夜の底は柔らかな幻 下  恩田陸 | 青子の本棚

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「すぐれた作家は、高いところに小さな窓をもつその世界をわたしたちが覗きみることができるように、物語を書いてくれる。そういう作品は読者が背伸びしつつ中を覗くことを可能にしてくれる椅子のようなものだ。」  藤本和子
  ☆椅子にのぼって世界を覗こう。

 

 

 

実邦と善法、そして、彼らに強引に付きまとうジュンが保護したおじいさんとはぐれた男の子がイロを使い、いとも簡単に野生の鹿をボールのように丸めた。入滅寺住職:天馬は、遺体に混じって運ばれてきた老人が「儂は、とんでもないものを目覚めさせてしまった」と口にするのを聞く。一方、屋島風塵も、国立精神衛生センターを脱出し、山へと向かう。

 

 

 

 

葛城と死闘を繰り広げ、傷ついた黒塚は、勇司の店へ。

途鎖警察へ保護を求めたみつきは、署長:占部の機転で一番安全な場所:留置場に。

葛城は、屋島風塵の脱走を聞き、精鋭の部下を集め山狩りへと向かう。

 

現在のソク:神山倖秀の待つフチを目指し、実邦ら一行をはじめ主要キャラが動き出します。

 

 

ここまでは、めっちゃおもしろいんですが、作品としては、私的にアカンやつバツレッドやった。

キャラは、それぞれ単独で主役張れそうなメンツばかりで、設定は面白いし、スピード感はあるし、好みやってんけどな。

予感的中で残念デス。ハートブレイク

 

久々の恩田陸で、入れ込んでただけに凹みます。ガックリ

 

 

思うに、下手な理由付けなんていらないのよねー。

いっその事、水晶宝石ブルー宝石白宝石紫だけにしといてくれたら、まだ許せたと思うのです。

 

よりによって、異生物が「ほとけ」とは。

どうせ、謎は謎のままなんだから、いたずらに具象化せんでもよかったんちゃうん。

私は、「チャイニーズ・ゴースト・ストーリィ」を、思い浮かべてしまいました。

あの空中に浮かぶ黄金の大仏で、へっ?となったのと同じ。

一気に、薄っぺらさが有無を言わさず確定されてしまった感じです。

最後まで、正体不明でよかったのに。

その方が、イロの集合体みたいな感じで納得いくと思います。

 

その後、”豆腐に似た白い立方体”が出てきたところで、完全にアウト。

『MAZE』やん。

(;´д`)トホホでございますよ。

 

 

こういう物語に、整合性を求めちゃイカンのだと思います。

みんなを、おーっ、と納得させるものじゃない限りは。

ムリクリは、かえって綻びをつつかれて、撃沈するものです。

 

でも、その辺りを除くと、体育館での同窓会サプライズ・パーティバトルは、結構楽しめました。

なんたって主役級の面々が生死をかけて闘うんですもん。

スプラッター叫びやけどね。

 

 

あと、気になったのが、自分が在色者だと気づかない子が突発的にイロを示す時、その一度きりのイロが命取りになったりするという言葉に、『終りなき世に生まれつく』の岩切を思い浮かべたりして。。。

 

たぶん、この時点では、別の人のことを言っているから、岩切の物語はまだ生まれてはいなかったと思われるのですが、まるで伏線のごとくピッタリ繋がっているようで、感心しました。

 

全編に、こういう整合性を求めるのは、酷なのでしょうか。

 

 

そして、なぜかラストが、ラブラブラブストーリー?になってる。。。

なんでやねん。ドクロ

まぁ、ええけど。

 

 

 

 

 

本 理解したいという欲望は、不幸だな。

 

 

 

【おまけ】

フチの葛城のイメージが『死の島』というのには、納得しました。

いかにもそれっぽいですねー。

 

ヒトラーが、総統官邸に飾っていたというベックリンの『死の島』。

現在は、ベルリンの旧国立美術館にあるそうです。