1450年ごろ、ドイツのマインツ市に、ふしぎな機械が登場した。ぼろきれと骨、まっ黒なススと植物の種からできていて、茶色のコートを身にまとい、金がちりばめられている。それをつくるためには、鉛と錫、じょうぶなオークの木材が必要だ。さて、それとは……。
さっそく『BOOKMARK2』のお薦めの中から手に取ったのが、この本です。
とてもきれいな絵本です。
冒頭のぼろきれと骨は紙に、ススと亜麻仁油はインクに変身し、革表紙と金箔をあしらった180冊の聖書が出来上がります。
そして、そのために発明されたのが、鉛と錫で作った活字をオークの木にセットした世界初の活版印刷機です。
ぼろきれ(パルプ)と骨(糊)から紙ができるなんて、SDGsやん。
亜麻仁油がインクに?
どちらも、新鮮な驚きでした。
グーテンベルクの活版印刷機は歴史で習っても、授業では、そこまで教えてくれへんもんね。
この絵本には、本が出来上がるまでの行程が描かれています。
出来上がりには、グーテンベルクが作った現存する聖書の写真がはめ込まれているのですが、まるで絵のようで違和感がなくて、その美しさにドキリとさせられます。
また、見返しから本文の背景までが、金箔と見まごうばかりの美しいアラベスク模様で飾られていて、どのページを見てもうっとりしてしまいます。
どの工程も、結構ハードなのにね。
ヤギ皮をなめしている側を、貴族?の奥様が侍女たちと鼻を押さえて通りかかったり、せっかく組んだ活字をつまずいてバラバラに、というような思わぬハプニングも描かれていて、ニヤニヤしてしまいます。
そして、このグーテンベルクさん、実は詳しいことは、ほとんどわかっていない謎の人物なのだそうです。
生涯一人暮らしで、お墓もどこにあるかわからないし、肖像とされている絵も亡くなってから、ずっと後の16世紀になって描かれたもので、髭はその当時の流行だったらしく、ご本人の髭の有無も不明なんだとか。
こんなに有名で、未来に貢献してるのに。。。
『BOOKMARK2』の「17 本についての本特集」のエッセイによると、中世では羊皮紙に手書きされた聖書を一冊作るのに、250頭もの羊が必要だったそうです。
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それが、いまや電子書籍なら、紙さえも必要としません。
それを表すように、ラストページの背景から裏表紙の見返しが、アラベスク模様から電子書籍をイメージさせる電子回路のデザインに変化しています。
いずれ、革表紙の本はもちろん、紙の本さえ私たちの手の届かない貴重品になってしまうかもしれません。
でも、謎の男:グーテンベルクさんに、私は伝えたい。
あなたのおかげで、こんなにたくさんの本に出合えたよ。
グーテンベルクさん、ありがとう。
Rags make paper.
Paper makes money.
Money makes banks.
Banks make loans.
Loans make beggars.
Beggars make rags.