Kの昇天  梶井基次郎+しらこ | 青子の本棚

青子の本棚

「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。

 

 

 

 

私は、あなたのお手紙で、K君の溺死を知り、大層おどろきました。そして、「K君はとうとう月世界へ行った」と思ったのです。なぜなら……。

 

 

 

 

「乙女の本棚」シリーズです。

書簡体メールで書かれた短編です。

「K」繋がりで読んでみました。

 

 

こちらの「K」君も、とんだ「K」君でした。驚き

「K」とは、やはり「梶井」の「K」でしょうか。

 

過失なのか自殺なのかと悩んだ末、一面識もない「私」に、「K」の死を悼んで手紙メールを出した「あなた」とは、誰なのでしょう。

 

それ以前に、手紙をもらった「私」も、また謎。

 

 

 

偶然、療養地であるN海岸で、「K」と知り合った「私」ですが、健康を取り戻した「私」に対して、「K」は病気が進行していきます。

 

 

どうしても、作者本人と「K」を重ねてしまいます。

 

そして、「私」は、まるで「K」の影、ドッペルゲンガーであるかのように、「K」に代わって彼の死の情景を語ります。

 

それゆえ、「あなた」とは、読者も含めて、彼を囲む知人・友人・家族へ向けた、メッセージのようにも思えて。。。

 

 

ハイネの詩にシューベルトが曲を付けたブルー音符「海辺にて」&むらさき音符「ドッペルゲンゲル」、シラノの月お月様へ行く方法、ジュール・ラフォルグ(フランスの詩人で27歳で夭折)の詩、イカルスの失墜。

 

どれも、乙女が好みそうハートです。

なるほど、リボン「乙女の本棚」やわ。

 

 

そして、月齢十五・二の満月の南中する時刻に、何人ものイカルスを嘲笑するかのように、月へと飛翔し去った「K」の魂に、自らの死を予言したのかなぁと思います。

 

イカルスも太陽晴れではなく、月お月様を目指せばよかったのかもね。

 

 

 

 

 オーナメント

    

本 哀れなる哉、

  イカルスが幾人も来ては落っこちる。

 

私も何遍やってもおっこちるんですよ」

そう言ってK君は笑いました。

  ふんわりウイング 

 

 

 

 

 

 

【おまけ】