大家夫妻:ビーヤ&イェオリの家で紅茶をご馳走になりながら、僕たち:グアト&ロジは、<城跡の亡霊>の話を聞いた。貴族の家の御曹司:ロベルトと教師の両親を持つリンダは、お互いの家から結婚を反対され、城跡で自殺した。しかし、幽霊となった二人は、おたがいの姿を見ることができないという。そして、何故か今では、カップルで城跡を訪れると、幸せになれるというジンクスが。ロジはやけに乗り気で、僕たちは、サンドイッチをもってピクニックへ出かけた。そこで、僕たちが見たものは……。
「WWシリーズ」第四作です。
ロベルトとリンダらしき不審な男女に出会ってしまったグアトとロジ。
その噂を聞いて、ロベルトの弟と名乗る老人:ヴィリ・トレンメルが訪ねてきます。
兄:ロベルトが生きていれば、百五十五歳になると言います。
人は死ななくなって、人工細胞を体内に入れ、いくらでも身体を若く保てる未来という設定です。
但し、ナチュラルでなくなることで、生殖機能が失われ、その結果、子供が生まれなくなり、人口は減少の一途をたどっています。
ヴィリも、人工細胞を入れた人間で、別荘:オフィーリア荘への招待を告げ、帰っていきます。
ヴィリ・トレンメルは、かつて政治家で、駐英大使や、ドイツ情報局のシンクタンクのメンバだったこともあり、原子力事業でも国家的プロジェクトに関与していて、財界の大物であり……。
要するに、大金持ちの大物です。
そんな人物ですから、日本の情報局から、招待を受けるようにとロジに指示がでます。
で、二人して、お迎えのリムジンに乗り込み、オフィーリア荘へ出かけていくのですが、そこで、またしても、不審なホログラム?に遭遇し、別荘を辞する直前には、頭を撃ち抜かれたヴィリの姿を目にすることになります。
後半部分は、命は取りとめたが行方不明となったヴィリを追いながら、ヴァーチャルとリアルの対比の中、グアトの哲学的考察が繰り広げられます。
ロベルトは、幽霊なのか、ヴィリを撃ったのは誰なのか、ヴィリはどこへ消えたのか。
相変わらずミステリィとしては、???な感じです。
正直、なんかよーワカランかった。
共通思考、物体化された思考、……。
テーマがヴァーチャルですからね、当然、マガタ・シキ博士のことを連想するじゃないですか。
でも、これが、ミスリードで、ガックリ。
気を持たせるよなぁ。
めっちゃ期待してたのに。
人間の装いというのは、ファッションもそうだし、たとえば、建築物や、それから地位、グループや、あるいは武器とか、国とか、団結とか、全部がヴァーチャルだったんだ。そうやって、自分を別のものであるかのように意図的に錯覚して、一時の夢を見たんだよ
バーチャルって、もともと人間の頭の中にあったものを、頭の外に取りだしたものです。
内は外、外は内ってことですね。
しかし、ヴァーチャルのデータは、誰かが入力するのだから、あらゆるデータは、誰かの何らかのフィルタを通ったものになります。
リアル世界では好まれない、雑菌や害虫や、汚れたもの、腐ったものは、そのフィルタを通して排除されます。
それは、人間が、クリーンなものが好きで、憧れているからだとグアトは考えます。
確かにね、虫なんか大嫌いだし、清潔で、綺麗で、ゼロコロナで、ストレスのない生活おくりたいです。
なら、やっかいな身体を捨てて、自分自身をデータ化して、暮らしたいかというと、そこまでは、まだちょっと……。
尻ごみしてしまいます。
命懸けでないと味わえないスリルに、楽しみを求めてみたり、人工知能のオーロラが言うような、ときに評価を覆す成果を挙げる勘を発揮したりと、人間って、ほんと厄介で不思議な生き物。
そして、何よりも自由を求めるもの。
それは、城跡の掘っ立て小屋で出会ったホームレスのような生活をしているズザンナを心配し、ロジが時々は食べ物を届けてあげようと考えているのを止めるグアトの思考に現れています。
人には、援助を拒否する自由もあるのだから。
自由って、難しいもんやね。
否、それを望む人間が難しいんやろけど。
そして、そんな難しい人間が寄り集まってる世間も、やっぱり難しい。
世間は必ずしも正しく理解しようとはいたしません。自分がしたい理解をします