生まれたのは、元気な女の赤ちゃん:青島リカだった。しかし、母の目にはイグアナにしか見えなかった。その後、生まれた妹:マミは普通の女の子なのに、成長してもリカはイグアナのままだった。周囲の人には、人間に見えるようだが、母とリカ本人には、イグアナにしか見えない。何かにつけマミと比べ、リカに辛く当たる母に、リカの心は……。
『イグアナの娘』
タイトル最高
日本語が難しいことを、再認識しました。
「イグアナの娘」の「の」のことです。
私、てっきり「イグアナ」=「娘」で、同格だと思っていました。
まぁ、それでも、この場合は合っているんですが、実は、この「の」は、「娘」を修飾していたんですね。
参りました。
テーマは、母娘の近親憎悪。
短いお話のなか、似た者母娘の関係を「イグアナ」という見た目ひいちゃう形態を使って嫌悪感を表現しているのは、漫画の特性にぴったりだなぁと思いました。
解りやすいし、またこのイグアナちゃんが、かわいかったりするのですよ。
悲しい生い立ちを背負ったリカが、自分の代でそれを断ち切ることができたラストに、ほっとしました。
他に、以下の5編の短編が収録されています。
帰ってくる子
幼くして亡くなった弟:ユウが忘れられない母は、日々ユウに話しかける。そんな母を見るにつけ、英明は弟への嫉妬を募らせ……。
母も兄も残された者は、どっちも辛いなぁ。
でも、なしでやってくほかないんだよ。
カタルシス
浪人中の八峰(やつお)ゆうじは、将来に夢も目標も見いだせず現実から逃走中。バイト先のコーヒー店のマスター:塚本や、心理学専攻の大学院生の従姉:ともよらと関わり、自らの居場所を見つけていく。
思春期、反抗期、逃走中。
青春やね。
午後の日射し
専業主婦:若村賞子、42歳。娘一人と息子が一人。夫から「夫婦は他人」という言葉を聞き心中穏やかでない。高校時代からの友人たちと3人で通う料理教室で、料理好きの青年:海部達夫25歳と出会う。手際のいい彼は、なにかと賞子を助けてくれ……。
夫に浮気ばかりされてる友人:カオルさんの、「現実ってカコク。」の言葉に笑いました。
でも、最後は収まるとこに収まって、一応めでたし?
賞子さんも、アバンチュール未満で、平凡な終わり方です。
これが、現実ちゃぁ現実。
リアルだと思う。
タイトルの『午後の日射し』は、若い頃は、鮮烈な真昼の太陽と例えられるのに対し、賞子の穏やかな年代を表しているようです。
と考えると、”カコク”ってほどでもないかな現実。
学校へ行くクスリ
高校一年の二学期最初の登校日、父さんはワープロに、母さんは電気ジャーになっていた。通学途中の電車の中も変な乗客ばかりで、学校に着いても、みんな違う物になっていた。そんな中、中学からの友人:甘木と、オレ:別海かつみがファンだったアイドル:銀野ぶどう似の中川マユミだけは、変わらず人間にみえた。しかし、彼女の頭にも花が咲き、甘木も鳥の頭に……。
周りの人がね、皆なんか変なものに見えちゃう。
カフカの『変身』の逆バージョン?と思ったけど……。
中川からもらったクスリ:グリーンドロップを飲むと、頭がさえて勉強が頑張れる。
勉強が頑張れると、成績が上がる。
で、別海くんはお勉強に励むわけですが、……。
そこに親の三角関係が絡んで、なかなか複雑なニンゲン模様なんだけど、人間じゃない顔に見えるから、深刻さが薄くて、でも、別海くん目線でみると、勉強だけしてれば良いってわけじゃないってことに気づいて……。
ってことで、ええんかな。
🦉
失うと つらいものの 顔を、
もう 見失わないように しよう。
友人K
中二の夏、転校してきたKは、それまでオレが一位だった100メートル走でも中間テストの数学でも一位を取った。ワルガキで、秀才でクラスのリーダーだったオレは、ムカついた。しかし、次のテストで中の下だったKは、自分は好ききらいがはげしいからと気にするふうもない。なにかと目障りなKをオレたちは、からかったが……。
なぜか気になるK。
Kからは無視されてて、接点もそんなになく一方通行なのに、それでも”友人”?ってオレが呼ぶのが、ちょっと気になります。
でも、私もそういう人、いるいると言えないのが、ちょっと淋しいかも。