神童  谷崎潤一郎 | 青子の本棚

青子の本棚

「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。

 

 

 

 

 

小学校から神童と呼ばれた瀬川春之助は、自分より劣る先生や親たちを軽蔑していた。また自分のような天才は、商店の小僧になどなるはずはないと考えていた。しかし、家計の状態を考えると、春之助の望む中学校進学は難しく、両親は丁稚奉公させるつもりでいた。みかねた校長が、春之助の父:欣三郎が勤める木綿問屋:井上商店の当主:吉兵衛の子どもたち:玄一とお鈴の家庭教師として住み込み、中学校へ通わせてもらう話を持ってきた。

 

 

 

 

自他ともに「神童」と認める春之助は、先生たちをも凌ぐ頭脳の持ち主です。

しかし、彼の言動は、どうも鼻に着きます。

 

 

えらそうなことを言っても、まだまだ子どもです。

住み込みの家庭教師として家を出たものの、やはり家や母が恋しくて、学校の帰りになんやかやと理由をつけ、実家に寄らずにはいられません。

 

主人の家でも、丁稚奉公にきたわけではないというプライドとともに、面倒をみてもらっている負い目もあり、頼まれると雑用を拒めない自分の態度に、心の中では葛藤の止む日がありません。

 

 

不遜で、ちょっと嫌な子でもある春之助ですので、この先、どんな挫折が待っているんだろうと、わくわくよだれしてました。

二十歳過ぎれば……、とも言うじゃないですか。

私こそ、嫌な奴ですね。汗うさぎ

 

 

でも、乙女のトキメキ大谷崎ですよ。

あっと、驚くような展開バレエを期待するじゃないですか。

 

 

するとですね、やはり持ち上がりましたよ、主人公がへこむような問題が。

それは、なんと、春之助のお顔がね、よろしくなかったんです。

天は二物を与えず。

キラキラ男前(イケメン)じゃないの。

 

えっ、そこ?ポーン

やっぱ、お年頃になると”そこ”は、美醜なんですな。

 

自分の顔は、普段から馬鹿にしていた玄一にさえ劣ると気づいたときの落胆ときたら、いかな天才といえども、へこむ、へこむ。ドクロガーン

 

そうなのか。

 

 

ところが、やっぱ神童は違いますね。

自分の外見が劣ることで、勉強も手につかないほど落ち込んだあと、再び活路を見い出すのです。

 

 

 

 

――己は禅僧のような枯淡な禁欲生活をおくるにはあんまり意地が弱過ぎる。あんまり感性が鋭過ぎる。恐らく己は霊魂の不滅を説くよりも、人間の美を歌うために生まれて来た男に違いない。己はいまだに自分を凡人だと思うことは出来ぬ。己はどうしても天才を持っているような気がする。己が自分の本当の使命を自覚して、人間界の美を讃え、宴楽を歌えば、己の天才は真実の光を発揮するのだ

 

 

ということで、詩と芸術の世界へ。

 

えっ!

これって、ご自身のことですか? 笑ううさぎ笑