷剤が2個セットできるタオルマフラー?
ペルチェ素子で動脈を冷やすマシン?
そんなんじゃもう間に合わないでしょうが!

もっと直接的に涼しくなれる方法が今すぐ必要!
そうだ、もういっそのこと保冷剤を体に装着したい。ウェアラブル保冷剤が欲しい。

探すと保冷剤リュックだとかベストだとか、現場作業系のものを中心にそこそこみつかるんだけど、自分の欲しいかんじにジャストなものって意外と見つからない。デザインもあまりよろしくない。

見つからないのは「欲しい形とサイズの保冷剤」が存在しないからなんじゃない?…作ればいいんじゃない?
うちには各種ナイロンポリ袋ヒートシーラーがある。あとは中身を作ればいいだけだ。

そうだ、保冷剤、作ろう。(JR風に)

まずは水分補給もね!

熱中症対策飲料(塩ゆず)

タオルに仕込んで首を冷やす

もう長い保冷剤作って、それ巻けばいいんじゃないだろうか。

ということで、長い保冷剤を作りまして。
スポーツ用の長細いタオルを縫って、長い保冷剤をイン。

結構ちゃんと冷たいです。冷えすぎても良くないので、密着度合いを調整しましょう。
子どもさんはやめといたほうがいいかも。

アスパラとかフキの水煮パック製作用に買ってた、長細いサイズのナイロンポリ袋(10×30cm)が、エリマキ用に実にちょうど良かったです。
もちろんジップロックでも使えますが、ちょっと耐久性が心配なので、破れにくく、ちゃんとシールできる袋の方がいいかなと。

HEIKO ポリ袋 ナイロンポリ K10-30

さらに長さを伸ばすためにナイロンポリ袋をヒートシーラー(インパルス式)で連結したいのですが、多層フィルム構造なので、融着できるのは袋の内側だけ。袋の端を3センチ程度切り落とし、真ん中部分を折り返して別の袋に差し込み、その状態でシールしてみました。ちゃんとくっつきました。
首と肩の形に沿うように、袋に関節を作りながら整形していきます。

動脈がある首筋(両側)は冷やして良いが、首の後ろ(脛骨)は冷やさない方がいいとの説も見かけたので、後ろ側は冷やさない構造に変えた方がいいかもー。その方が安定感もありそう。

ポリビニルアルコールで溶けにくい保冷剤を作る

さて、それでは保冷剤の中身です。

今回作りたい保冷剤の希望条件は、まず水よりも長く冷たい状態が長時間保てること。
中身がゲル状であること。
凍った時も柔らかい状態であること。

なんでゲルかっていうと、市販の保冷剤の中身はゲル状であることが多いので、水っぽい液体を入れるのに比べてメリットがあるということなのでは?と考えた結果です。
実際メリットを考えてみると、

1. 袋が破損したときにゲルじゃないとひどいことになりそう。
2. 水よりも保冷時間が長い。
3. 中身がかたよりにくい。

こんなところでしょうか。
柔らかい方がいい理由は「首にかけるから」です。

いろいろ調べてみると、どうやらPVA(ポリビニルアルコール)という素材を使うのがいいらしい。

探してみるとまず見つかるPVA素材が「洗濯のり」。
ワイシャツや浴衣なんかをパリッとさせるあれですね。

洗濯のりと、水、それから適度な粘度を持たせるためのホウ砂(ほうしゃ)という素材を混ぜると………なんとスライムができます。

おっと、作りたいのはスライムじゃなかった。

ただし、保冷剤の中身はわりとスライムだし、世の中にはスライム製作用のセット商品というものがたくさん販売されていて、それを転用すると保冷剤づくりが手っ取り早いのだという知見を得た次第です。

ちなみに原料は同じですが割合が違うので、作業中にスライムはできあがりません。もっと水っぽくなります。

洗濯のり(PVA) 100ml
300ml
ホウ砂 小さじ1/2
ホウ砂水溶液用の水 50ml〜
食用色素 お好みで

ホウ砂水溶液(水:ホウ砂=10:1で飽和)を作ります。水と洗濯のりをよく混ぜ合わせます。ここでよく混ざっていないと、仕上がりにムラができます。
ホウ砂水溶液の上澄みを、洗濯のりと水を混ぜ合わせたものに少しずつ加えながら素早く混ぜていきます。

  • ホウ砂は完全には溶けないので、水溶液中の沈殿物は捨てます。
  • ホウ砂には弱い毒性がありますので、ホウ砂自体も出来上がった液体も、取り扱いには注意が必要です。食べちゃダメ、絶対。

うまく混ざって粘りが出たら、希望のサイズのナイロンポリ袋に詰めて、シーラーで熱融着してしっかり閉じます。破裂が心配なので、あまりたくさん詰めず、遊びを持たせるように注意。肌に当たらないように角を丸く切ったら完成です。
ジップロックでもできるでしょうけど、強度が心配なのでナイロンポリ袋を使います。

食用色素や絵の具などで着色すれば、カラフルな保冷剤を作ることも可能です。その場合は、洗濯のりと水を混ぜる時点で投入してください。

さて、冷凍庫でじっくり凍らせてみましたが、柔らかく凍るかと思ったら、結局カッチカチになりました。PVA保冷剤は原価安めで作れるのがメリットですが、柔らかいのは凍っていない時だけのようですね。

ただし、長い保冷剤のところどころにシール(熱融着)しながら作成すれば、固いままでも関節があるので首に巻く程度の使い方はできます。
首にかけるための保冷剤は、必ずしも柔らかくなくてもいいってことですね。

ちなみにこの液体は酢で分解しますので、使った器具を洗うときにはお酢を使うといいです。排水管を詰まらせると大変なので、きっちり分解させて終了しましょう。

プロピレングリコールで柔らかい保冷剤を作る

さて、じゃあ結局どうしたら柔らかい保冷剤が作れるのか。
次は「プロピレングリコール(PG)」を試してみましょう。PGと吸水ポリマーで、柔らかく凍るゲルを作ります。

2L買ったらけっこう多くて、最終的には後述の氷嚢とか氷まくらとかも作りました。330mlのを買えば1.3Lくらい作れるので、保冷剤だけ作るならそれで十分だったような。

プロピレングリコールは食品添加物や化粧品にも使われる毒性の低い液体で、車などの不凍液として利用されることもあります。

  • ただし猫には害があるようですので、ペット用の保冷剤として使うのは気をつけた方がいいですね。

ではまずプロピレングリコール水溶液を作ります。

PVAと違って、こちらは探しても資料がまったく見つからなかったので、手探りでやっていきますよ!
まず濃度の違う溶液それぞれを吸水ポリマーに含ませたものを凍らせてみます。
水の割合が多い方が冷却効果は上がりますが、その分固くなってしまうので、柔らかさを保てる限界値を調べます。

凍らせてみた結果、水:PG=5:1と4:1のものは固すぎで、シャリシャリした感じに凍りましたが、水:PG=3:1以上の濃度のものは柔らかい状態をキープしていました。
25%程度のプロピレングリコール水溶液であれば、カチカチに凍らないということですね。

柔らかい系の保冷剤の中身はこれでOKとします。
柔らかい分溶けやすく、保冷時間は比較的短いので、固い保冷剤と柔らかい保冷剤を用途で使い分けていきたいところです。

ちなみに凍らない液体ということで、高濃度のアルコールなども試しましたが、吸水ポリマーはアルコールは吸わないみたいですね。分子の大きさの違いとかゲルの構造とか色々あるっぽいようですが、それについては難しすぎてギブアップしました。文系です、どうも!

で、結局中身は何がいいの?

同じ袋で作った保冷剤を、並べて机に置いた状態で、それぞれの保冷具合を計測しました。

計測の内容がガバガバすぎて詳細は割愛しますが、保冷状態の持続時間はざっくりこんな風になりました。

PG(柔らかい) 30分
PVA(固い) 2時間

保冷温度は30分時点ではほぼ同列。
それ以上はPGは急激にぬるくなり、PVAは5℃くらいの状態を2時間キープしていました。

体に着用して使用した場合は当然これより早く溶けるはずです。
屋根ありの屋外で実際に首に巻いて使用してみました。
柔らかいPGは「冷たい」と感じたのは15分程度で、30分まではまあまあかな、という具合でした。
PVAは屋外でも1時間半は冷たいままでした。優秀。

やはり柔らかい素材は保冷状態を長時間保つことはできないんですね。
市販の保冷まくらも、固い保冷材と柔らかい保冷材を多層構造にしたりしています。柔らかくてずっと冷たいというのは実現が難しいというわけです。

結論として、屋外での保冷剤には保冷状態を長く持続してほしいので、素材は水かPVAを。屋内での使用で柔らかさが必要なのであればPGがベストというかんじでしょうか。保冷温度もPGはやや高めなので、温度がそう上がらない室内ならこれくらいがちょうどいいのかなと感じました。

完成

使用シーンとしては「花火鑑賞」や「真夏のフェス参加時」みたいなところを想定しています。
炎天下では強い保冷剤も2時間保ちませんから、保冷バッグと取り替え用の保冷剤も持っていきます。荷物を減らしたいならちょっと難しいかな。

ためしに通勤時に装着してみていますが、今のところ「汗をかかないわけじゃないが、汗だくにはならない」程度には涼しく過ごすことができます。つまり暑いけど極端に体温が上昇していないということなので、効果は十分実感できます。

ていうか保冷剤首に巻いてても、まだ汗が出るってスゴイですよね…今年の夏もなんとか頑張って、死なずに乗り切りたいところです。
もう死ななかったらそれだけで、すごいね、死ななかったね!つってお互い褒めあってもいいレベルなんじゃないだろうか。おめでとう!ありがとう!

番外:アイス枕を作る

PGの柔らかいけど溶けやすいというのはデメリットですが、その分保冷剤のサイズを大きくすることでカバーすることは可能です。
市販品のアイス枕は流通の都合などもあってか、ある程度の重さとサイズのものしかありませんが、自作なら制限はありません。

ただし、普通のナイロンポリ袋よりも強度のある容器が必要です。

百均に売ってた、水を持ち運ぶための袋が丈夫でちょうどいいなということで、こちらを使いました。分厚いのでそう簡単には破れないと思います。
2/3くらいゲルを詰めたら凍らせて完成。

冷凍庫を占領してしまうっていうデメリットはありますが、なにしろでかいので、冷たさはそこそこ保ちます。
枕にしなくても、冷たいものを触りながら寝るのは真夏には気持ちがいいですよね。

番外:氷嚢を作る

百均で売ってる氷嚢の中身をプロピレングリコールのゲルにします。
ポリ袋を氷嚢の内側に入れて、その中に吸水ポリマーを入れて液体を注ぎ、しっかり縛ってから蓋をします。
丸ごと凍らせて使います。

氷嚢、寝苦しい夜とかに使うと気持ちいいんですけど、氷入れるのがめんどくさいし、水を入れて凍らせると全体がカチカチになっちゃうのがイヤだったんですよねー。
これなら丸ごと凍らせても大丈夫。プヨプヨでヒヤヒヤ〜

これすっごく良いですよ。寝苦しさにドタバタしてる旦那氏も大喜びよ。

工夫次第で他にもいろんな保冷剤が作れそうですね。
原料がまだまだあるので、何か思いついたらまた作ろうと思います。

作れるよ!