超・殺人事件 推理作家の苦悩  東野圭吾 | 青子の本棚

青子の本棚

「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。

 

 

 

 

8つの殺人事件の短編集。

 

ですが、もう少し正確に言うと、殺人事件を扱った小説をめぐるお話です。

 

20年以上前の作品なので、フロッピーとか認知症じゃなくて痴●症とかの表記に、ちょっと驚きました。

ミステリィは、特に理系部分は、古くなりやすいんだろうな。

でも、そこそこ近未来(=現代)を言い当てていて、それにも驚き驚きました。

 

 

 

 超税金対策殺人事件

北海道を舞台とした『氷の街の殺人』を連載中の俺は、浜崎会計事務所から届いた来春支払わなければならない税金の額を見て驚いた。ハワイ旅行や妻のコート、アルマーニのスーツにカラオケセットやパソコンまで、果ては妻の実家の風呂場改築費や自動車修理代金など1年間に使った金額を必要経費として落とすべく、高校時代からの友人でもある浜崎の助言に従い、小説に反映させていくが……。

笑えるけど、悲惨。札束

 

 

 超理系殺人事件

中学校の理科の教師である私は、自他ともに認める理系人間である。平積みされた新刊本『超理系殺人事件』というタイトルに惹かれ手に取った私は、立ち読みで専門用語を駆使した内容に惹かれ購入した。さっそく喫茶店で読み始めるが……。

タイトルの下に[この小説が肌に合わない方は飛ばし読みしてください。]の文字がありますが、これがクセモノです。

 

私なら絶対買わない。

文系で解らないながらも、頑張って一生懸命読んだのに。。。

ひどい言いぐさだわ。泣くうさぎ

 

 

 超犯人当て小説殺人事件

鵜戸川邸介に呼び出された四出版社四人の編集者は、今月号の『小説珍重』に掲載される予定の犯人当て小説の問題篇を手渡された。解答篇は来月号に掲載予定で、読者から解答を募集するという。鵜戸川は四人にも犯人を推理するよう促す。最初に正解した者に、長篇新作を進呈すると言われ……。

なぜ編集者に解答させたかは予測できたんですが、これは、額縁構造になっていて、それが、合わせ鏡鏡のように解答篇が問題篇をなぞるかのようなラストが技ありで、面白かったです。

 

 

 超高齢化社会殺人事件

藪島清彦は、ファックスも電子メールも使わず、まだ原稿を手書きしている。そして、今日も小谷は、『喫茶室・渋沢』で待ち合わせ原稿を受け取る。小説の内容も、現代感覚が恐ろしく欠如している。しかし、もっと困るのは……。

作家:藪島清彦、九十歳越え。

編集者(契約社員):小谷、七十歳。

読者の平均年齢、七十六歳。

 

毎回同じ動機の殺人事件を書く作家に、前作と同じように原稿を書き直す編集者。

それをまた前作を覚えていない読者が購入し、そこそこ売れる小説。

うーん、これは、なかなかにヤバい近未来ですね。

というか、そんな未来も既に現代に等しく、まだ平均年齢に届いていないにもかかわらず、感想書く前に既に忘れている読者代表の私です。汗うさぎ

 

 

 超予告小説殺人事件

看護婦、デパートガール、バレリーナと独特の制服や衣装を身にまとった女性が殺害される連続殺人事件『殺しのコスチューム』をなぞるように殺人事件が起きる。一気に注目作家となった松井に、小説通りに犯行を重ねる犯人から電話があった。次回はチアガールを絞殺してほしいという。予告どおりに殺害が起こり……。

ラストがねぇ、怖かった。

ナイスアイデアと思いきや……。

結局、犯人は逃げダッシュおおせて、作家が割り食ったドクロってことだよね。

なんだかなぁ。もやもや

 

 

 超長編小説殺人事件

三年ぶりの書下ろし小説『砂の焦点』を脱稿した葛原万太郎は、担当の小木から八百枚の原稿を二千枚に増やすよう勧められる。時流は長編小説全盛。枚数競争は、やがて厚さ競争に代わり、その後、とうとう命がけの……。

注意超危険。

どーやって持って帰るんだよ。むかつき

もはや持ち歩きはもちろん、床抜ける。

 

 

 魔風館殺人事件(超最終回・ラスト五枚)

探偵:高屋敷は、魔風館の絶対に脱出不能な時計台で殺害された当主:岩風氏の密室殺人事件の真相を述べる。(許容された枚数は残り五枚。しかし、行き当たりばったりでここまで書いてきたため、どう解決すれはよいかわからない。どうしよう……)犯人は……。

こ、これは……。

超反則だー。笑ううさぎ笑

 

 

 超読書機械殺人事件

ミステリ小説の書評家:門馬は、黄泉よみ太というセールスマンの訪問を受け、「ショヒョックス」なる高性能読書マシンのモニターを引き受ける。本を投入すると要約や五段階の書評が寸時に提示される便利な機械だ。締め切りに追われる門馬は、モニターを引き受けるが……。

小説を書いてくれる「ショヒョックス・キラー」に、あらすじやどこが面白くて、どこがつまらないかを教えてくれる「シッタカブリックス」。

 

うゎっ!

これって、 ChatGPT やん。

20年前に、すでに予測されてたんか。ネガティブ

すごいなぁ。

でも、これは、本が殺されたって意味でもあるのかな。

 

 

<本物の本好きなど殆どいない>という黄泉たちの考えに、一瞬ドキリドキドキとしました。

  1. 本を読んでいないということに罪悪感を覚える者
  2. 本好きであったという過去に縛られている者
  3. 自分を少々知的に見せたい者

たちが、ただ本を読んだという実績を求めて本を読むはてなマーク

 

1は、無いな。

2も、無いかな。

3は、自己満足にしろ、ちょっとあるかも。。。ニコニコ

などと、わが身を振り返ってちょっと反省。

 

でも、私、多少の当たりハズレはあれど、たいていの読書は楽しいおすましペガサスハートのバルーンし、これからも楽しめる本を読みたいバレエと思うのです。

 

 

 

    

本 読書って一体何だろうな

 

 

 

 

 

 

 

【おまけ】

 

◆固有名詞?

どの短編にも、どこかで聞いたような名前や、作品名が頻繁に登場します。

「法金教授」とか「金潮社」とかね。

 

なかでもラストの「超読書機械殺人事件」に出てくる作家名に、ニヤニヤです。

『南総里見八犬伝』の八犬士の「犬」の一字を変えて「猿田小文吾」とか「牛飼源八」とか「猫塚志乃」とか「虎山道雪」なんて名前に、受けまくりでした。犬