クリスマスを探偵と   文/伊坂幸太郎  絵/マヌエーレ・フィオール | 青子の本棚

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「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。

 

 

 

 

クリスマスイブのローテンブルク、私立探偵:カールは、浮気調査を依頼された男を尾行していた。花屋の店先では、客と店員がサーカス団から若い曲芸師がこの町に逃げてきたと話していた。男が入っていった住宅街のひときわ大きな家は、有名な投資家で美術品の収集家でもある女性の家だった。男を見張るため、近くの公園へ移動したカールは、ダッフルコートを着た若い男が本を読んでいるベンチの隣に座った。サンドラと名乗る先客の男は、カールを探偵と見破ると世間話を始めた。そして、話題は、カールの子供時代のクリスマスの思い出へと移っていき……。

 

 

 

 

伏線もミスリードも設定されたミステリィ仕立てのファンタジーです。

挿絵の多い短編作品という感じの絵本です。

しかし、私立探偵が浮気調査中という設定なので、これは大人向けですね。

 

 

作者がアマチュア時代:大学一年生の時書いたものを直し、絵をプラスして絵本仕様にしたそうですが、なんならもう少しスマートな文章に書き換えてほしかったな。

サンタクロースサンタやトナカイトナカイの蘊蓄はなくてもよいから。

 

 

 

他の子がサンタクロースがいないことを知っているなか、カールは十五になるまで、サンタクロースの存在を信じていました。

なぜなら、貧しくて、おもちゃを買う余裕など家にはなかったはずなのに、プレゼントプレゼントが必ず届いたからです。

 

そして、その年、サンタサンタクロースの不在を証明するため一計を案じたカールは、貧乏な家では買うことができないだろう高価なキラキラ自転車を頼むことにします。

当時、家には『困ったらこれを売る』と両親が言っていたものが、二つありました。

母が代々受け継いだ指輪指輪と、父のポップアーティストのサイン入りポスターです。

 

ここにきて私、オー・ヘンリーの『賢者の贈り物』を連想しましたヨ。

心があったまるピンクハートお話を。

 

 

クリスマスのクリスマスベル朝、自転車は届きます。

ほらね。

ところが、違った。ハートブレイク

 

まぁ、そうでしょうね。

伊坂幸太郎ですもん。

それどころか、父が母の指輪をこっそり売って買った自転車だったことが判明し、サンタクロースがいないことを知るカールでした。

もちろん、両親はドンッ大ゲンカ。

 

 

カールが話し終えた後、サンドラが訊ねます。

「こじつけ、というのは嫌いですか?」と。

 

さぁ、ここからが本領発揮です。

 

カールが追っていた浮気男というのは、実は母親から依頼された父親だったことが明かされ、浮気相手と思われた女性に会いに出かけた理由は、……。

 

 

 

”こじつけ”かもしれないけどと、サンドラが披露した解釈は、カールへのステキなクリスマスプレゼントプレゼントになりました。

 

そして、サンドラの正体も判明し、じんわり暖かいキラキラクリスマスツリークリスマス・イブのお話が完成です。ハート

 

 

 

 

 

 

 

星空トナカイ サンタ 

本 「クリスマスとはそういうものです。欲しがっているものがもらえる日です。ああ、言うまでもないことですがお母さんは、カールさんにも会いたがっていると思いますよ」

クリスマスツリープレゼント